こらぼでほすと 秘密1
「とりあえず、港の傍の和風レストランを予約しておいた。海鮮丼がお勧めだ、シン。」
「ああ、そりゃいいな。ねーさん、海鮮丼だってさ。それ、食ったら、とーさんの案内で海に出ようぜ? 」
たぶん、この調子では、オーヴ組のトダカーズラブは待機しているだろう。おいそれと家族旅行なんてできないらしい。数隻準備させたということは、そういうことだ。トダカたちが乗る船の周囲を、警護するつもりだろう。
近場の珊瑚礁を観光して、旅館に辿り着いた。やはり、港にはトダカーズラブのオーヴ組の一部が集まっていて、「けっして、家族旅行の邪魔はいたしませんから、同道を。」 と、土下座せんばかりの勢いで頼まれて、トダカも頷いた。ただし、泊まりだけはついて来るな、と、トダカが釘を刺したので、こちらは家族だけだ。大きな離れを貸切にしておいたので、部屋もいくつかあるし、風呂も部屋付きの露天風呂があった。
「カガリって、何時に来るつもりなんですかね? お父さん。」
「さあねぇ。食事を待っててくれって伝言だから、そのぐらいの時間なんだろう。とりあえず、ひとっ風呂浴びて、ゆっくりしよう。」
「てか、とーさん、ここ広すぎないか? ひとり一部屋あるぜ? 」
とりあえず、離れの探検をしていたシンが、そう告げる。かなりの大人数にも対応できる広さがある。
「後から、アレルヤくんたちが合流するはずだろ? それに、下手をするとキラ様たちも来られるかもしれないからさ。」
キラたちは、少し遅れてオーヴに入る予定だ。あちらは、MSで移動してファクトリーでの作業の予定だが、時間があれば押しかけてくる。それを予想すると、これぐらいの広さが必要になる。
「キラさんか・・・来るだろうな。」
「トダカさん、アレルヤたち、合流するんですか? 」
「一応、その予定だ。こっちで、きみと顔を合わせてから、またティエリアくんと旅行を再開するらしい。」
そういう予定であるとは聞いていたが、ゴールデンウィークの後ぐらいだろう、と、ニールは予想していた。どうせなら、一緒に観光したいから、と、アレルヤたちから打診があったそうだ。ただし、予定だから間に合うかどうかは微妙で、ニールには告げていなかった。
「そろそろ降下はしてると思うんだ。こっちに変更の連絡がないから、予定通りだと思うよ。」
「ママ、ティエリアは特区に到着してるよ。たぶん、ラボで打ち合わせがあるはずだから、明後日ぐらいには現れるんじゃないかな。」
ティエリアと一部繋がってるリジェネは、ティエリアの動向は把握している。特区には降りたから、リペア機のミーティングをやったら、オーヴへ遠征してくる。
「じゃあ、トダカさん、明後日は一番お勧めのところへ案内してくださいよ。あいつらも、珊瑚礁なんて鑑賞したことはないですから。」
「ああ、そのつもりだよ。明日は、オーヴの観光地をクルマで案内するつもりだった。陸地にも、キレイな景勝地というのがあるからさ。」
毎日、船で案内ということもない。のんびりとクルマで観光地を巡る予定も入れてある。一度限りではないから、日程は余裕をもって組んでいる。
「まず、風呂入ろうぜ。アスハが着いたら五月蝿いからさ。」
食事に現れるというなら、空き時間に、のんびりと風呂に浸かりたい、と、シンが全員を動かす。広い浴室と露天風呂がついているから全員で入っても余裕がある。じゃあ、そうするか、と、ニールが立ち上がるとリジェネもついていく。露天風呂も始めてだ。
「そういや、僕、カガリ・ユラ・アスハとは初対面だよ、ママ。」
「そうだったか? キラの双子の姉なんだけど、元気で騒々しいヤツだよ。挨拶したら、無礼講だから気にせず騒いでいい。」
「一応、女の子なんだよね? 」
「外見はな。でも、中身、親父が入ってるから弄られるかもしれないな。」
「ねーさん、それ事実だけど、あれでも国家元首なんだから、もうちょっとオブラートに包んだ説明したら? 」
「シン、あいつ、絶対に素でくるぞ? リジェネに事実を教えとかないと、びっくりする。」
いや、まあそーなんだけどさあ、と、シンも苦笑しつつついていく。もちろん、のんびり露天風呂を満喫していたシンたちの顔を覗きに来るという騒ぎを引き起こしたのは言うまでもない。
「いいなあ、私も入ろうかなあ。」 と、ほざいたので、ニールが拳骨は食らわせた。
「だいたい、軍人やってれば、混浴なんて大した問題じゃないぞ? ママ。」
慌てて腰にタオルを巻いてニールがカガリの頭を拳骨したら、この台詞だ。これが妙齢の女性なんだから、問題はありまくりだ。
「俺たちが出てから入れっっ。おまえなあ、いくらなんでも混浴はダメに決まってるだろ。まず、その制服を着替えて来いっっ。」
「わかった。・・・・なんで、元テロリストなのに、そんなに固いんだか・・・」
「おまえが緩すぎるんだよ。・・・・お疲れさん、カガリ。」
「ただいま、ママ。元気そうで、何よりだ。オーヴの名物料理を用意してもらったから楽しんでくれ。」
「わかったわかった。もうちょっと浸かったら出る。はい、着替えろ。」
「了解。」
露天風呂に乱入したカガリは入浴を阻止されてたものの、ご機嫌で出て行った。あれ、あれでいいんですか? と、トダカに泣き言の一つも言いたくなる。
「若い頃、レジスタンスをやっておられたからねぇ。砂漠地帯だったからさ。」
「いや、そういう問題ですか? 」
「それより娘さん、温まりなさい。そんなところに裸でいたら身体が冷えるよ。」
「一々、ツッコミしてると疲れるぜ? ねーさん。アスハは、あんなだよ。もう、俺は気にしない。」
シンも、一々ツッコミする気はない。キラから行状を聞いている限りは、あれがカガリの素だ。
「露天風呂って気持ちいいね。シン、泳いでもいいの? 」
「俺らだけだから、別にいいぜ、リジェネ。他人が居る時はマナー違反だからやるな。」
リジェネも和風旅館は初めてで、見るもの聞くものが珍しい。ポンポンスーな状態で、大勢と風呂に浸かるなんて初めてで興奮気味だ。
「リジェネ、温まったら髪の毛洗うからな。」
「はーい。」
海風を浴びているので、髪も痛んでいる。ニールも洗っておかないと、翌日、べったりしてしまう。
「あー極楽だ。やっぱり、風呂はこれでないと。」
「俺も、その意見に賛成。足が延ばせて気持ちいい。」
トダカとシンの親子は、仲良く風呂で融けている。極東では、水がふんだんにあるし温泉も多いから、こういう入浴スタイルが基本だ。アイルランド人のニールも、特区に居着いてから、この入浴法は気に入った。裸の付き合いという言葉が、納得できる入浴法だ。これなら、互いに武器なんて所持できないから、本音で話すこともできるからだ。
「極東は火山地帯が多いってことなんですかね? トダカさん。」
「そういうことだな。特に極東は水が豊富な地域だから、身体を湯船に沈められる。このほうが、リラックスできると思うんだけど、娘さんは、どうだい? 」
「こっちに居着いて、これが日常になりましたからね。俺も、ゆったりして好きですよ。」
「エターナルには大浴場があるんだぜ? ねーさん。キラさんが、大きなお風呂が欲しいって改造させたんだ。」
作品名:こらぼでほすと 秘密1 作家名:篠義