守るべきもの
「なっなぁ
中列だけ森の中に入っていったみたいだけど
陣形ってどうなっているんだ?」
コニーが不安そうな表情でミカサに尋ねた
「陣形はもうない
私達左右の陣形は森に阻まれて
その周りを回るしかない
索敵能力は失われた」
周りの兵士たちは困惑していた
それは新兵だけではなく
先輩兵士の人たちも同様であった
「正気かよ・・・」
ジャンが呟く
「当初の兵站拠点作りの作戦を放棄
その時点で尻尾巻いてずらかるべきところを
大胆にも観光名所に寄り道・・・
そのあげく馬降りて抜剣してつっ立って
森に入る巨人を食い止めろと・・・」
ジャンも気がたっている様子だ
それもそうだ
先ほど女型の巨人と対峙し
その驚異を体験してきたところだというのに
次は細かい説明もないまま
意味のわからない命令で待機させられて
いるのだから
森の中でも混乱は同じだった
「クッ・・・
この森の中じゃ事前に回避しようがない!」
「速い!!追いつかれるぞ!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドッ
女型の巨人はリヴァイ班を視界に捕らえていた
「兵長!立体起動に移りましょう!!」
ペトラが叫ぶ
しかしリヴァイは返事をしない
ガサッ
後ろから立体起動装置をつけた兵士が現れ
女型の巨人に応戦する
「背後より増援!!」
増援により
女型の巨人のスピードは少し緩くなる
「!?」
しかし一瞬だった
一人は木に叩きつけられ
一人は握りつぶされた
捕食が目的ではない
ただ殺すために殺すやり方だった
あれはただの巨人ではなく
エレンと同じ巨人になれる人間だ
「兵長!指示を!
やりましょう!あいつは危険です!!」
「俺達がやるべきです!」
オルオとグンタが叫んだ
「ズタボロにしてやる」
エルドも構える
(馬鹿め!自分から地獄に来やがった!
お前が追っかけてんのは巨人殺しの
達人集団だ!!)
エレンはチラリとリヴァイを見た
しかしリヴァイは相変わらず口を開かない
「リヴァイ兵長!?」
「指示をください!!」
エレンとオルオが再び叫んだ
「全員耳を塞げ」
キィィィィィィィィィィィンッ!!
音響弾の音が森に響く
思わず全員耳を塞いだ
「・・・お前らの仕事は何だ?
その時々の感情に身を任せるだけか?
そうじゃなかったハズだ・・・
この班の使命はそこのクソガキに
キズ一つ付けないように尽くすことだ
命の限りな・・・」
リヴァイの言葉に班員の顔が引き締まった
(!?・・・オレを監視するためなんじゃ)
「俺達はこのまま馬で駆ける。いいな?」
「了解です!」
「え!?駆けるって・・・一体どこまで!?
それにヤツがもうすぐそこまで!」
ガサガサッ
再び増援が現れた
「増援です!早く援護しなければ
またやられます!!」
「エレン!!前を向け!」
グンタが叫んだ
「歩調を乱すな!最高速を保て!!」
「グンタさん!?エルドさん!?
何故・・・リヴァイ班がやらなくて誰が
あいつを止められるんですか!」
グシャッ
また兵士が潰される
「また死んだ!
助けられたかもしれないのに・・・」
それでもリヴァイ班は走り続ける
前を向いてただひたすら走る
「エレン!前を向いて走りなさい!!」
「戦いから目を背けろと!?
仲間を見殺しにして逃げろって言うんですか!?」
エレンは巨人化する力を持っているといっても
まだ15歳の少年だ
このような現実に耐えられるわけがなかった
「ええそうよ!兵長の指示に従いなさい!」
ペトラが必死に叫ぶ
「見殺しにする理由がわかりません!
それを説明しない理由もわからない!何故です!?」
「兵長が説明すべきではないと判断したからだ!
それがわからないのはお前がまだヒヨッコだからだ!!
わかったら黙って従え!」
オルオも怒鳴る
それでもエレンにはこの状況に
納得できなかった
リヴァイ班はまだ走り続ける