二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

♯ pre

INDEX|2ページ/14ページ|

次のページ前のページ
 

初等教育を受ける学校を卒業したあとは、仕事の見習い生活に入る者もいるが、ハルカたち三人は高等教育を受けることを希望していて、ナギサはその高等教育はハルカたちと同じ学校で受けたいと思っているようだ。
「じゃあ、俺も来るから、仲間に入れてくれよな」
「もちろん!」
ナギサが天真爛漫に同意した。
マコトは異論のない様子で穏やかに微笑んでいる。
ハルカは無表情のまま、勝手に決めるなと思ったものの黙っていた。
「またな!」
「うん、また明日!」
笑顔でリンが言ったのに対してナギサも笑顔で返し、マコトは優しく笑っている。
リンは浜辺へと歩いていく。その背筋はピンと伸ばされていて、堂々とした様子だ。
そういえば。ふと、ハルカは気づいた。自分はリンに対して、ひとことも喋らなかった。
でも、そんなことはどうでもいいことだ。そう思い、ハルカはリンのうしろ姿へと向けていた眼を別にほうへやった。

リンが去ったあともハルカたちは海にいて、太陽が低い位置まで来たころに帰路についた。
ナギサとは海から離れてしばらく進んだところで道がわかれた。ナギサは商人の家のひとり息子だ。姉が三人いるらしい。ナギサの白い肌と金髪は北方の国出身の母親譲りである。ナギサの父親が若いころに商いの旅に出かけて知り合ったそうだ。
ハルカとマコトも商人の子供だ。お互いの家は近い。そのため、幼いころからの付き合いで、優しくて人あたりのいいマコトが無口なハルカの世話を焼くことがよくある。
家に着くまえに、近所に住むハルカやマコトより少し年上の子供のいる女性から話しかけられて、その内容に驚かされた。
今、街では、リンとその家族の話で持ちきりなのだそうだ。
なぜなら、彼らが王族だから、だ。
今の王には息子が三人いる。
リンの父親は王の次男であるらしい。
だから、リンは王の孫ということになる。
そして、リンが軽く説明したとおり、王の次男は妻と子供ふたりをつれて、王都を離れ、この街へ引っ越してきた。
なぜ、そんなことをしたのか?
この街は海の向こうに文化の異なる国々があり、海上ルートや陸上ルートでの交易で栄えている。
けれども、交易拠点として、この国で一番の位置にはいない。
それに王都のすぐそばにあるわけでもない。
野心のなさをあらわしたいのではないか、というのが、この街のひとびとの意見の主流であるようだ。
王宮では次の王をだれにするかということで争いが起きているらしい。
王の三人の息子の母親はそれぞれ違い、第一王子の母親は正妃だったが早くに亡くなり、第二王子の母親は北方の国の奴隷出身の妾妃、第三王子の母親は現在の正妃である。
三人の王子それぞれに支援者たちがついた。王子の母親の血縁者にあたる者たちはもちろん、そうした者のいない第二王子にも一番立場の弱い第二王子を王位につかせることができれば操りやすいと見たのか支援者がついたぐらい、様々な思惑があって、王都の有力者たちの多くが三人の王子のうちのだれかの支援者となり、争っているという。
そして、第三王子のふたりいた息子のうち長男のほうが転落死し、そのしばらくあとに第一王子の妻が毒殺された。
第三王子の長男の転落死のほうは事故の可能性がまったくないわけではないが、だれかに突き落とされたのだろうと噂されている。
犯人はわからない。
また、犯人が同じとは限らない。
第一王子の妻が毒殺されたのは、第三王子側の者が長男の転落死は第一王子側の者がやったのだと思って報復をしたとも、考えられる。
次期王位をめぐる争いが原因で亡くなったのは王族だけではない。それに、命を奪われるところまで行かなくても、罪に陥れられて牢獄に入れられた者や、財産を没収されたうえで家族とともに王都から追放された者もいたという。
今日、第二王子が家族をつれて、この街へ引っ越してきた。
王都から離れたこの街へ来ることで、次期王位争いから離脱するという意思表示をしたいのではないだろうか。
「なんだか、怖いね」
話が終わると、マコトがポツリと言った。
ハルカは冷静な表情を崩さず、リンを思い出していた。
屈託ない笑顔。
いま聞いたばかりの血なまぐさい話との関わりを感じさせない笑顔だった。





作品名:♯ pre 作家名:hujio