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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 18

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 名乗りを上げてしばらく、二人はにらみ合い、微動だにしない。ふと、突風が吹き付け、周囲の雪を巻き上げて地吹雪が起きた。
 二人は目を閉じ、地吹雪が収まるのを待った。そして地吹雪が止むと、開戦となった。
 シンとヒナ、それぞれの翡翠色の眼と眼が、刃越しに交わる。
「……シン、この短期間で、よくそこまで体得したものね。けど、あたしに言わせればまだまだ不安定。それで本当にあたしの動き、読めるかしら!?」
「なめるな!」
 二人はすれ違い、距離をあけて背中合わせとなる。
「……オレの力通眼は、まだまだヒヨッコなのはオレ自身で分かってる。だが、オレの武器は、力通眼だけじゃない! 見せてやるよ、オレの忍術全てをな!」
 二人は一瞬にしてその場から消えた。すると次の瞬間、別の場所で、刃がぶつかり合う音が鳴り響く。
「なかなか、いえ、かなり速いわね……。なら、これは見切れるかしら!?」
 ヒナはシンの背後を取ろうと、高速で回り込んだ。彼女の残像がのこる。
 シンの背後から、ヒナが攻めかかるが、シンは後ろにはまるで気をかけていない。
「はあ!」
 シンは上空から攻めかかるヒナの刃を弾いた。対するヒナは空中で一瞬静止したかと思うと、その姿は霧散していった。同時にシンの背後に迫るヒナも消える。
「さすが、まあ、これくらいは当然かしらね……」
 ヒナはシンの前方、間合いの外に立っていた。
「気の錯乱に惑わされてたら、あなたは頭から真っ二つよ。力は読めてるみたいね」
「ふん、あんな小細工使わねえで、マジで来いよ。まだオレを見定められてねえのか?」
「まさか、ただの小手調べよ。でも、もう分かったわ。力通眼を開眼したのは本当。これで安心したわ、あたしの本気の本気に、耐えることができるようでね……!」
 ヒナは一瞬にしてシンと距離を積めた。その速さは、弓から放たれた矢より数段速い。
 シンは驚くこともなく、間合いに入ってきたヒナに刃を振るった。その瞬間、ヒナは姿を消し、刃は空を切った。
 次にヒナが現れたのは、またしても上空であった。今度は受けず、シンは少し下がって落ちてくる刃を交わし、着地の瞬間で隙をさらすヒナに切っ先を突き出した。
 ヒナは攻めかかる時と同様に、一瞬にして距離をあけた。
「……なるほど、縮地法か。気配をあちこちに撒いて、相手を惑わすようなせこい気の錯乱なんぞ使わずに、瞬間移動みたいな事ができるのか」
「お見事、あたしが何をしたのか、そこまで分かるのなら、力通眼を得たと言っても遜色ないわ」
 ヒナは拍手した。
「それじゃあ本気の本気、見せてあげるとしましょう……!」
 ヒナは縮地法を使い、一気にシンの眼前へと迫った。
「流転……」
 シンの刃に阻まれながらも、ヒナは技を続け、シンの背後へ回る。
「転影刃!」
 シンは視線だけを後ろへ向け、もう片方の剣で攻撃を受け止めた。
 ヒナは攻撃を受けられると同時に、間合いから一気に離れた。
「次は……」
 シンはヒナの気配を探る。捉えた。彼女が次にくる場所は。
「甘い!」
 シンは振り返りざまに剣を振り回した。しかし、刃は虚空を斬る。
「甘いのはあなたよ!」
 ヒナは屈んで刃をすり抜けていた。最初に戦った日と同じ状況となっていた。
「もう一本あるのを忘れているぞ!」
「なっ!?」
 シンは左に回転する体を急停止させ、右の刃を大きくふるった。
