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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】前編

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「蒼雪、右!」
「任せろ!」

蒼雪の放った氷の刃が、正確に異形を捉える。突き刺さった箇所から凍り付き、異形は動きを止めた。
シザーズが近づいてきて、おどけた仕草でお辞儀をする。

「お好みの厚さにスライスさせて頂きます」
「あははは、宜しく頼むよ。このまま持ち帰るのは、骨だから」

シザーズによって薄切りにされた異形を、手分けして馬にくくりつけた。蒼雪は周囲を見回して、まばらな木々と岩陰に、動くもののないことを確認する。

「残りは、追いつけないところまで逃げられたようだな」
「二人で三体かー。まあ、ノルマは達成したか」

シザーズは蒼雪に背を向け、伸びをした。蒼雪が馬に跨ろうとした時、

「今朝さあ、何で礼拝堂行ったの? ミドリのこと?」

驚いた蒼雪は動きを止め、シザーズの後ろ姿を凝視した。

「ミドリが倒れたの、自分のせいだって思ってる?」
「あっ・・・・・・いや、あれは、あの」
「いいじゃん。ミドリ、喜んでたって。今朝も、出された食事、全部平らげてさ。早く元気になって、また蒼雪と遊ぶんだって」
「・・・・・・何で、君が、それを」
「んー?」

振り向いたシザーズは、堪えきれないように吹き出す。

「何だ、本当に気づいてなかったんだ。昨日も今日も、あたしはノアールの部屋にいたんだよ」
「え?」

意表を突く言葉に、蒼雪はまじまじとシザーズを見た。相手はクスクス笑いながら、手近な岩に寄りかかる。

「ジェネラルには、堂々と会えばいいって言われたけどさ。サイレンスや紅葉が来ないのに、あたしだけ顔出すのは、気まずいじゃん」

そう言われると、自分が酷く考えなしな行動を取っていたようで、蒼雪は目を伏せる。シザーズは構わず、

「というより、本当は、ヴァイスに会うのが怖いんだ。あの子の・・・・・・見ただろ?」

聞かれて、蒼雪は頷いた。真紅に輝く、ガラス玉のような瞳を思い出す。

「あたしさ・・・・・・昔、ヴァイスに頼んだことがあるんだ。ノアールを助けてくれって」
「えっ・・・・・・でも、それは」
「禁止されてるのは知ってた。でも、熱が下がらなくて・・・・・・うなされてる姿を見たら・・・・・・」

蒼雪にも、シザーズの気持ちは痛いほど分かった。もし、モモが同じことになったら。
さわさわと、木々が葉を揺らす。まばらな岩の間を、冷たい風が渡っていった。

「ヴァイスは、それは出来ないって謝って、代わりに、あたしの手を取ってさ、こうやって・・・・・・」

シザーズは、両手を自分の首にかける。不吉な動作に、蒼雪は身じろぎも出来ずに、シザーズを見つめた。

「自分が痛みを引き受けるからって。気が済むまで罰してくれって。冷たい、ガラス玉みたいな目でさ・・・・・・それ以来、あたしは、ヴァイスに会うのが怖い。また、あの子に、同じことをさせるんじゃないかって」

蒼雪は俯き、唇を噛んだ。シザーズのせいではないと慰めたところで、彼女の心が晴れないことくらい分かっている。それでも、

「・・・・・・ヴァイスが壊れたのは、シザーズのせいではないよ」
「そうだね。でも、時々考えるんだ。あたしがいなかったら、ノアールは「神の子」なんて呼ばれることもなく、家族の元にいられたのかなって。閉じこめられて、幾つまで生きられるんだろうなんて、怯えることもなくて」

ぽつりと、シザーズは付け加えた。

「あたしは、あの子にとって、疫病神だなって」

考えたこともなかった現実を突きつけられて、蒼雪はめまいを覚える。自分がいなければ、モモは今頃・・・・・・

「あんたいなかったら、モモは死んでたんじゃない?」

ハッと顔を上げると、シザーズはいつもの様にニヤリと笑った。