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流れ星

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  「ようこそ、森様。」

ユキは採寸の為にあのショップに足を運んでいた。時間通りについたのですぐに担当のスタッフが対応してくれた。

  「いらっしゃいませ。」

その隣からオーナーが顔を出した。

  「お世話になります。」
  「お待ちしておりました。どうぞこちらへ。」

用意された部屋はフィッティングルームより少し広い部屋だった。周りは全部鏡張り。明るめのライトが部屋を照らしていて眩しかった。壁にはユキの選んだドレスが飾られている。ユキはそれを見てにっこり笑った。

  「余程お気に召していただいた様子で。」

ドアを支えながらオーナーの三上がにっこりほほ笑む。

  「えぇ、見た瞬間これ!って思ったドレスなんです。一目惚れ、てあるんだなぁ、
   って驚いちゃいました。」(ユキ)
  「他も見て回ったんですよね?」(三上)
  「えぇ、ここにくる前の週は母に連れられてあちこち。でもなかなか…」(ユキ)
  「今写真婚が多いらしいですからね。いいものは写真館にあるのかもしれま
   せんよ。一般市民が地上に戻り始めているから地上での挙式もはやるだろうし。
   それの火付け役の方が今、ここにいらっしゃるんですからなんだか不思議です。」

三上がメジャーを手に取る。

  「え…三上さんが採寸するんですか?」

ユキが少し驚いた様子で聞く。

  「普段はしませんよ。ただこのドレスは私も気に入っているのでどうしても…
   それに悠輝の知り合いとなったら人任せにできません、って。あいつのドレス
   結構難しいんですけどそれを着こなす、って聞きまして…。私も本気を出して
   森さんの為に作ろうと思いましてね…。」

三上はそう言いながら“失礼”と言ってユキの髪を束ね軽くゴムで結んだ。

  「跡にならないから大丈夫ですよ。」

そう付け加えると襟ぐりからメジャーを当てる。その数字をスタッフが端末に打ち込んで行く。

  「細い腕ですね。少し脇を絞って作り直しましょう。」

三上が採寸しながら頭の中でデザインを修正している。しばらく数字を読み上げて採寸は終わった。

  「森さんの足のサイズは何センチですか?」(三上)
  「23です。」(ユキ)
  「ヒールは7㎝になります。」(三上)
  「はい。」(ユキ)
  「それとヴェールとブーケ…ティアラ使います?」(三上)
  「いえ…ティアラは止めておきます。」(ユキ)
  「いいんですか?ご主人と相談しなくて?」(三上)
  「えぇ、ヴェールも普通でいいです。」(ユキ)
  「森さんはこんな式を挙げたい、とかこんなドレスが着たい、とかないんですか?」

三上が不思議になって聞いた。

  「私、結婚式なんて挙げなくてもいいと思っているんです。でも古代くんの
   立場とか考えると挙げないわけにもいかなくて…。」(ユキ)
  「なるほど…そうですね。ご両親にも晴れ姿見せないといけませんしね。」(三上)
  「それ、古代くんが言ってました。私は別にいい、って言ったんですけど…。」

ユキの言葉に三上が驚く

  「そうなんですか。普通女性の方が積極的なんですけどね。だったらこのドレスに
   してよかった、って心底思えるように少しグレード上げないと!」

三上の言い方にスタッフも頷く。

  「いえ、いいですよ!」(ユキ)
  「ご主人の意向を尊重しましょう。大丈夫、アシが出る様なことはしません
   から。追加料金ナシでグレード上げて見せますよ。」(三上)
  「すみません。」(ユキ)
  「任せてください!私に任せてよかったって思わせて見せますよ!」

三上は胸を張った。







  「ユキさん!」

数日後防衛軍の廊下を歩いていると後ろから聞きなれた声が聞こえた。

  「南部くん、お帰りなさい。」

ユキが足を止めて振返る。

  「お、見返り美人に“お帰りなさい”なんて言われちゃった。後でみんなに自慢
   しよう。」

そう言うと南部は自分の荷物と一緒にユキが抱えている荷物を軽々持ち上げた。

  「南部くん、自分の荷物だって重いでしょう?私大丈夫よ、私が力持ちなの
   知ってるでしょ?」

急に自分の手が軽くなって驚きながら話すユキ。

  「やだなぁ、一緒に歩いててユキさんがたくさん荷物持ってたら一緒に歩く
   私が恥ずかしいじゃないですか。これ、長官室の秘書室に運べばいいんですか?
   さぁ、行きましょう。」

ツカツカと南部が歩きはじめる。ユキは苦笑いを浮かべながら南部を追うように歩き出した。




作品名:流れ星 作家名:kei