 ヒナは縮地法で瞬時に下がるも、頬に薄い傷を作る。
 少量出血した頬をさすり、ヒナは血を拭った。
「……学習したようね、シン。もう少し読むのが遅かったら、首を飛ばされていたわ」
「ふん、お喋りは無用だ!」
 シンは、次はこちらの番、とばかりに一瞬にして間合いを詰めた。
「これは、縮地法!?」
 ヒナが使っていた縮地法を、シンは今覚えたのか、それとも習得していたのか。そこまでは計りかねたが、シンは、縮地法でヒナに迫った。
 互いに剣の届かない間合いで、シンは姿を消した。すると空中から漆黒の刃を向けて急降下し、ヒナを突き刺そうとする。
「落下……」
 突き出した刃は、ヒナを貫かなかったが、シンは着地と同時に白銀の刃を振るい、駆け抜ける。
「くらえ!」
「うっ!」
 ヒナは咄嗟に横へ避けたが、かわしきれず、今度は左肩に傷を作った。
 傷には目もくれず、ヒナはゆっくりこちらを振り返るシンに対峙する。
「……縮地法は、鍛練を積めば、誰もができるようになるもの。でもまさか、シンも使えるようになってるなんてね……」
「オレは忍だ。縮地法の一つくらいできなくてどうする? もっと本気で来いよ。まだまだ手加減してるだろ」
「言われなくても……!」
 ヒナは再び姿を消した。
 また縮地法か、シンが思っていると、今回は勝手が違っていた。
「縮地法は、何も一回限りの動きじゃないわ。連続で使えるようになってから、初めてこれを極めたといえるのよ!」
 ヒナはシンを中心に、何度も現れては消え、四方八方を囲んだ。
「ちっ、ちょこまか動きやがって!」
 シンの眼では、相手の動きの一手先を読むのが限界であった。しかし、ヒナの動きは、二手、三手と読めるようでなければ見切れない。
「そこ!」
 追い付けず、動きが止まってしまったシンの隙をつき、ヒナは抜刀と同時に斬りつけた。
 刃が迫るのを読みとる頃には、シンは肩口を斬られていた。
「くそ……!」
 ヒナはすぐさま納刀し、間合いの外へと縮地する。
「これが縮地法の奥義よ。たとえ力通眼を持っていても、あなたのような習得したてじゃ、あたしの縮地法を全部読むのは無理ね」
 ヒナの言うことは、シンにもよく分かっている事だった。正しく、シンの力量を読み切っているからこそ出た発言である。
「なめるんじゃねえ、オレはようやく力通眼を手に入れたんだ。次こそ見切ってやる!」
 シンは血走った翡翠色の眼を、ヒナへ向ける。
「だったら、これを見切ってみなさい!」
 ヒナは一瞬にして突進してきた。そしてシンとのすれ違いざまに、いくつもの剣閃が煌めいた。
「瞬散刃……!」
 ヒナが足を止めて刀を納めると、シンは体の数ヶ所から血を噴き出した。
「ぐうう……!」
 シンは膝から崩れ落ちる。
「十四の内、防げたのは四回、か。ほとんど受け切れてないわね……」
 ヒナの縮地法を使った技の一つであるこれは、相手とすれ違う瞬間に、十四ヶ所斬りつける技である。その速さは、よほどの手練れであっても見切れない。一瞬にして周囲から矢を同時に放たれるようなものだった。
「まあいいわ。そんなに傷ついちゃもう戦えないでしょ? これで終わりにしましょう!」
 ヒナは一瞬で、シンにほぼ密着する程に接近し、刀を逆手に握り、振り抜いた。
「炸裂刃!」
 空気を、音速を超える速さで斬りつける事によって発生する衝撃波が、膝を付くシンを包み込みズタズタに切り裂いた。
「ぐわあああ!」
 シンは血の海に沈み、息絶えた。
「シン……、一月後に、また会いましょう……」
 ヒナは構えを解き、亡骸となったシンに背を向ける。
「一月後に、どこで会うんだ?」
 絶命したはずのシンの声がした。
「そんな!?」
 ヒナは驚き後ろを振り返る。そこには血の海に沈んだ、シンの骸などなかった。