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流れ星

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  「ふぅ…。」

何気なく歩いていて目に入ってしまったドレス。これって一目惚れなのかな?と思いながらユキはシャワーのレバーを閉じた。

  (あのドレス、一度ママと見に行こうかな。)

寮のシャワー室の個室で体を拭くと髪から落ちる水はそのままに体にバスタオルを巻いて脱衣室に戻った。シフト制の軍の寮。人はまばらだ。

  (古代くん、あのドレス見てなんて言ってくれるかな?)

ユキは借りるつもりも買うつもりもないふりをしたのでそのドレスがいくらなのか聞きそびれてしまったのだ。




ユキはキャミソールとタップパンツを身に着け髪を乾かすと自室へ向かった。







  「こっちよ。」

次の週休日、ユキは両親をトウキョウステーションに呼び出していた。

  「おはよう、早速行きましょうか?」

母が一番乗り気だ。前回見に行った時は自分ばかりやるき(見る気?)満々でどこかユキは冷めた感じだった。ひょっとして進と結婚なんてしたくないんじゃないか?というぐらい冷めた空気だった。それが一週間もしないうちに一緒に見てほしいドレスがある、と連絡があったもんだから前回のモンクなんてぶっ飛んでしまうほど嬉しくて約束を承諾したのだ。

  「ママ、そっちじゃないわ。」

ユキの母はどこにそのお店があるのも聞く前に歩き出していたが反対方向だったのでユキが“こっちよ”と示した方に方向転換して歩き出した。

  「偶然、仕事の帰りにブラブラしてたら知り合いに紹介されたお店見つちゃって…
   そこでみたドレスに一目惚れしちゃって。それを見てほしいの。他も見たん
   だけどなんだかそれがすごい気に入っちゃって…ちょっとかわいらしすぎる
   かもしれないんだけどどうせなら私が一番着たいのを買って、って古代くんも
   言ってるから私は そのドレスを買おうと思ってるんだけど。」

ユキが歩きながら話す。

  「見てみないと何とも言えないわ。」

即決しそうなユキに母が顔をしかめる。花嫁のドレスの事など口をはさむ事ではないとわかっているのか一歩後ろから父が付いてくる。トウキョステーションの外れのモールの一番奥にそのドレス専門のショップがあった。




  「あら、先日の…。」

カウンターにいたのは先日ユキのフィッティングをしてくれた女性だった。

  「先日はお世話になりました。」

ユキが頭を下げるとユキの両親も“お世話になります”とあいさつした。

  「余程気に入って下さったんですね?」

一番目立つ場所に飾られていたドレスは奥にしまわれていた。スタッフは少々お待ちください、と言うと奥からドレスを持ってきてくれた。

  「こちらがお嬢様が選ばれたドレスでございます。試着してご覧になって
   いただきましょうか?」

スタッフはユキの顔を見てにっこり笑うと試着室に二人で入っていった。


  「あの…失礼な事を伺ってよろしいですか?」

ユキにドレスを着させながらスタッフが小さな声で聞いて来た。

  「ひょっとして…森ユキさんなんですか?」

かなり遠慮がちに聞いて来た。ユキは少し考えた後小さく”はい”と答えた。

  「ではお相手はヤマトの戦闘班長だった…古代進さん?」

ユキは恥ずかしそうに少しだけ頷いた。

  「すみません、すぐにわからなくて。きれいな人だなぁ、って思ったんですよ。
   森さんがお帰りになった後従業員が似てる、て言ってて…そうですか。
   ではご結婚が具体的にお決まりになったという事で?」

スタッフが背中のファスナーを上げる

  「いえ、まだなんですが母がドレスは早めに用意した方がいい、って」

ユキの顔が赤くなる。

  「式場もまだ押さえていないのに、って思うんですけどね…。」(ユキ)
  「そうなんですか、おめでとうございます。そしてありがとうございます。」

ユキはありがとうございます、と言われ固まってしまった。

  「ここのドレス、長い地下生活でずっと倉庫に眠っていた物ばかり。もう、
   一生日の目を浴びる事はないだろう、って思っていたんですよ。あのまま
   地下で浸透してくる放射能に侵されて死ぬか…そしたらこのドレスはどうなるん
   だろう、ってずっと思っていたんです。それをヤマトが地球を救ってくれて。
   そこへ古代さんと森さんの婚約発表…地上の復興も順調のようですし感謝しても
   しきれませんわ。…さぁできました。お母様に見てもらいましょう。」

スタッフがそう言って試着室のカーテンのスイッチを入れると自動で扉が開きその前でユキの母が待っていた


作品名:流れ星 作家名:kei