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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 18

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 少し古い言葉で話され、理解が今一つ及ばなかったジェラルドは、苛立っていた。
「どうやら、あの物体が言っていたことが本当なら、デュラハンはボクの故郷にいるようです。姉さん、大丈夫でしょうか……?」
 水の者の話の内容から、デュラハンはギアナ村付近に潜伏している事をイワンは理解した。
 これが事実ならば、今ギアナ村にいる者は危険であり、村にいる姉、ハモの身にも危険が迫っている事にもなる。故にイワンは心配になったのだ。
「イワン、心配するだけ無駄だぜ。あんな得体の知れない物の話、信じることねえよ」
 信じ込んで心配するイワンとは対称的に、ジェラルドはまるで信じていなかった。
「あれ、これって確か……?」
 ロビンは水の者がはじけ、濡れた所に転がる、瑠璃色に光沢を放つ物を見つけ、しゃがみ込んで手に取った。
 それは紛れもなく、シバが指にはめていたラピスラズリの指輪、テレポートのラピスだった。
 シバがバルログにより連れ去られようという時に、彼の腕の中で暴れていた際に、指から外れてしまっていた。
 外れて地上に落ちようとする指輪を取ったのは、イリスである。そのイリスが懐に入れていた指輪は、彼女がデュラハンに連れ去られた時、零れ落ちたのだが、運良く灯台の上に落下したのだった。
「一体どうしてここに……?」
 全ての者が気絶していた中で落ちた物であるため、このような所に転がっている理由など、ロビン達には知る由もなかった。
 突如として、辺りがどす黒い閃光に包まれた。
「な、なんだ!?」
「この感じ、まさか……!?」
 唐突に辺りを包み込んだ漆黒の光は、暗黒の力に満ちており、息をするのも辛くなるほどの圧力さえ感じる。
 この感じは、あの者の近くにいた者ならば、よく分かる。この身動き一つとれなくなる黒い力の正体は。
「デュラハン……!?」
 圧倒的な闇の力についに屈し、ロビン達はバタバタと膝を突いていった。
 巨大な闇の力を持つ、漆黒の閃光は、ウェイアード全てを包んでいく。
    ※※※
 アンガラ大陸中央部にある、カレイの町。
 大商人ハメットが作り出した、街道の真ん中に位置する、小さな商業都市は今日もまた商人達の働く、活気あふれる声が響いていた。
 町の創始者、ハメットはしばらくの間、北の盗賊が集う村、ルンパ村に人質として捕らえられていたが、三月ほど前に、ハメットの従者、ブンザを中心に町人が起こした反乱により、彼は救出されていた。
 さすがに救出された直後は、ろくに食事も貰えなかったのか、憔悴していたハメットであったが、二週間も休むと回復し、今やもう商人として交易にいそしんでいた。
「今日もいい天気ですね」
 ハメットはトレビの町からやって来た商人を接待していた。
「その通りですね、もう春もすぐそこまで来ているみたいですね」
 厳しい冬の寒さもすっかりなくなり、小春日和が続いていた。
「数ヶ月前は、アルファ山が噴火したせいでひどい目にあったものでしたが、今は全く、平和そのものですよ」
 ハメットは世の平和を肌で感じ、笑顔で言った。
「いやはや、全く……」
 二人が話していると、急に辺りが陰に包まれた。
「おや? 雲が出てきましたね。一雨来るのでしょうかね」
「おかしいですね? トレビの学者からは、向こう一週間晴れると聞いていたのに……」
 陰は雨雲によるものではなかった。太陽の光の代わりに、黒い光が辺りを支配し、カレイの町の人々に暗黒の力が襲いかかった。
「ぐわあああ!」
「きゃあああ!」
「くっ、苦しい……!」
 平和な日常を送っていた町は一転して、暗黒の力の圧に苦しむ人々の呻き声に包まれた。
 ゴンドワナ大陸南部、キボンボ村。
 以前、黒魔術の儀式の成功のため、様々な略奪を繰り返していた村の戦士達も今や落ち着き、ただ村民のために狩りをする団体となっていた。
 ただ一人、キボンボ村に奉られる神、ガンボマに認められるため、依然修行中の男がいた。
 キボンボの族長、アカフブは自室にこもり、瞑想していた。そこへ村の戦士が一人駆け込んでくる。
「アカフブ様!」
「なんだ騒々しい。俺は今修行中だ。後にしてくれ」
「修行どころではありません! とにかく外に来てください!」
 言っても聞かなそうな戦士を相手に、心底面倒に思いながら、仕方がなくアカフブは戦士に同行した。
「つまらんことだったら、承知せんぞ……」
 外に出て、アカフブが見たものは、つまらないものなどでは全くなかった。
「これは……!?」
 村中が暗黒に包まれ、闇の力に負けた村人達の呻き声に包まれる風景が、アカフブの目の前に広がった。
「ガンボマ様の祟りじゃぁ……!」
 どこかから老人が苦しそうに叫ぶ声が聞こえた。
 違う、アカフブは思った。エナジーが備わっているためか、この暗黒の力の根元は別なところにあると感じたのだ。
「動ける者は全員ガンボマ像の前に集合させろ! ガンボマ様に祈りを捧げて……」
 ついにアカフブまでもが闇の力にやられ、とてつもない圧力を前に、膝をついた。
 オセニア大陸一の町、アラフラの町。
「これは一体どうしたことなのですか!?」
 アラフラの町長は、突如襲いかかって来た闇の力により、町人が次々と倒れていく状況を前に、誰にともなく怒鳴り声を上げた。
「分かりません! 先ほど陰りができたかと思ったら、訳の分からない力で住人が!」
「そんな事は分かっています! 私が聞いているの……は……?」
 アラフラの町長は力を失い、卓の上に倒れ込んだ。
「町長!? うっ……!」
 報告に来た衛兵も、激しい目眩に屈した。
 ウェイアード極東に位置する、ジパン島イズモ村。
 村の中央広場にて、村人全員が集合し、長であるウズメが呪術によって、村に充満する暗黒の力を防ぐ障壁を展開していた。
 しかし、破壊神により出される闇の力は、ウズメのような術師の障壁など、紙も同然であった。
「うう……」
 村人全員を守ると言うだけあって、ウズメの力はとてつもない早さで尽きていった。
「ウズメ様……、お助けくだせぇ……」
「ウズメ様……、ワシのような老人は、ええ……。若いものを助けてくだされ……」
「ウズメ様……、俺たちゃ、死んじまうんですかい……?」
 ウズメの作る障壁のおかげで、まだ倒れてしまった者はいなかったが、オロチ復活よりも恐ろしい事が起きているためか、村人達はウズメにすがりついていた。
 透明の光により展開されるドーム状の障壁の中で、ウズメ様、ウズメ様、という声が、餌をほしがる鳥の鳴き声のように響く。
「お前ら、勝手な事ばかり言いやがって! 姉貴は今必死にお前らをを守ろうとしてるじゃねえか!」
 スサは物乞いをするような村人に怒鳴った。
「よしなさい、スサ……」
 ウズメは疲れ果てた声で、民に怒鳴りつける弟を止めた。
「姉貴……、でもこのままじゃ姉貴が……」
「いえ、もう、私は、限界……」
「姉貴!」
 ウズメは力を使い切り、虚ろな目をして地面に両膝を付いた。同時に障壁は破れてしまった。
 暗黒の力は、どす黒い霧をも発生させ、辺りに漂っていた。
 それがイズモ村の民へと襲いかかる。