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流れ星

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  「まぁ、素敵なドレスね。かわいらしい」

ユキの母が珍しく開口一番で褒めた。父はただニコニコ笑ってみてるだけ。

  「あなたが選ぶドレスとは思えないけど初々しくていいんじゃないかしら?
   他のドレスとは随分傾向が違うみたいだけど?」

確かに並んでるドレスと比べると少し違う雰囲気をだしている。他のドレスはAラインで全体をほっそり見せるタイプだったりマーメイドラインが多かった。若い人向けだとミニドレスになってしまう。

  「そうですね、少し幼い感じですのが本当に幼い方は更に幼くなってしまうので
   少し難しいドレスなんですよ。お嬢様はこの難しいドレスしっかり着こなして
   らっしゃいますわ。どうでしょう?お母様、他になにかお気に入りがござい
   ましたらいくつかお嬢様に着てもらいますか?」

スタッフの言葉にユキの母はユキが試着してる間に目を付けたドレスを数点手に取りユキに着せてもらうよう手渡した。




  「え?あのデザイナーの須藤さんとお知り合いで?」

試着室の中でユキとスタッフの会話が続いている。

  「ヤマトのクルーのいとこで…仕事で着るドレスでお世話になった方にドレスを
   扱っているお店をご紹介していただいた中にこちらのお店の名前も
あって…。」(ユキ)
  「そうですか、まぁ嬉しい。特別にサービスをつけさせていただきますわ。
   それは追々考えますね。ではカクテルドレスは須藤さんの得意分野ですから
   そちらはお任せになりそうですわね。そう言えばご親戚が大きなグループ
   会社だと聞いた事がございますが…これの何かの縁、ですわね。」

スタッフは嬉しそうに微笑む。

  「確か弊社のオーナーと須藤さんが同じデザインスクール出身だったはずです。
   きっとその縁でご紹介していただいたのでしょう。後でオーナーに連絡を
   入れておきますわ。」

須藤の話をした事でユキの緊張もすっかりほぐれドレスの事や式の事、いろいろ聞く事が出来た。












  「やっぱりこちらが一番のようですわ。」

Aラインのもの、マーメイド型、若いから、とミニドレスも着たがやはり最初の一目ぼれしたドレスが一番しっくりきていた。試着室から更に奥に入りお茶の飲めるカウンターに移動してこのドレスをどうするか相談となった。

  「大事なのはユキの意見じゃないのかね?」

レンタルにするか購入するかでユキと母と意見が対立していた。ユキの母は一度しか着ないんだから、とレンタルする事を勧めるがユキは買いたいと言う。

  「だって一度しか着ないのよ?たいして費用は変わらないけれどこの白をキープ
   するのも大変よ?すぐにくすんじゃうんだから。」

確かにユキの母の言う事もわかる。

  「でも前以って写真撮って、で、式当日着れば2回着れるじゃない。」

ユキは手元に残しておいて邪魔になったら売ればいい、と思っていた。

  「こんな大きなドレス置く場所だって大変よ?」

確かにそれは否めない。多分式を挙げる日は間違いなく実家から行くだろうからどうしても実家に置いておくことになる。それを言われると何も言えないユキ。

  「ドレス代は自分で払うから…私、買うって決めたの。」(ユキ)
  「何を言っているの?花嫁が自分でドレスを買うなんて聞いた事ないわ!」(母)
  「ううん、古代くんが何があってもドレス代は自分で払うからユキの好きなのを
   選ぶといい、って。でも花嫁衣装を選ぶのは花嫁の母の特権だって、誰か
   からか聞いたみたいで…。」

ユキの言葉を聞いて母は何も言えなくなった。てっきりユキの花嫁衣装など興味がなく面倒だから自分の仕事中に自分の親と見てこい、ぐらいだと思っていたのだ。

  「進くんが…そうか。彼なりにいろいろ考えているんだな。」

父が笑顔でつぶやく。

  「本当は自分が一緒に行って選びたい、って言ってた。でも選ぶ基準もわから
   ないし、って。」






作品名:流れ星 作家名:kei