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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】前編

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天窓から、柔らかな陽光が降り注ぐ。
祭壇の前に膝をつき、頭を垂れる青年は、黒い法衣に身を包んでいた。

「ヴァイス!」

静寂を破る声と足音に、青年は顔を上げる。淡い栗色の髪には不釣り合いな、鮮やかな真紅の瞳。

「ノアール。何かありましたか?」

黒髪に真紅の目を持つ少年は、ぶっきらぼうに頷いた。

「あった。新入りがくるってさ。あんたに出迎えてもらいたいって、シアンから」
「・・・・・・そう」

眉をひそめて立ち上がったヴァイスに、ノアールが固い声で続ける。

「間に合わなかったんだと。駆けつけたときには、全員」
「ノアール」

ヴァイスは、ノアールの肩にそっと手を置き、

「部屋の準備をしておいてください。新しい子は、男の子?」
「女の子。きっかり十歳だとさ。誕生日パーティーの為に、親戚中が集まってたらしい。それで」

ヴァイスが指を一本立て、ノアールの唇に触れた。何かを諦めたようにも見える、穏やかな赤い瞳。

「ミドリと気が合うといいのだけれど。お互い、年の近い友達が必要でしょう」
「人形以外でな」

ノアールの言葉に、ヴァイスは柔らかな笑みを浮かべた。

「そう、人形以外に」



十五年前、突如として現れた化け物は、この国を壊滅寸前まで追いやった。「異形」と呼ばれた化け物達は、何処から現れて何を目的としているのか分からないまま、村や町を襲い、住民を皆殺しにしていく。あらゆる対抗策が試されたが、異形達に傷一つ負わせることが出来なかった。

だが、暗黒の一年が過ぎた頃、唐突に救世主が現れる。
瞳が真紅に変色する子供が現れ、彼らの「友人」達が異形を様々な形で封印していった。
子供達は後に「神の子」と呼ばれ、異形を封じた者達は「神の子」が作り出した「人形」、真紅の瞳は「スカーレットサイン」ー神に選ばれた証ーと言われた。

一度は反撃に転じた人類だが、異形は際限なく襲いかかり、戦いの中で疲弊した神の子は、次々と命を落とす。
様々な試みと多くの犠牲を経て、異形に対抗し、神の子を保護する為の組織が作られた。

「スカーレットサイン」が出るのは十歳の少年少女のみ。いつ何処で出現するかは、全く分からない。けれど、「神の子」と「人形」だけが、この国の希望だった。