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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】後編

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蒼雪が医務室の様子を伺っていると、背後から声を掛けられる。

「残念、入れ違いだ。モモなら、宿舎に戻ったよ」
「グレイさん」

蒼雪は振り向き、お世話になりましたと頭を下げた。グレイは笑って手を振り、

「仕事だからね。もっとも、俺は暇な方が嬉しいけど」

蒼雪は躊躇ってから、紅葉のことなんですがと切り出す。グレイは表情を消して、蒼雪に中へ入るよう促した。机の角に腰をかけ、ぼんやりと視線を宙に向けるグレイ。蒼雪は手近な椅子に座ると、辛抱強く言葉を待った。

「・・・・・・支部長から? それとも将軍?」
「ジェネラルが、その、紅葉をミドリに会わせたのは、貴方の判断だと」
「怒られたよ。紅葉が欠けた分は自分が補うから、余計なことはするなって。俺は、ミドリに酷いことをしてしまったな」

グレイは手元に視線を落とし、ぼそぼそと続ける。

「これは、言い訳かもしれない、けど。ミドリが、ヴァイスのようになるのが怖かったんだ。自分は役立たずだと泣く姿を見るのが、辛かった。あの子が壊れるのを、見たくなかったんだ。これ以上、誰かが壊れるのを・・・・・・」

グレイは顔を上げると、無理矢理笑顔を作って、

「でも、ミドリは大事に扱わないといけないんだ。なんたって、いいとこのお嬢様だし」
「そうなのですか?」

意外な展開に蒼雪が目を丸くすると、グレイのほうも驚いたように青い目を見開いた。

「あれ、知らなかった? この支部を作ったのは、ミドリの父親だよ」
「ええ!?」
「母親が、ミドリを引き渡すのを嫌がってね。ノアールのこともあるし・・・・・・あ、ミドリとノアールの関係は知ってる?」
「あ、はい。母親同士が従姉妹だとか」
「そうそう。四年、いや五年か。子供と引き離されて、泣き暮らしてる姿を知っているから、絶対に嫌だと言って。でも、スカーレットサインの出た子は、確実に保護しなければならない」

せめて家族の近くにいられるようにと、ミドリの父親が出資して、新たな支部を作ったのだと続ける。