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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】前編

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「ジェネラル、いるんだろう? 蒼雪だ。話がある」

扉を数回ノックし声を掛けるが、中から応答はない。寝ているのか、聞こえない振りをしているのか、また行方をくらましているのか。
蒼雪は、扉に耳を当てて中の様子を伺うが、何の気配も感じられなかった。躊躇った後、そっとドアノブに手を掛ける。ゆっくり回すと、鍵を掛けていないらしく、微かに軋みながら、扉が薄く開いた。

「ジェネラ・・・・・・!?」

中に入った瞬間、後ろから羽交い締めにされ、乱暴に扉が閉められる。蒼雪がふりほどこうともがいた瞬間、

「何だ、君か・・・・・・」

掠れた声と共に、背中にずしりと重みが掛かった。

「ジェネラル!? 大丈夫か!?」
「うるさい・・・・・・静かにして・・・・・・」

ずるずると崩れ落ちていくジェネラルの体を、蒼雪は慌てて抱き止める。相手の荒い呼吸と湿った肌に、尋常ではない事態を悟った。

「サイレンスを」
「駄目」

何処にそんな力が残っていたのか、ジェネラルに押し留められて、蒼雪は床に尻餅をついた。鮮やかな赤の瞳が、蒼雪の目をのぞき込んでくる。

「ヴァイスが断食中なのは、知ってるよね? これ以上、あの子に負担を掛けるのは危険だ」
「それは」
「駄目だよ。君は誰の為に戦ってる? 顔も知らない誰かの為? 違うだろ?」

ジェネラルの言葉に、モモの笑顔が脳裏に浮かんだ。
耳元で、ジェネラルの囁く声がする。

「・・・・・・サイレンスも同じだよ。みんな、おんなじだ。シザーズも、紅葉も、君も、僕も」

そのまま、ジェネラルは蒼雪の胸に倒れ込んできた。ぐにゃりとした体を抱え、蒼雪は唇を噛む。

「・・・・・・だったら、こんな無茶するな」

返ってきたのは、荒い呼吸だけ。蒼雪は四苦八苦しながら、ジェネラルの体をベッドに横たえた。

「お前がいなくなったら、モモが悲しむんだ」

衣服を緩め、額に張り付いた前髪を指でかきあげる。相手は目を閉じたまま、何も答えない。

「お前がいなくなったら、ヴァイスは誰を頼ればいい?」

耳を澄ませても、聞こえてくるのは荒い呼吸音だけ。代わりに蘇ったのは、シザーズの言葉だった。

『あんたのこと頼りにしてんだよ。自分がいなくなった後、あんたに皆を引っ張って欲しいって思ってんだ。』

「・・・・・・俺には、荷が重すぎる」

知らないことばかりなのに。「神の子」達のことも。他の人形達のことも。・・・・・・お前のことも。

「俺を頼りにしてると言うなら・・・・・・一人で抱え込むな」