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こらぼでほすと 秘密5

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「ああ、ぼちぼちやってくれ。」
 リジェネの腕を叩いて退かせるとニールも立ち上がる。畳に置きっぱなしだった本を取上げる。それをカガリも一冊拾い上げる。
「うちの料理は気に入ったのか? ニール。」
「ああ、おいしいと思うんで、うちでも作ってみようかと思うんだ。・・・たださあ、調味料が独特なのがあるから加減が難しそうだ。」
 特区の調味料は、粗方使いこなせるようになったが、オーヴ独特のものは、まだよくわからない。組み合わせで味の変化を楽しむものもあるので、そうなると適量と書かれていると、ニールには、まったくわからないなんてことになってくる。
「それなら最高の料理人を紹介してやる。」
「え? いや、そこまではいいよ。それに俺が作りたいのは家庭料理だし。」
「だから、家庭料理の最高の料理人だ。私が知ってる限り、その人の料理が一番美味い。」
 カガリも何度かご馳走してもらっている。家庭料理という枠だと、この人のものがカガリにも最高の味だ。アスランは、直に習っているから、ほぼ同じものが作れるが、それでもカガリは、その人の料理が好きだ。
「逢えるような人なのか? 」
 あんまり料理家とか権威のある料理人なんて、ニールは逢いたくない。カガリはセレブなので、そこいらが危険だ。
「何、言ってる。キラのおかんだ。あの人の料理は温かくて美味い。私だけでなく、ラクスとキラとアスランも、そう言うはずだ。・・・どうせ、あいつも、こっちに顔を出すんだろ? 紹介してもらってアドレスと番号を交換すればいい。ヤマト家のレシピなら、悟空にも合う。私が保証するっっ。」
 カガリが胸を張って言うので、ニールも、ああ、と、思い出した。キラが実家に帰ると、具合の悪い特区のママに、と、お菓子を差し入れしてくれていたのだ。いつか逢って、お礼を言わなければ、と、思っていた。
「ああ、カリダさんか。そうか、そりゃいいなあ。俺も、一度、お礼を言おうと思ってたんだ。」
「食べたのか? 」
「うん、キラが里帰りすると、口当たりのいいお菓子を差し入れしてくれてたんだ。すっかり忘れてた。」
 昨年後半からドタバタしていて、すっかりカリダのことを忘れていた。
「くくくく・・・そうか、それなら大丈夫だな。キラに連絡しておく。」
「キラ、こっちに居るのか? 」
「今は、ファクトリーで仕事しているはずだ。最終日辺りに乱入するって言ってた。」
「そうか、アスランも、カリダさん直伝だって言ってたな。教えてもらえるところがあってよかった。」
 アスランの手料理は、ほぼカリダのコピーだと聞いている。確か、ラクスも教えてもらったことがあると言っていた。それなら、わからない時は質問が出来る。
「最終日の予定は、どうなってるんだ? トダカ。」
「午後一番の便で帰ります。」
「わかった。」
 カリダは専業主婦なので、予定がなければ空港ぐらいまでなら出てきてくれるはずだ。キラに連絡しておけば、なんとかなるだろう。人と人は繋がっていくものだ。カリダとニールが知り合うのは、カガリたちにとっても有意義だ。オーヴの日常担当と特区の日常担当が連絡できる状態なら、それはそれでニールの話し相手が増えることになる。じじいーずが、ニールの精神面のフォローはしているが、女性で、さらに母親という人は、ニールの傍に居ない。そういう人なら、料理の話をしながらニールも寛いだ気分を感じてもらえるはずだ。
「キラのママ? 生きてるの? 」
「育ての母親だが、元気にしてるぞ、リジェネ。」
「ああ、そういうこと。」
「とりあえず、卓球をやろう。それからひとっ風呂浴びてメシだ。」
 ほら、行くぞ、と、トダカとニールの腕を掴んでカガリが歩き出す。離れの入り口で、リジェネの連絡に戻って来たティエリアとアレハレも合流して、白熱した卓球大会になった。シンも途中から参戦して、カガリと本気で戦っていたので、みんなが空腹になったのは言うまでもない。今夜の食事は、肉料理をメインとしたもので、ティエリアとアレハレも、「美味しい、美味しい。」 と、お腹ぽんぽこりんまで食べつくしていた。
「肉って言ってたけど、豚と牛とヤギなんだな。味が違うし、野菜も多いからおいしかった。」
「そりゃよかった。ヤギは、最近では、あまり食べないんだけど、大昔は、お祝い事に使ってたらしい。」
「ふーん、そういうものなのか。うちはメインが羊だから、全然違って楽しいよ。」
 食後の果物を食べながら、カガリは料理の説明をしている。海洋国家ではあるが、食肉も盛んだ。気候が穏やかだから、動物の成育も良いらしい。
「おまえは料理ってするのか? カガリ。」
「あー簡単なもんなら、なんとかなるけど。やってる暇がなくてなあ。」
「そうか。」
「そこいらはできる人に任せる。私は私のできることをすりゃいい。」
「それは俺も一緒。一人分とか作るの面倒でさ。・・・寺へ居候しないと、ついついコンビニかホカ弁だぜ? アスハ。」
「そうなるよなあ。でも、おまえは、寺が近所だから立ち寄りは可能だろ? トダカのところにも行けるし。私なんか、そういう場所は遠いから厄介だ。なあ、ニール、落ち着いたらオーヴに住まないか? 三蔵は寺があれば引っ越してくれるよな? 」
「さあ、そこいらは亭主に確認してくれ。俺には、さっぱりだ。」
「こら、アスハッッ。てめぇ、ねーさんの独占なんか目論むな。全力で阻止するぞ。」
「いや、おまえらもオーヴに引っ越したらいいだろ? そしたら、私が楽になる。」
「無茶なことを。カガリ様、ラクス様が暴れますよ? 」
 特区に本拠地のあるラクスは、オーヴには移動できない。それに、ニールを確保なんかされたら確実に笑顔で激怒だ。
「あーそうだった。あいつ、笑顔で三万倍に仕返しするよな。ほんと、強烈だ、ラクスは。」
 ラクスの苛烈さは、父親のウヅミに近いものがあるから、カガリもラクスは怒らせたくない。笑顔でオーヴのシステムを破壊してくれることだろう。なんせ、ラクスには電脳世界で負けなしの大明神が背後に控えている。キラとラクスは、オーヴでは一部で有名人なので、こちらには暮らせないので、全力阻止されることは目に見えている。
「俺は、どこでもいいんだが、ニールは、どうなんですか? 」
 ティエリアは帰れる場所があればいいから、オーヴでも特区でも構わない。
「うーん、俺も今のところは特区のほうがいいかな。随分と馴染んだからさ。」
「カガリ、移動は許可できない。」
 ニールの言葉に、ティエリアが慇懃にカガリに申し渡す。ニールが住みやすいところがいいのだから、こういうことになる。
「わかってるよ。ちょっと希望を述べただけだ。でも、おかん、年に一度くらいは、こっちに遠征してくれ。フェルトにも逢いたいから。」
「はいはい、それは、おまえらで調整してくれたら付き合うよ。」
 ここまで遠征できるようになったので、ニールも数日のことなら拒否はしない。カガリはフェルトの数少ない女友達なので、会えるなら会わせてやりたいとも思う。
「任せてくれ。そういや、刹那もオーヴには遠征してないな。」
作品名:こらぼでほすと 秘密5 作家名:篠義