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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】前編

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急いで駆けつけると、そこにはシアンとシザーズ、サイレンスしかいない。紅葉はどうしたのかと、戸惑いながら歩を緩める蒼雪に、シザーズが肩を竦め、

「紅葉は、医療室に呼び出し」
「え? 何かあったのか?」

最悪の事態を想像する蒼雪だが、シアンから、グレイから呼び出しがあったことを教えられた。

「ミドリの体調が安定してるから、復帰の調整をしたいんだと思う。心配することはないよ」

その言葉にほっとしていると、背後から足音が聞こえた。振り向くと、ジェネラルが紙片を振りながら近寄ってくる。

「はい、今回の出現場所は此処ね。もう他支部の奴が粗方倒してるから、サイレンスとシザーズは後処理を手伝って。蒼雪は僕と残党狩り」
「あ、ジェネラ」
「ごめん、あたしが蒼雪と行っていい?」

シアンが声を掛けようとした横から、シザーズが口を挟んできた。ジェネラルは、意外そうに目を見張り、

「いいけど、どういう心境の変化?」
「別に。大した危険もないから、たまには前に出てみたいかなって」

ジェネラルから紙片を取り上げると、シザーズは蒼雪を振り向く。

「ほら、行くよ。あたしじゃ不満?」
「えっ? あ、いや」
「じゃ、サイレンスおいで。僕の側にいれば大丈夫だから」
「は、はい」
「あっ、き、気をつけてね!」

あわあわしているシアンを置いて、サイレンスは慌ててジェネラルの後を追う。蒼雪も、戸惑いながらシザーズについていった。




馬に乗り、シザーズとともに紙片に記された場所へ向かう。小高い丘を越える途中で、緑髪の少女がこちらに手を振っていた。

「パンジー、あんたが出たんだ」
「やっほー、シザーズ。お互いしぶといね」

馬を降りたシザーズが、少女とハイタッチを交わす。蒼雪も馬を降り、被害状況を聞いた。

「普段なら、応援を頼むほどじゃないんだけどね。あっちもこっちも出ちゃったからさ。手分けするには、人員が足りないってわけ」

やれやれとパンジーは首を振る。

「ちょーっと怪我人が多いかな。出来る範囲で手当したんだけど、丁度礼拝中に襲われちゃって、何人か逃げ遅れたし、何匹か取り逃したってわけ。あいつら、西に逃げてった」

パンジーの言葉に、蒼雪は息を呑んだ。重傷者が多ければ、それだけサイレンスの能力が必要になる。いつもなら、躊躇い無く治療に当たれと言うところだが、ヴァイスへの負担を考えると。
シザーズはお構いなしに、パンジーにそのままサイレンス達を手伝ってくれと告げた。

「取りこぼしは、こっちで引き受けるからさ」
「サンキュー。ノアールは元気?」
「あいつも大概しぶといわ」
「ハタチ越えも夢じゃないねー。じゃ、気をつけて」

パンジーは挨拶代わりにキスを投げると、丘を駆け下りていく。

「ほら、ぼーっとしてんな。行くよ」
「あ、ああ」

シザーズにどやされ、蒼雪は馬に跨った。ヴァイスが断食中であることを、サイレンスは知っているだろうか。

・・・・・・考えるな。今は、目の前のことに集中しろ。

自分が気を逸らしていては、モモに余計な負担を掛けることになってしまうかもしれない。取り逃がした異形を倒すまで、油断は禁物だ。蒼雪は気を引き締め、馬を駆った。