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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】前編

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一人部屋に残された蒼雪は、ぼんやりとベッドに横たわる。
サイレンスが、何故ヴァイスに会いに行かないのか、分かった気がした。期待してしまうからだ。彼女の、癒しの力を。
もし、モモが体調を崩している時に、サイレンスがヴァイスへ会いに行くと知ったら、自分がモモを見舞ってくれないかと頼み込むことは、容易に想像できる。禁止されていることを知っていたとしても、だ。
サイレンスも辛いだろう。聞き入れればヴァイスへ余計な負担を掛けることになり、断れば仲間との関係が崩れる。苦渋の末の選択が、彼に会わないことなのだ。壊れていくヴァイスを眺めることしか出来ない彼女の苦悩は、どれほどのものか。

惨いことを言ってしまった・・・・・・。

今朝のことを思い返し、蒼雪は枕に顔を押しつけた。戦闘向きではないから、ヴァイスへの負担は軽いのではないかと、単純に考えていた自分を殴りつけたい。

俺は、知らないことばかりだ。

モモの背が伸びていたことも、ミドリと姉妹のように仲良くしていることも。
ノアールがサイレンを鳴らしていたことも。ヴァイスの心が壊れていたことも。

「籠の鳥・・・・・・か」

いつか、異形との戦いにも終わりがくるのだろうか。異形が何処から来て、何を目的としているのか、全く分からないのに。
蒼雪は起き上がると、窓辺に寄って礼拝堂の方向へ目を凝らした。夜の帳が辺りを覆い、全てが闇に沈んでいる。異形が出現すれば、ノアールが合図のサイレンを鳴らし、ヴァイスが礼拝堂で祈りを捧げるのだ。深夜であろうと、早朝であろうと。

せめて、今夜はあの子達を休ませてやってくれ・・・・・・!

蒼雪は唇を噛み、カーテンを引いた。