守るべきもの
後方ではまだ兵士が女型の巨人と戦っていた
たった一人で・・・
(・・・イヤ、一人でだって戦えるじゃないか)
自分の手のひらを見た
(何でオレは人の力にばっかり頼ってんだ
自分で戦えばいいだろ)
手を咥える
「エレン!?何をしているの!!
それが許されるのはあなたの命が
危なくなった時だけ!
私たちと約束したでしょ!?」
ペトラがエレンに訴えかける
周りの班員の表情も強ばる
「エレン
お前は間違っていない
やりたきゃやれ」
リヴァイの声色は
こんな状況だというのに落ち着いていた
「兵長!?」
「俺にはわかる
コイツは本物の化物だ「巨人の力」とは
無関係にな・・・
どんなに力で抑えようとも
どんな檻に閉じ込めようとも」
『とにかく巨人をぶっ殺したいです』
あの獣のような目を思い出す
「こいつの意識を服従させることは誰にも出来ない」
リヴァイは話を続ける
「お前と俺達との判断の相違は
経験則に基づくものだ
だが、そんなもんはアテにしなくていい選べ・・・
自分を信じるか
俺やこいつら、調査兵団組織を信じるかだ」
エレンは戸惑う
「俺にはわからない。ずっとそうだった
自分の力を信じても・・・
信用に足る仲間の選択を信じても・・・
結果は誰にもわからなかった
だからまぁ・・・
せいぜい悔いが残らない方を自分で選べ」
『大丈夫だって!私を信じて!!』
そうだ
どっちを選んだって
結果はわからない
どの選択をしておけば正解だったかなんて
あとから考えてもわかりゃしねぇんだ
「・・・エレン、信じて」
ペトラの言葉にエレンは止まる
『一人の力じゃ大したことは出来ない
だから私達は組織で活動する
私達はあなたを頼るし
私達を頼ってほしい
私達を・・・』
「私達を信じて」
ペトラの手の歯形が思わず目に付いた
まだ自分でも未知数の巨人の力を持った
驚異的な力を持ったエレン
いつエレンに殺されてもおかしくない
そんな中でも
エレンを受け入れようとしてくれた存在
「・・・!!」
「エレン!遅い!!
さっさと決めろ!!」
リヴァイが初めて叫んだ
「進みます!!」
エレンは決心した
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ」
グシャッ
後方で戦っていた最後の兵士が
潰れる音が聞こえた
「ごめんなさい・・・」
エレンは俯く
最後の兵士を殺した途端
女型の巨人は加速した
ドドドドドドドドドドッ
「目標加速します!!」
「走れ!!このまま逃げ切る!!」
(・・・不可能だ)
逃げ切るなんて
このまま背を向けて走っていれば
全員ペチャンコになる・・・
それでも
死にそうだけど
仲間を見殺しにしても
みんなと前に進むことを選んだ
リヴァイ兵長は前を見続けている
先輩達も・・・
兵長を信じて全てを託している
オレは・・・なぜこっちを選んだんだ!
助けられたかもしれない命を
見殺しにしてまで!
オレは・・・オレは・・・
欲しかったんだ
「兵長!」
「進め!!」
女型の巨人はもうすぐそこだった