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流れ星

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  「あ…かわいい…。」

仕事が終わりまっすぐ帰るのがもったいないような気がして以前、須藤に紹介(仲介は南部)されたステーションの中にあるドレスを扱うショップの前をたまたまユキは通りかかった。奥に飾ってあるドレスがとてもかわいらしくてしばらく立ち止まりじっと見つめてしまった。

  (ちょっと…幼いかな?でもかわいい…)

肩に大きなフリルが付いている真っ白なドレス…。ふんわり膨らんだスカート部分もとてもかわいらしい。切り替え部分に大きなフリルがついていてさらにふわふわ感をUPさせている。

  (着てみたいな…)

と、思った時お店の中から声がかかった。

  「どうぞ中に入ってゆっくりごらんになってください。」

母より少し年配の女性のスタッフがユキに声を掛けてきた。

  「あ…あの…」

ユキが遠慮がちに後ろに下がろうとする

  「女性の夢ですから…見るだけでも…なんて事は言いませんわ。お気に召したなら
   試着してみてください。」

スタッフはユキにそう言って笑顔で話しかける。モールの一番奥とはいえ仕事帰りの人の行き来があって何となく人の視線を感じる。

  「あ、あの…すみません…。」

ユキは肩をすぼませながらそのお店の中に入った。






  「こちらを見ていたんでしょう?これ、新作なんです。今、若い方が結婚ブームで。
   間もなく地上に戻れるでしょう?青空の元で式を挙げるのにドレスの結構
   売れてるんですよ。ほら、ヤマトのBIGカップルのおかげでドレスの需要が
   かなり上がっているんですの。式は無理でも写真を撮りたい、って方が
   多くて。(飾ってあったドレスを手に取って)さぁどうぞ。着てみてください。
   きっとお似合いになりますわ。」

そのスタッフはユキの上着を受け取るとそのまま試着室に案内した。

 


  (うわ…かわいい…)

ユキは自分の姿ではなく鏡に映るドレスを見ていた。確かに30ぐらいの女性には似合わなさそうなかわいらしいドレス。ハイウエストでぎゅっと絞ってあるデザインがまたかわいらしさを増しているように見える。

  (私…似合っているのかな?)

小さなお店だと思ったが入り口が狭いだけで奥は広々していた。もちろんん試着室も広い。声を掛けてくれたスタッフも一緒に試着室にいる。

  「まぁ…お似合いですわ。」

スタッフがうっとりしてユキを見る。

  「もっと大人っぽいドレスの方がお似合いになるかと思ったのですが…」

スタッフの一言にユキが苦笑いする。

  「私もそう思いました。」

いつも年齢より上に見られてしまうのでその辺りは自分でよくわかっている。

  「オーソドックスなデザインですがかわいらしく見せる為にフリルをおおきく
   ざっくりたっぷり入れてふんわり感を増すよう、作られているんです。
   なので幼い人が着ると本当に幼くなってしまうので却って難しいデザイン
   なんですよ。失礼ですが御年、ハタチぐらいですか?」

スタッフはずばり、ユキの年齢を言い当てた。

  「はい、来年ハタチです。」

めったに年齢は当たらないので顔はポーカーフェイスを装ったが心の中ではすごい!と思っていた。

  「やはりそうですか~お若い方はお肌のハリが違うんですの。そう、一番幸せな
   頃ね。こんな美しい方じゃお相手の方は心配でしょうがないんじゃなくて?」

スタッフがフリルを整えながら話す。

  「いえ、心配なんてしてないと思いますよ?」

ちょっとした誘拐事件はあったが…

  「そうかしら?まぁ…ところで着た感じはいかがですか?」
  「はい、なんだかしっくりしてる感じがあって…不思議です。」

ユキがはにかみながら答える。

  「スナップを撮りましょう。一度お着替えになって別のごらんになったらいかが
   ですか?試着が一着じゃもったいないです。これだけたくさんのドレスが
   並んでいるんですから着ないとソンですよ。」

スタッルが試着室に用意してあるデジカメを取り出して数枚写真を撮った。

  「こちらのワンピースを着て下さい。被るだけだからすぐに試着できますし。」

ユキは“はい”と返事をしたがなんとなく脱ぐのがもったいない感じだった。

  「少し別のをお選びいただいて最後にもう一度こちらを着てみたらいかがですか?」

スタッフの言葉にユキは頷くとドレスを脱がせてもらった。







作品名:流れ星 作家名:kei