ライフゴーズオン
数分後、三人の姿は繁華街にあった。お昼を食べたらこの店に行こう、次はそこ、と引っ張っていくのはマコで、流子と皐月はその後をついて行った。
何件目かに来た路面展開の甘味店で皐月は二段乗せのアイスクリームを頼んだ。
「アイスクリームと言えば皿に盛ったものを食べたことはあったが、こうして立って食べるのは初めてだ」
「そりゃあそうだよな」
紙コップに入ったコーラを啜って流子は納得した。財閥のお嬢様として育ってきた皐月は、普段は執事の揃やおつきの者たちが付き従うか四天王と行動していたかで、級友と遊びに行くことも街をふらつくこともなかったとのこと、下々の者が食べるような合成着色料入りの菓子など口にした経験自体ないと容易に想像できたからだ。
「このチョコミントというのはなかなか良いな。口の中が甘くなったところを爽快にしてくれる」
「でしょでしょー？ 私もチョコミント大好きでこっちのクレープに入れてもらいました」
両手に持ったクレープの一つを見せたマコは、瞬く間に二つ共を平らげた。
「満艦飾、先程あれだけ食べたのにまだ入るのか」
「えへへ、甘いものは別腹でーす」
口の周りについたクリームを舌でぺろりと拭ったマコは親指を立てた。
「流子、別腹とは何だ？ 満艦飾の腹には牛のように複数胃袋でもあるのか？」
「気分的に食べられるってことだけど、マコならいくつ胃袋あってもおかしかないな」
ひそひそと尋ねる皐月に流子も真面目くさった顔でひそひそと返した。姉妹のやり取りが聞こえているのかいないのか、マコは周囲を見回してから二人に告げた。
「もう二人で内緒話して、流子ちゃんと皐月様のエッチ。それより、次はあそこ行きましょー！」
「内緒話がエッチ……密談が卑猥に結びつくとは初耳だ」
「あーもう説明面倒くさいなあ。マコの言うこといちいち真正面から受け止めてると日が暮れるぜ」
怪訝そうに小首を傾げる皐月の手を引き、先に歩いていったマコに追いつこうと流子も歩き出した。