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デキちゃいました!?

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次の日、せっかく仕事も休みだと言うのに朝っぱらから携帯の着メロに叩き起こされた。
枕元で煩く鳴りながら震える携帯を、俺は握り潰さん勢いで掴み取って電話に出る。
相手は、昨晩俺の部屋に血相変えて来た闇医者だった。

『静雄…絶対安静だって言ったじゃないか、どうして帰すのさ?』
「…俺が知るか、仕事から戻ったらいなかったんだよ」

昨日の夕方、西口公園の前で偶然見付けて俺の目の前で倒れ、仕方なく俺の部屋に運んだ臨也のノミ蟲野郎は、俺が夜仕事に出ている間にこの部屋を出て行ったらしい。
明け方近くに戻った時には、もうその姿は部屋から消えていた。
馬鹿みてえに笑ってやがったし、もう少し休んだら帰ると言ってやがったから、当然もういないだろうとは思っていた。
新羅の奴が安静だとか言ったのは伝えてやったし、臨也も手前の身体の事は手前が一番良く解るだろう。
そう思っていたが、なぜか今俺がノミ蟲の事で新羅に怒られている。
…ああ、ウゼェ。

『臨也と何か話したかい? 様子はどうだった?』
「別に…。…あー、何か夜中にメールが来てたな。もう俺の前には二度と姿現さねぇから、最後に世話になったとか何とか」

夜中の仕事中にそんなメールが来たのは本当だ。
二度と姿を現さねぇってのは有り難い。
むしろ死んでくれればいい。
世界のどこかにあの臨也の野郎が生きてると思うとムカっ腹が立つが、その姿が見えないと言うならそれはそれで大歓迎だ。
俺にとっちゃ有り難くて涙が出そうな申し出だけに、俺は特に臨也に返信をする事もせずに仕事を続けていた。
…確かに少し、何かが引っ掛かりはしたが。
仕事に手一杯で臨也の事を考えている暇なんかなかったし、今新羅に聞かれるまで忘れていた。
昨晩俺は、臨也のメールの一体何に引っ掛かったんだ…?
寝起きで働かない頭で布団から起き上がり、ガシガシと髪を乱しながら頭を掻く。
電話の向こうで新羅はしばらく黙りこくったままだ。

「……おい…、」
『…静雄…半信半疑で聞くけど、君と臨也、何かあったかい…?』
「…あ…?」
『君は臨也に、いつもの喧嘩や殺し合いの他に、何かしたかい…?』
「……………」

俺と臨也の関係は、高校の同級生で腐れ縁で犬猿の仲で、顔を合わせてする事と言えば、喧嘩から殺し合いか、……。
新羅の質問に目が覚めた気がした。
いきなり一番最近臨也を抱いた時の記憶が甦るのは、昨夜この布団でアイツが寝ていて、まだどこかに奴の匂いが残っているせいだと思う。
胸クソ悪い事この上ないが、奴の寝た後の布団で俺も寝たせいで、俺自身もどことなく奴の匂いがする気がするせいだと、思う。

『……したんだね?』

断定した新羅の声が耳に届く。
それでも俺は答えられない。
殺したいほど憎んで、憎み合ってた奴と何がどうなってそんな関係になったのか、まさか聞かれるとは思わないがもし聞かれたって答えられるはずがねえ。
そんな事がありました、と平然と言えるほど、気分の良い事じゃねえ。
むしろ、何であんな事になったのかと自分で考えると反吐が出る。
そう思うはずなのに、携帯の向こうで溜息を吐く新羅になぜか心が痛む。
何でこんなに、後ろめたい。
黙ったままの俺の耳に、平坦な新羅の声が続く。
これは、あの新羅が多少なりとイラ付いてる時の声だ。

『…静雄、もしも臨也が女の子だったらどうするつもり?』
「…あ…?」

何を訳の解んねえ事を…臨也は男だろうが。
…その男相手に、俺は何をしたんだ…。

『だからもしもって言ってるだろう。まあ僕も、君と臨也が男と女ならここまで言わないんだけどね…。…いいかい? 臨也の身体は今普通じゃないんだ。俺の言った「もしも」なら普通の事…と言うか、あってもさも有りなんと言う所だけどね。さすがの君だって想像は出来た筈だ。けど臨也は男だ。君が有り得ないと思っても仕方が無い。でもその「有り得ない」が臨也の身体に起こってるんだよ。もしかしたら危険な状態かも知れない。闇医者なんてやってる俺だって、さすがにこんな症例は見た事も聞いた事もないからね。…僕はちゃんと話し合えって言ったよ。けど君が相手じゃ話し合う事も放棄したらしい気持ちは良く解る。それでも…二度と姿を現さないからって言うのは…気になるね。静雄、君なら臨也がなぜそんな事を言い出したのか、解るんじゃないのかい…?』

……どう言う事だ。
新羅が何を言ってるのか、俺の頭は良く理解出来てねえ。
俺は馬鹿だ。
小難しい事を言われたってさっぱり訳が解らねえ。
わざとらしく遠回しに言われたって、俺には理解出来ねえ。
なのに…。
頭で考えた訳でもねえのに、俺の口は勝手に動いていた。

「……新羅…、有り得ねえだろ…。まさか…、―――」

その「有り得ない」事が臨也の身体に起きてると言う。
勝手に動いた口がまさかと問い返した言葉に、新羅は一言『自分で確かめるんだね』と言った。
冷ややかにも聞こえた新羅の声を聞いた瞬間、俺の指は通話終了を押した。
布団から飛び出て、スラックスにYシャツだけの寝起きそのままの格好で、財布と携帯だけを手にして部屋を飛び出した。
頭じゃ何も考えちゃいねえ。
何だか良く解ってねえのに、身体だけは動いた。
部屋から池袋の駅、池袋から新宿まで電車に乗る。
新宿から、臨也のマンションへ。
頭じゃ何も考えないまま、俺は臨也のマンションまで走った。
作品名:デキちゃいました!? 作家名:瑞樹