旅立ち集 ハイランダー編
「おいウィル。いつまで立っているんだ。さっさと帰れ」
怒声にしか聞こえない地声に押され、ウィルは礼を言って素早く家を飛び出した。
外に出ると、猛烈な海風に背中を押され、ウィルは足を踏ん張る。
見上げると雲はますます厚くなり、今にも泣き出しそうな空模様になってきた。
海上から冷気を帯びた不気味な霧がむくむくと絶壁に迫ってくる。
霧の孤島では海流の影響で天候が変わりやすく、そして文字通り霧も発生しやすい。
もうじき一雨きて、同時に霧がハイランドを覆うだろう。
ウィルは卵を割らぬように、小走りで家路に戻った。
作品名:旅立ち集 ハイランダー編 作家名:春夏