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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】前編

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一人帰還した蒼雪は、入り口付近をうろついていたシアンを捕まえて、手短に報告を済ませる。ジェネラルが別行動をとっていることを聞いたシアンは、困ったように笑いながら、「大丈夫、すぐ戻ってくるよ」と言った。

「ありがとう、蒼雪。君が出動してくれて助かった。ミドリがまた寝込んでしまってね。ノアールも少し熱があって、動けるのが君とサイレンスくらいだったから」
「いえ、私は」

ジェネラルに言われただけという言葉を飲み込んで、蒼雪は曖昧に頷く。ノアールの不機嫌そうな顔を思い出し、既に体調が悪かったのだろうかと考えた。

シザーズに知らせた方がいいだろうか。

そう考えて、既に聞いているだろうと思い直す。わざわざ、自分が蒸し返すことでもない。
シアンと別れ、気が進まないながらも、礼拝堂に足を向けた。多分、モモはそこでヴァイスと一緒にいるだろう。
異形が出現して、討伐に出た人形達が戻ってくるまで、ヴァイスは祈りを捧げている。最年長の彼に、モモは良く懐いていた。
ジェネラルの賭に乗るのは癪だが、後で文句を言われるのも面倒くさい。それに、何の約束を交わしたのかも気になった。



礼拝堂の扉を開けて、蒼雪は一瞬立ち止まる。黒い法衣に身を包んだヴァイスの髪が、天井から差し込む光で金色に輝いていた。振り向いた真紅の瞳と相まって、「神の子」と称される訳だと納得する。
ヴァイスは北の出身だ。遠く離れた地で己の身を削って戦うことは、神に与えられた使命なのだろうか。ヴァイスの神々しい姿に、ふっと蒼雪は考える。

「蒼雪!」

隣で膝を突いていたモモが、黒髪を揺らして駆け寄ってきた。この地方特有の髪色。赤い瞳が、この世ならざる者のように輝いている。力一杯体当たりされ、蒼雪は一、二歩よろめきながらも、モモの体を受け止めた。

「モモ、大きくなったね」

僅か数ヶ月のうちに、モモの体は大きく成長している。抱き上げた腕へ掛かる重さに、蒼雪が驚いていると、

「蒼雪」

ヴァイスが近寄ってきて、穏やかに声を掛けてきた。

「良かった。ジェネラルの言ったとおりですね」
「え?」
「ね、ほら、やっぱり! ジェネラルは、『出来ない約束はしない』って言ったもの!」
「ええ、本当に」

どういうことかと戸惑う蒼雪の腕に、ヴァイスは手を置いて、

「ミドリやノアールにも会っていってください。皆、半信半疑だから」
「え? あっ」
「ジェネラルは嘘つかないもの! 私、ミドリに言ってくる!!」

モモはするりと蒼雪の腕を抜け出し、礼拝堂を駆け出ていく。ぽかんとする蒼雪の耳に、ヴァイスのくすくす笑う声が聞こえた。

「何のことだか、分からないのでしょう?」

顔を向けると、ヴァイスは良く分かってるというように頷いて、

「向こうで説明します。彼は、説明が下手ですから」
「えっ・・・・・・誰が?」

ヴァイスは一瞬きょとんしてから、ふわりと微笑んだ。

「ジェネラルですよ。私も、人のことは言えませんね」