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こらぼでほすと 秘密10

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「あれ、エビフライにすんのか? まあ、いいけど。」
 ただのエビではない。大きなイセエビなので、とんでもないサイズのエビフライになるはずだが、悟空が食べたいなら、それもよかろう、と、ニールも頷く。冷蔵庫に保存しているエビは明日で捌けそうだ。どうせ、誰かは顔を出すだろうから、たくさん作るつもりをしている。
「エビチリ。」
「はいはい、マヨ焼きは? 」
「それは当たり前だ。」
 坊主もリクエストはする。焼くか茹でてマヨネーズで食べるのが、いつものスタイルだが、たまには辛いものも欲しくなったらしい。女房のほうも、はいはい、と、リクエストに頷いている。
「明日、エビ祭りか・・・レイは帰るんだよな? 晩飯食ってかないのか? 」
「さすがに、予習しないわけにはいかない。明日は午後には帰る。ハイネ、シンが来たら、あいつにも注意してくれ。あいつも、予習なんて忘れているはずだ。」
 アカデミーが始まるのは明後日だ。ある程度、事前に知識を頭に入れておかないと講義についていけない。一週間近く、遊んでばかりだから、そろそろ学業にスイッチも切り替えしないと、と、レイは言う。
「わかった。あいつが来たら、そう言ってやる。おまえもメールしておけ。」
 シンとレイは現役学生なので、学業が優先だ。店もアカデミーが急がしければ休んでもいいという扱いになっている。これから先、キラの補佐をしていくなら、必要な知識はどれだけあっても困らないからだ。真面目なレイの言葉に、ニールのほうは、それなら夜用の弁当をして持たせようとは心の予定に書き込んだ。
「トダカさんが選んでくれたスピリッツがありますが、開けますか? 」
「お湯割りにしてくれ。ハイネ、おまえも飲め。」
「ははは・・・お父さんのチョイスか。いいねぇ。レイ、リジェネ、おまえらも飲むか? 」
「僕はいいや。」
「俺は付き合います。」
「俺、メシ終わってから。」
 トダカチョイスのスピリッツなら味は保証されている。あまりアルコール度数の高くないものを選んでくれたのか、お湯割りにすると薄いという評価だ。
「あれ? 」
「もうちょっと足せ。」
「これ、古酒じゃなくて新しいヤツなんだな。でも、うめぇ。」
「これなら、ロックのほうが美味いんじゃないか? ハイネ。」
「そうだな。ママニャン、俺とレイはロックに変更。」
 ドバドバと原液を氷の入ったグラスに注ぎ、レイとハイネが味を確かめる。飲んで、うんうんと首を縦に振っているから美味いのだろう。
「あんたは、お湯割でいいんですか? 」
「これでいい。てか、あの舅、俺用じゃなくて、おまえが飲める基準で買ったんだろう。」
 アルコール度数が低く、爽やかな後味だ。三蔵が好む酒ではない。なるほど、と、ハイネも納得する。酒飲みが呑む酒というより、女性陣が好みそうな味だ。
「じゃあ、お湯割りはママニャンに進呈。」
「おう・・・確かに、これは俺でも飲めるな。」
 くいっと呑んだら、爽やかな味だ。普段、三蔵が呑むような酒の味でない。
「そういや、ウヅミーズラブの一桁組たちと顔を合わせたよ、ハイネ。」
「出て来やがったか、オーヴのじじいーずども。何もされなかったか? ママニャン。」
「しねぇーよ。トダカさんとご機嫌で酒盛りしてただけだ。俺も挨拶しただけ。トダカさんが、楽しそうで、ほんと仲が良いって感じだった。」
「まあそりゃな。元々が、ウヅミさんで繋がってたメンバーだから、仲も良いんだろうさ。何人? 」
