守るべきもの
訓練兵一同が広場に集められていた
みんな重い表情をしている
「ジャン
ジャンはどうして突然調査兵団に?
その・・・怖くないのですか?」
サシャが恐る恐る尋ねた
「は?嫌に決まってんだろ調査兵団なんか」
「え?じゃあお前なんで・・・」
コニーが聞く
「別に巨人が怖くないから調査兵団に
決めたわけじゃねぇよ
そして有能な奴は調査兵団になる
責任があるなんて言うつもりも無いからな」
ジャンの言葉に徐々に力が込もる
「いいか?くれぐれも
エレンみてぇな死に急ぎ野郎とオレを
一緒にすんなよ
オレはな・・・誰かに説得されて自分の命を
懸けているわけじゃない
こればかりは自分で決めずに務まる
仕事じゃねぇよ」
(なぜみんなこんなに真っ直ぐでいられるんでしょうか)
サシャは昨日のケイやジャンを見て思った
「今日の選択に悔いを残して欲しくない
自分の道は自分で真っ直ぐ見据えて欲しい」
「ケ、ケイ!?」
「みんな顔が暗いよ」
ケイを見てみんな驚く
「か、髪が・・・」
腰の辺りまで伸びていたくるくるのロングヘアー
それをツインテールに赤いリボンで結び
長い前髪を横に分けて花の形のピンで留めることが
彼女のトレードマークだった
「うん、切ちゃった。似合う?」
現れたケイの髪はアルミンよりも少し短く
前髪も短く切っていた
ふわふわしていて女の子らしかったケイは
すっきりしてより兵士らしい印象になっていた
(ショートも似合う・・・)
コニーは頬を赤らめる
「い、一瞬誰かと思ったぜ」
「すごい思い切ったね!別人みたいだけど
似合ってるよ!!」
ジャンとアルミンがそう言うと
ケイはホッとしたように笑った
「これは、私の覚悟の証」
髪の先をいじりながら見つめるケイ
(ケイ・・・)
やっと会えるかもしれない人に
明日会えるのに
何故こんなにバッサリ髪を・・・
印象が変わりすぎて見つけてもらえないんじゃ・・・
『うん。でもね、当分まだ会えない
だからわからないようにしたの』
本音を言うとね
こんなに変わっても
ひと目で見つけてくれないかなって
勝手に思ってたりもするんだけどね
「訓練兵整列!壇上正面に倣え!!」
上官の大きな声が響く
いよいよ選択の時だ
和んだ場の空気も一瞬にして凍る
不安を募らせた表情で
兵士たちは指示通りに整列する
本当にこれが最後の猶予だった
そして壇上に
調査兵団団長エルヴィン・スミスが現れた