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ライフゴーズオン

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「おかしいと思いませんでしたか? REVOCS社の社員ほぼ全員が原初生命戦維の贄となっていた時になぜ針目縫と私だけが羅暁様のお傍に留め置かれたか。彼女はあなたと同じ生命戦維との融合実験で産まれた存在だということはご存知ですね?――もうおわかりでしょう。私も融合実験で生まれた子供たちの一人なのです」
「何っ」
「貴女や羅暁様、針目縫と違って心臓までの融合はしませんでしたが、それは計画通り。縫は生命戦維との結合が強すぎたため神衣を着られなかった。ならばどれだけの結合であれば神衣を着ることが可能なのか。重ねられた実験の結果、神衣と適合する子供は生まれませんでした。出生前にほとんどの実験体が死亡しましたからね。私も運が悪ければあなたのようにダストシュートから捨てられるはずでした。私が助かった原因、それは」
COVERSが再び鳳凰丸の元に集結した。
「私の記憶にもなかったことですので伝聞とその後の経験でしか申し上げられないのですが、私が捨てられそうになった時、COVERSが大きな声で泣いた私をかばうように包んだようです。その後の調査で私の脳波や声がCOVERSに共振しやすいという結果が出ました。私の意思で彼らを自在に動かせるのです。本来羅暁様以外不可能な命令及び指揮が可能という点において、私という実験体は成功と言えましょう。更に強化実験として特殊パックを施した原初生命戦維の一部を体内に埋め込まれています。つまり」
話が終わらないうちに流子は断ち斬りバサミで鳳凰丸を両断した、はずだった。両断されひらりと落ちたのは布型COVERSで、鳳凰丸本人はその後ろで溜息をついた。
「無駄ですよ。全は一、一は全。私はCOVERSをいくらでも自分のスペアに出来るんですよ。COVERSがある限り私は存在するんです。Here,there,and everywhere」
残りの布型COVERSがひらひらと舞うように鳳凰丸に近づき、人型COVERSであった時に虚ろな表情の仮面が生じるはずの位置に鳳凰丸そっくりの顔が現れた。
「私がある以上COVERSは無くならないし、COVERSがある以上私も死なない。そしてわたしは羅暁様の御心にのみ従う」
「残機に余裕ありまくりだな。でもやるこたぁ変わらねえ、お前以外全部残らず切り刻んじまえばいいんだよ」
目の前に並ぶ何人もの『鳳凰丸』を眺めながら流子は皮肉気な笑みを浮かべた。
「母さんの御心のみに、か。全く、趣味の悪い光景だぜ。しかし今の話で納得いったぜ。道理でお前、神羅纐纈のコアになるはずだったわけだ。鮮血に弾き出されなきゃな」
「ええ、あの忌々しい紛い物の神衣が余計な真似をしていなければ、羅暁様により天種繭星は成就していたはずなのに。忌々しい皐月様、忌々しい人間共、忌々しい紛い物のお前たち!」
後半は悲鳴のような絶叫を憤怒の表情から発し、鳳凰丸は両腕を刃に変えて流子に襲い掛かった。一体、また一体とCOVERSは断ち斬りバサミの餌食となっていったが、鳳凰丸は攻撃の手を緩めようとしない。
「何言ってやがる。人でも服でもないのはお前も一緒じゃねえか」
「違う、私はお前たちとは違う! ただの走狗ではない! この身も心も、すべては羅暁様の御心のために!」
「いや、お前は犬っころ以下だよ」
『鳳凰丸』たちを全員斬られ一人残された鳳凰丸が新しいCOVERSを出すより一瞬早く、断ち斬りバサミが彼女の腹部に突き刺さった。腹部から流血し、ぐらついた鳳凰丸は断ち切りバサミを掴んで流子を睨んだ。
「何故、私を斬らない。刺さずに両断すれば、お前の勝ちだろう」
「わざわざ私に勝たせてやるってか。気に入らないんだよ。お前、最初から死ぬつもりでここに来ただろう」
流子の指摘に鳳凰丸本人のみならず美木杉と黄長瀬も驚愕した。
「どういうことだ纏」
「どうもこうも、おかしいと思わねえかモヒカン野郎。いくらてめえの体内に原初生命戦維の残りがあるったって、連れてるCOVERSの数も後から出してきた量も全校生徒取り込むには圧倒的に足りねえ。まるで残った兵器と私とで殲滅できる分だけちょうど用意されたみてえによ」
「!」
歯噛みしながら流子を睨み付ける鳳凰丸とは対照的に流子は感情を出さない声で続けた。
「母さんも鮮血も、自分の最期は自分で決めた。お前だけ私に殺してもらおうなんて、虫が良すぎやしねえか」
流子は断ち斬りバサミを鳳凰丸の腹に刺したまま、傷口を手で広げた。
「お前の中の原初生命戦維、全部斬らせてもらう」
傷口から流子は鳳凰丸の体内へと入ろうとした。一時純潔に着られていた時、鮮血とマコが流子の中へと入っていったように。
「流子君無茶だ! あの時は鮮血に巻き込まれたから満艦飾君は偶然君に潜れたんだ、無理はよせ!」
呼びかける美木杉に流子は表情のないままに答えた。
「人でも服でもないヤツが人でも服でもないヤツの中に入るんだ、無理でもなんでもねえよ」
うおおおお、と雄叫びを上げた流子は傷口をさらに広げ、片足を掛けてから断ち斬りバサミを握り直して鳳凰丸の中へと消えた。鳳凰丸は虚ろな表情で棒立ちになったかと思うとその場に仰向けになって倒れた。
「流子君!」
「纏!」
美木杉と黄長瀬の呼び声に答えたのは、ただ静寂のみ。

作品名:ライフゴーズオン 作家名:河口