守るべきもの
ペトラは黙る
きっとその言葉は兵士の皆が思うことだ
今はこうやって普通に話してはいるが
エレンが巨人化できる事実は変わらない
こうしてエレンの隣にいるということは
いつでもエレンは巨人化して自分を殺せるということだ
そんな危険を背負って一緒に生活している
エレンに殺意がなくても
いつか暴走したエレンに殺される可能性だってある
けれど、戦力としても
無限の可能性を秘めている彼を
そう簡単には殺すことはできない
むしろ彼を守るために盾にならなければ
いけなくなることだって多々出てくるだろう
「・・・でもケイって奴は違って」
『頑張るなとは言えないし
ジャンの言いたいことだってわからないわけではない
でも、エレンは無理する必要はない
エレンのその腕にはたくさんの命が
懸かっているのは事実だけど
それは私たちみんな同じ
エレンは弱い
一人では戦えない
貴方の背中を守るのは私たち
私たちの腕にだってたくさんの命が懸かってる
だから・・・一人では戦わないで
共に戦いましょう
孤独と戦っても強くなれない
自分とみんなを信じて・・・心を強くね』
ケイはエレンの手を握って言った
「自分でもよくわからないまま
化物扱いされたり希望の光扱いされたり
正直ずっとどの言葉を信じて進めばいいのか
わからなくなっていたので・・・
彼女の言葉に励まされたというか」
「・・・ケイ、だと?」
ふっと後ろから声がした
「き、きゃああああああっ」
「リヴァイ兵長!?」
ペトラは思わず悲鳴を上げた
「ちょ、ちょっとリヴァイ兵長!!
いきなり物音も立てずに後ろに
立たないでくださいっ」
「お前の知り合いか?」
ペトラの叫びを無視してリヴァイは尋ねた
『孤独と戦ってなんになる
テメェの力一つでなんでも出来るわけじゃねぇ
だったら信じろ、心を強く保て』
同じようなセリフを言った気がする
「は、はい。104期の同期です
今年調査兵団に入ったオレの友人です」
「そうか、なんでもねぇ・・・・・・」
「!」
リヴァイはそう言うと
すぐに部屋を出て行ってしまった
「な、なんだったんですかね」
「わからないけど・・・いきなり過ぎて
かなり焦っちゃったわ」
ペトラが深呼吸をする
「大丈夫ですか?」
「あ、ぜんぜん大丈夫よっ
それより兵長のあんな顔
初めて見た気がするわ」
普段からあまり感情を表に出さない
いつも眉間に皺を寄せて
不機嫌そうな顔をしているリヴァイだが
先ほどの表情は違った
驚きと・・・
少しの期待というか
喜びというか
微かな違いすぎてはっきりとはわからないが
確実にいつもとは違った
(・・・人違いだ)
エレンはリヴァイが小さく呟いた言葉を
聞き逃さなかった
一体誰と間違えたのだろう
リヴァイ兵長のことを何も知らない
エレンがそれを考えたところで
答えなんか見つかるはずもなく
とりあえず片付けを済ませて地下の部屋に向かう
冷たい地下が
エレンの寝床だ