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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 18

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「はい……」
 シレーネは、様々なボールを召喚し、魔術の準備を始めた。
 策を弄し、後はデュラハンを倒せる存在を待つのみとなったアレクスは、自らが進言した通り、ウェイアード中の人々にデュラハンの存在を知らせようとする様子を見ながら、彼の者を打ち倒す者の出現を願うのだった。
    ※※※
 灯の消えた灯台の頂上に、男女数名のグループが倒れていた。
 一度は灯った灯台の力で、プロクスを襲っていた、大寒波は静まり、猛吹雪も止み、プロクス周辺は久方振りの太陽に照らされていた。
「……う、んん……」
 朝日に目蓋を刺激され、朝に目覚めるかのように、ロビンは目を開けた。しかし、久し振りに照らす太陽に眩しさを感じ、すぐに目を閉じる。
「オレは……、一体……?」
 ロビンは目を擦りながら身体を持ち上げた。石造りの場所に倒れていたせいか、少し体に痛みがあった。
 曖昧な記憶のまま、ロビンは辺りを見渡した。
 仲間達も皆同じように倒れている。しかし、誰も体には外傷を負っていない。まるでただ、ここで一夜を明かしたのではないか、そう思えるほどであった。
 ロビンへと次第に記憶がよみがえってくる。
「そうだ! デュラハンとか言う奴が現れて……!」
 ロビンは一人で大声を上げた。
 ありありとよみがえり始めた記憶は、すぐにロビンを支配していく。
 この灯台の頂上にたどり着き、待ちかまえていたのは、悪魔のしもべとされる者達である。彼らはシバとイリスの身を拘束しようとしていた。
 この場に彼女らの姿は見られない。となれば、悪魔、デュラハンに浚われてしまったのは確実である。
「みんな、起きてくれ!」
 ロビンは大きな声で、倒れている仲間達を起こした。
「……んだよ、もう少し寝かせろっての……」
「起きろ、ジェラルド!」
 ロビンの大声に、迷惑そうに寝返りを打つジェラルドを、ロビンは引っ張り起こした。
「ふあ……、ねみ……。ってここは!?」
 ジェラルドが起きて、目を覚ますまで、時間はかからなかった。
「マーズ灯台の頂上だ。話は後にしよう、とにかくみんなを起こすぞ!」
「ああ!」
 ロビンとジェラルドは倒れ、眠り込んでいる仲間達を起こして回った。
 幸い、外傷がないため、仲間達は目を覚ますとすぐに、動くことができた。
「父さん、起きてくれ!」
 ロビンは父、ドリーをゆすり起こしていた。しかし、呼吸も脈拍も安定しているものの、ドリーは目を覚まそうとしない。
「父さん、母さん!」
「パパ、ママ! ねえ、起きてよ!」
 ガルシア兄妹は、両親を揺すっていた。しかし、ドリー同様、シェルスとアンも目を覚まさない。ただ深い眠りにつき、ともすれば昏睡状態に陥っていた。
「嘘、でしょ……? やっとパパ達に会えたのに、こんな、事って……」
 ジャスミンは両親の死を予感してしまい、思わず目に涙が溢れてくる。
「ジャスミン、心配するな。確かに父さん達は目を覚まさないが、死んでいるわけじゃない」
 ガルシアが言ったところで、何の慰めにもならなかった。
「パパとママが死ぬような事言わないでよ! 兄さんは心配じゃないって言うの!?」
 ジャスミンは心配のあまりに、心に余裕がなくなり、ガルシアに当たってしまう。
「俺だって心配さ。けど、父さん達は怪我をしてる訳でもないし、息も安らかだ。ただ眠っているだけなんだ。自然に起きるのを待とう……」
 ガルシアが言っても、しばらくジャスミンは嗚咽を漏らしていた。
 ロビンは昏睡状態のドリーをゆすり起こすのを止め、ガルシアの言うように、心配ではあるが、自然に目覚めるのを待つことにした。
「どうして、父さんやおじさん達だけ起きないんだろう……?」
「エナジーを使おうにも、問題を取り除ける所はありません。本当にただ、眠っているだけのようですわ……」
 メアリィは言う。回復しようにも、どう言うわけか彼らの体力は、十分生を繋げるほどに満ちており、これ以上手の施しようがなかった。
「イリスが、イリスがいないぞ! ちきしょう、浚われたか……」
 イリスの事も悔やまれたが、同時にシンは先の戦いを思い出し、押し黙った。
 イリスはデュラハンに連れ去られたのだろう、という考えにたどり着くのは簡単だった。
 それよりもシンには悔しくては仕方ない事があった。
 シバを救出しようとした時に、邪魔をしてきたセンチネルの事である。彼とは勝負になり、シンは圧倒的力の差に大敗を喫した。
 センチネルの前ではエナジーは効果を成さず、純粋な剣の勝負であった。
 センチネルの方もエナジーを使えないのか、それともエナジーを使うまでもない相手と見なされたのか。考えは知れたものではないが、剣のみでの戦いとなった。
 そしてとてつもない力の前に敗北した。
 シンはあの戦いを思い出し、悔しさに振るえた。
「イリスはきっとデュラハンに……。だとすれば、一体奴はどこに……?」
ーー彼の者、ここに在らず……ーー
 ロビンの言葉とほぼ同時に、どこからか声が響いた。
「誰だ!?」
「彼らの仲間でしょうか……!?」
「姿を現せ!」
 ロビンとイワン、そしてガルシアが叫ぶと、彼らは戦いになっても大丈夫なように身構えた。
 父母が目覚めぬ事に意気消沈していたジャスミンも、顔を上げたが、シンは構えなかった。
「落ち着けお前ら、火口の前を見てみろ」
 シンに言われると、ロビン達は彼の示した方を見る。すると、驚くべき現象が、彼らの前にて生じた。
 水が空間に集まっていき、まるで何かの容器にでも収まっているかのように、水は人型となった。
「お前は……!?」
『我、言を伝える者なり……』
 人型の水は、人間でいうところの口の部分から水をこぼしながら、話した。
「伝える者、だと?」
 ガルシアが訊ねても、人型の水は答えなかった。これ自体には意思が備わっていないようである。ただこれを作り出した存在の、与えた言葉のみを話しているようだった。
『彼の者、ギアナの地、アネモス神殿に在り。虹の女神なる者、アネモスの巫女なる者、共にその地に在り……』
「デュラハンめ、やっぱりイリスは、奴に……!」
 ロビンは人型の水の言葉を聞き、歯噛みした。
 人型の水の話は、まだ続く。
『虹の女神、神の力を以ても勝るに能わず。彼の悪魔、その力を得んとす……』
 人型の水が言葉を発する度に、口らしき物から水がこぼれ落ちていき、次第に体積が小さくなっていく。
 ロビン達は黙って話を聞き続けた。
『彼の者、世を須く破壊す。現に、彼の者、打ち倒す者在らず。世に在りし者、死するのみ……』
 人型の水は、最初に現れた原形を留めぬほどに、小さくなった。
「死ぬだけだ!? くそっ、ふざけたことをぬかしやがって!」
 ジェラルドは憤りを見せた。
『世に在りし者、死するまでの時、一月……。我、言を伝えた者。以てここにて消滅せん……』
 容器に包まれたような水の存在は、空で割れた水風船のように、支えを失い、形をとどめぬ水となり、地に飛沫を上げた。
「うわっ!?」
 食い入るように、水の者の話を聞いていたロビンは、飛沫を少し受けてしまった。
「何だったんだ、あいつ。無茶苦茶なことばかり言いやがって!」