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流れ星

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  {久々の海はどう?}

進がメールを開くと短い文章のメールが入っていた。寂しくてたくさん話したいだろうに心配かけまいと短くしたんだろうと簡単に想像つく。

  [ちょっと艦長のシートの座り心地が悪いぐらいで快適だよ。これがヤマトで
   後ろを向けばユキがいてくれれば何も言う事はないんだけどね。
   そう言えば今日はドレスを見に行ったんだろう?ユキのお母さんの事だから
   あちこち歩き回ったんだろうな。やっぱり一人娘となるとちからの入れようが
   違いそうだ。ユキは背も高いし色も白い。顔もほっそりしてキレイだから
   なにを着ても似合うだろうけど自分が一番着たい!と思ったものを選んで。
   それにいくらかかっても構わないから。ドレス代、ご両親が出す、って言っても
   絶対頷かないで。ユキにかかる分は俺が出したいから。ご両親にも前に
   きちんと言ってるけどユキのお母さん、自分の好みをユキに着せそうで…
   お金はうちで持つから!っていいそうだろう?ケンカにならないように
   お父さんをはさんでうまくやってね。……本当は一緒に選びたかったんだ。けど
   人から聞くと娘のドレスを選ぶのは母の一番の楽しみだ、って聞いてさ。
   だからそこだけご両親…特にお母さんに譲ったの。2か月後、お色直しの
   ドレス選びに行こう。]


進はもう一度読み返すとユキに送信した




輸送船団はゆっくり進む。タイタンに到着するまで時間がかかる。そしてディオネやテティス、エンケラドゥスなど土星の衛星、数か所へ向かい資材を積み込み再び地球へ戻る。今回も1年の任期…ヤマトも1年の任期だったのに…今回はその1年の間に何度も地球へ帰れるといのにヤマトの1年と比べてとても長く感じてしまう。

ヤマトじゃない、というだけなのにこんなに違うなんて…

進の眼にはユキのたった一行のメールしか映っていなかった













  「古代は無事出航したな。」

翌日出勤したユキに藤堂が声を掛けた。

  「おはようございます。昨日定時に出航して行きました。きっと久し振り
   の宇宙(そら)の海を満喫してると思います。」

ユキも笑顔で返す。

  「ははは、海、か。確かにそうだな。彼らは海の男だ。」(藤堂)
  「はい、タイタンに着いたら早速島くんと飲みに行くんじゃないでしょうか?」(ユキ)
  「そうだな、今回は島と一緒か。」(藤堂)
  「はい。相原くんも古代くんと一緒です。」

ちょっとうらやましそうな顔をするユキ。

  「任期が明けたらすぐ結婚式なんだろう?招待状待ってるからな。」

朝から冷やかしを入れる藤堂。

  「長官?まだ日も決まっていません!…でもご出席していただけるのですか?」

ユキが恐る恐る聞く。

  「古代とユキは沖田が残した大切なクルーだ。古代とユキだけじゃない。ヤマトに
   乗ったクルーの式は沖田の代わりに私が行こうと思っている。代わりじゃ
   ないな。沖田と一緒に参列する、という具合かな。」

藤堂の少し遠くを見るまなざしに沖田の事を思い出して少し悲しい気持ちになる。

  (私と入れ替わりのように息を引き取ったと聞いたわ)

  「沖田と私は同期でね…真田くんと守…いずれは古代と島もそうなるんだろう、と
   思っているが…一番大切な仲間だった。」(藤堂)
  「そう…だったんですか。」

ユキは自分にそんな風に高め合える同期がいないに気付いた。

  「ユキだってすばらしい同期がいるじゃないか。訓練学校を一緒に卒業した
   だけが同期じゃない。ユキの代を私は小学校卒業当時から見てきた。
   あの代の前の年から試験的に始めた訓練予備生…最初の年は失敗してしまったが
   ユキ達の代はすばらしい成績を残しそれが地球を救うという偉業を成し遂げた。」

藤堂のことばにユキが固まる。

  「ユキの同期はあのメインクルーだろう?同い年で偶然訓練学校に通い…ユキは
   大学へ進んだがただ進路が違うだけ、だった。その後ユキも訓練学校に
   通ったしタイムラグはあるが月基地で特別訓練も受けている。」

藤堂がユキの右肩に手を置いて

  「いいもんだ、同期というものは…何も言わなくてもわかってくれる所がある
   からな。一緒に呑む酒もおいしくなる、というものだ。」

藤堂の左手がユキの右肩から離れる

  「では朝のコーヒーをもらおうか。」

ユキは長官室を辞して給湯室へ向かった。





作品名:流れ星 作家名:kei