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遊戯王LS novelist ver.

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 鼻、口、切れた肌から床を濡らす赤。あざ。擦れた傷。上等だ。そうやってきた。
「デュエルしろよ、クソガキども。アタシに勝ったら父さんのカードなんてくれてやる」


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 決闘は十二時に広間にて。
 そう言い渡され、アタシはカードと共に部屋に戻された。
すぐさまベッドにカードを広げ、ひどい傷ができてやしないかと、一枚一枚確認する。
あんなに乱暴に扱われたのだ。それでも、一枚も折れていないのが救いだった。
 と、ふわり、と部屋の空気が変化し、ランプが光を瞬かせた。どうやらまたあの子供が来たらしい。
カードを弄る手を止めたところですぐ近くの空気が揺れた。
(大切なんだね、そのカードたち)
「お前か」
 すっかり慣れっこになってしまった声に、応えを返す。
(でも、カードの心配もいいけど自分の怪我も手当てしないと……。痛かったよね、大丈夫?)
 この口調だと一部始終を見ていたらしい。舌打ちし、天井を見上げる。
「覗き見すんな。ガキが見るようなもんじゃねえよ」
(ご、ごめんね。今の俺じゃあ見ていることしかできなくて……)
 今の俺も何も、もはや幽霊が何を言う、と心の中でぼやきつつ、別に。と小さく返した。
別に八つ当たりしたいわけじゃない。

(デュエルするんだよね。勝てそう?)
「負けようと思って勝負する奴なんかいねえよ」
 カードを整え、備え付けの洗面所に向かう。勢いよく水を出して顔を洗うと、少し傷が染みた。

(……あの双子はひどいよ。大丈夫?)
 強いよ、ではなくひどいよ、という言葉が引っかかった。どういうことだろう。
「お前もデュエルしたのか?」
(うん、多分……。細かいことは思い出せない。でも、なんだろう、嫌な感じだったんだ。
あの二人とのデュエルは、多分、ひどいよ)
「ふーん」
(二人はタッグで挑んでくる。君のデッキとは正反対の、深く暗い深遠のデッキ。気をつけてネロ。
それに……あの二人とのデュエルは、多分普通のデュエルじゃない)
「それどういう意味だよ?」
(……勝てそうにないなら、どうにかしてここから逃げて。じゃないと)
 心配そうなその声に、アタシはぽつりと呟く。
「闇の中でこそ、光は存在する」
(え?)

「父さんの言葉。大丈夫、勝つさ。……絶対に」
(俺も、君の勝利を願うよ。……がんばって、ネロ。俺も、近くで応援する)
 大丈夫。自身にも言い聞かすように、アタシはひんやりと冷たい鏡に手を当てた。


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 十二時の鐘が鳴る。ヘレンたちが指定した広間は「合わせ鏡の間」。なんとも不気味な名前だが、
入ってみてさらにうんざりする。
 四方が鏡で覆われていて、立てられた蝋燭の頼りない明かりがさらに、空間を不安定に見せていた。
 ゆらゆらと、歪む広間に、先程とはうって変わって漆黒に身を包んだ双子がこちらと向かい合う。
「よく逃げないで現れましたわね」
 ストラが青い目を細め、小馬鹿にしたように笑った。
「そうね、身の程を思い知らせてあげましょう」
 ヘレンがすうっと指をあげ、高らかに宣言する。合わせるようにアタシも叫んだ。

「「デュエル!」」


「専攻は譲ってあげてよ、下賎のお嬢様!」
 優雅に手を向けられ、ためらわずアタシはカードに指をかけた。ドロー。
引いたカードは魔法。すぐさま発動する。
「E−エマージェンシーコール」


□E−エマージェンシーコール。
自分のデッキから「E・HERO」と名のついたモンスター1体を手札に加える。


「E・HERO エアーマンをデッキから手札に加えて、召還」
 広間の中央に光が差し、渦巻く風からE・HERO エアーマンが姿を現す。
この部屋全体がソリッドビジョンに対応しているらしい。なびく髪を押さえながら、
アタシはデッキに手を伸ばす。


○E・HERO エアーマン
効果モンスター(制限カード)
星4/風属性/戦士族/攻1800/守 300
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分フィールド上に存在するこのカード以外の
「HERO」と名のついたモンスターの数まで、
フィールド上に存在する魔法または罠カードを破壊する事ができる。
●自分のデッキから「HERO」と名のついた
モンスター1体を手札に加える。


「E・HEROスパークマンを手札に加える」


○E・HEROスパークマン
通常モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1600/守1400


「手札を一枚伏せて、ターンエンド」


「あらあら、そのカード、最初から出してしまってよかったのかしら?」
 へレンがわざとらしく手を口に当て、瞬く。
「人のことはいい。早く進めろよ」
「……あなた本当につまらないわ。ドロー!」

 すうっと、赤の双眸が細まる。処刑を決める女王の目。

「魔轟神ガルバスを攻撃表示で召還」
 ずしんと床が揺れ、三メートルはあるであろうフルアーマーの巨体が姿を現した。
 薄暗い照明の中、凶悪な鉄球を掲げて立つその姿は、幻影とはいえ不気味で威圧感がある。


○魔轟神ガルバス
効果モンスター
星4/光属性/悪魔族/攻1500/守 800
手札を1枚墓地へ捨てて発動する。
このカードの攻撃力以下の守備力を持つ、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する。


「魔轟神ガルバスは、手札を一枚墓地へ捨てることで、相手フィールド上の
表側表示の1500以下の守備力のモンスターを破壊できる!
手札の魔轟神ルリーを一枚捨てて、守備力300のE・HERO エアーマンを破壊するわ。
行きなさい! 魔轟神ガルバス!」
 人外の呻き声を上げ、魔轟神ガルバスが一抱えの大きさの鉄球をE・HERO エアーマンに投げつける。
E・HERO エアーマンは、出現した時と同じように風の渦に戻り、消し飛んだ。
「く……」
「更に、魔轟神ルリーの特殊効果発動。フィールドに攻撃表示で特殊召還!」
「なっ……! コストで墓地に送ったのになんで!?」


○魔轟神ルリー
効果モンスター
星1/光属性/悪魔族/攻 200/守 400
このカードが手札から墓地へ捨てられた時、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。


「お馬鹿さん! 魔轟神ルリーの効果は手札から「捨てられた時」よ!」
 カード効果で捨てられた時に限定されないということか。絵柄にそぐわず、厄介なカードだ。だが、
(これでもうこのターンはモンスター召還はない。次で反撃できれば……)
「私は手札からカード二枚伏せる」
「……」
「うふふふふふふふふ」
 へレンが、気味の悪い笑い声をあげる。何がおかしい、聞けば、また笑い声。
「攻撃力200なんて、恐るるに足りないと思ってるんでしょう? その伏せカードで
作品名:遊戯王LS novelist ver. 作家名:麻野あすか