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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】前編

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冷たい雨が、地面を激しく打ちつけていく。異形との戦いを終えた人形達が、我先にと建物に駆け込んだ。

「お帰り。皆、無事で良かった」

真っ先に出迎えたのは、支部長であるシアン。両手に抱えたタオルを、一人一人に手渡していく。

「シアンさん、モモは?」

タオルを受け取りながら蒼雪が聞くと、シアンは窓へ視線を向けた。

「ヴァイスと礼拝堂にいるよ。会っていく?」
「いえ、もう遅いですし。彼と一緒なら、安心です」

ヴァイスの人形であるサイレンスが、窓に寄って礼拝堂の明かりを見つめる。雨と宵闇の向こうに、ぼんやりとした光が滲んでいた。

「シアンさん、ミドリは? 一緒じゃないの?」

横から紅葉が不安げに言葉を挟む。ミドリは一昨日まで風邪で伏せており、紅葉はやっと出動許可が降りたところだ。

「心配しないで、今日は早めに休ませたんだ。ノアールが、一生懸命薬湯を飲ませてたよ」
「えー、あいつが作ったの? ただでさえクソ不味いのに」

ノアールの人形、シザーズが混ぜっ返す。シアンはくすくす笑いながら、

「本人もしかめっ面をしてたよ。でも、ミドリはいい子で飲んでた」

いつものように盛り上がる人形達の後ろから、すいっと人影が横切った。

「はい、邪魔ー、邪魔ー。君達、いちいち支部長に聞かないで、自分の目で見てくれば?」
「ジェネラル」

蒼雪の苛立たしげな声に、人影が一瞬振り向く。鮮やかな真紅の瞳を持つ人形は、一言「おやすみ」と言い残して、廊下へと姿を消した。

「さ、さあ、みんなも休んで。今日は遅くまでご苦労様でした。夜中の出動がないことを祈ってるよ」

ぎこちない空気の中、シアンが不自然なほど明るい声で促す。人形達は無言で、用意された部屋へ戻っていった。



蒼雪は自分の部屋に戻ると、窓の外を伺う。礼拝堂の方向は既に暗闇に包まれ、モモは今頃ベッドの中だろう。

『自分の目で見てくれば?』

・・・・・・簡単に言ってくれる。

蒼雪は唇を噛んで、カーテンを引いた。
モモが「神の子」として組織に引き取られてから、半年になる。当初は日に何度も顔を見に行ったものだが、異形との戦いに明け暮れるうちに、他の人形同様、シアンから話を聞くだけになっていた。
顔を合わせない方がいい、お互い辛いから。異形との戦い方を教えられる中で、他の人形に言われた。

モモは無事だろうか。

人形には特殊な力があり、その力で異形を封印することが出来る。けれど、人形が力を使うことは、神の子の命を削る行為だ。神の子を案じ、躊躇いが生まれたら。人形が傷を負えば、神の子も同じ痛みを受ける。だから、人形達はあえて距離を置くのだ。異形を封じることが、自分の役割だから。
それを。

「くそっ・・・・・・だから、あいつは嫌いなんだ」

苛立ちながら言葉を吐き出すと、濡れた服を脱ぎ捨てた。



着替えた後、少しでも消耗を押さえる為、ベッドに横たる。異形は、夜中だろうと早朝だろうと配慮しない。奴らには時間の観念がないのだろうと、蒼雪は物思いに耽った。

モモは、もう休んでいるだろうか。

最年長のヴァイスが、年少の子達をまとめているとは聞いている。最初の「神の子」であり、唯一二十代まで生き延びた青年だ。次のノアールが十七歳、ミドリは十二歳になったばかり。

・・・・・・ノアールは、二十歳まで生きられるだろうか。

不吉な考えが浮かび、直ぐに押しやった。シザーズは、慎重すぎるほど慎重に力を使っている。そうそう倒れることはないだろう。
けれど、「神の子」の殆どは、十五歳以下だ。ヴァイスとノアールの間の年齢は、一人もいない。皆、激しい消耗に耐えきれず、命を落としていった。ヴァイスが最年長となったのは、サイレンスの能力が治癒だから。戦闘には参加せず、傷ついた者達の手当を行っている。
それを、羨ましいと思うこともあった。

・・・・・・もっと、強くならねば。

モモを守る為に。幼い体には、わずかな傷さえ致命傷になりかねない。支部長のシアンの尽力で、神の子達への負担を可能な限り減らす方向で改善が進んでいるとはいえ、未だ命を落とす者は多い。
蒼雪は溜め息をついて、壁際に寝返りを打った。
その時、扉の向こうに微かな足音が響く。

うん・・・・・・?

上半身を起こして耳を澄ましたが、それ以上何の物音もしなかった。

気のせい・・・・・・か。

詰めていた息を吐き出すと、再度横になる。
今夜くらいは、異形達も大人しくしてくれと祈りながら。