「五人だった。あとは、一桁組はキサカさんだけだって言ってたから、あれで全員なんだろうな。」
 一桁組ということは、全部で九人のはずだ。あそこに、トダカも含めて六人。それからキサカだ。残りの二人は先の大戦で死んだのだろう。ウヅミは、自分の親衛隊のほとんどをカガリたち未来のオーヴのために遺してくれたらしい。
「珍しい。全員揃ってるとこなんて、俺でも見たことがないぞ。」
「そうなんだ。トダカさんと同じような雰囲気の人たちだったぜ? 」
 短い時間だったので、それほど観察はしていないが、責任のある地位についたことがある雰囲気だけは伝わった。
「軍人だけじゃないからな。一桁組は、ウヅミさんのブレーンも兼ねてた連中だ。今は、筋肉脳姫のブレーンをやってる。」
「なんか、そんなことも言ってたな。でも、陽気なおじさんたちで、飲んで騒いで帰って行ったよ。」
 ニールたちが水遊びしたり砂浜で休んだりしているうちに、一桁組の宴会は終わって、また水上飛行機で帰って行った。それにともなって、二桁後半組も帰ったので、あとは静かなものだった。トダカは、それからトダカーズラブのオーヴ組と少し話をして、水遊びに参加した。まあ、多少、酔っ払っていたので泳いだりはしなかったが。
「あの人たちも暇はないだろうからなあ。あんま、トダカさん、オーヴに帰らないから顔だけ拝みに出て来たんだろう。おまえ、またたらしてないだろうな? 」
「はあ? ハイネ? 」
「だって、ママニャンが笑顔で挨拶なんかしたら、普通の男は堕ちるぜ? まあ、トダカさんが阻止するだろうけどさ。」
「おちねぇーよっっ。人を、おかしなキャラにすんなっっ。」
「いや、このクールが売り物の俺ですら、おまえにぞっこんだ。おまえは危険なんだ。どんだけ危険か、俺が語ってやる。」
「酔ったな? 水呑め、水を。」
「いや、サル。そいつに原液飲ませて倒せ。」
「オッケー。」
 水を用意しようと動いたニールを無視して、坊主がサルに命じる。もちろん、サルは坊主の命令に素直に、台所からいつもの酒瓶を持って来て原液を、ハイネの口に注ぎ込む。
 ニールが気付いた頃には、ハイネがダウンしていた。真っ赤な顔でヘラヘラと笑っている。
「そろそろ寝る。おまえも寝ろ。」
「なんてことするんですか、三蔵さん。」
「ここからがハイネは長いんだよ。くちゃらくちゃらと喋るから酒がまずくなる。・・・レイ、もどき、ママを連れて行け。」
「俺も寝よう。お腹、パンパンだ。」
 悟空は出されたものを平らげて、ぽんぽんとお腹を叩いている。ハイネを脇部屋に運んでくれ、と、ニールが頼んだら、ほいほいと投げ込んでくれた。すでに、坊主は寝室に引き返している。
「とりあえず、ペットボトルだけ置いておけばいいかな。リジェネ、これ、ハイネの横に置いてきてくれ。」
「了解。」
 ミネラルウォーターのペットボトルをリジェネに配達させて、卓袱台のものを台所に下げる。洗ってしまおうと思ったら、レイに腕を掴れた。
「それは明日にしましょう。ママは、寝る時間です。」
 夜も更けた時間だ。そろそろ寝かさないとマズイだろう。それに、ママはほんのりと顔が赤くなっている。味見した酒で酔っているらしい。
「・・・うん・・ちょっと眠いかな。」
 レイに言われて、ニールも洗い物は諦めた。明日からは通常営業なので、まあ、いいか、と、踵を返す。

 回廊を進んで、レイは、となりのママを見る。ちょっと酔っていてヘラッと頬が緩んでいる。
「・・・ママ・・・以前、お願いしましたが・・・それは反故にします。俺は看病してもらわなくてもいい。あなたと、こうやって暮らせしていきたい・・・・」
作品名:こらぼでほすと 秘密10 作家名:篠義