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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】後編

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食堂のテーブルに積まれたクッキーの山を、モモが両手で崩していく。食欲があるなら一安心だと、蒼雪が見守っていたら、向かいからヴァイスの手が伸びてきた。

「一つ頂きますね」
「あのね! こっちも美味しいから! 食べて!」

モモが皿を回し、ヴァイスはにこにこ笑いながらクッキーを摘む。蒼雪が驚いていると、ヴァイスは微笑んで、支部長命令なのだと明かした。

「随分怒られました。あんなに怒られたのは初めてです。それも、私の体を心配しているなんて」

ヴァイスはお茶を啜り、ふと目を伏せる。

「あの方が支部長になったことは、とても幸運なことだと思います。あの方のおかげで、随分変わりました。昔は、滅多なことでは休ませてもらえず、手紙の遣り取りも禁止されていました。それは感謝しています。でも・・・・・・」
「でも?」

言い淀むヴァイスを促すと、躊躇いながら口を開いた。

「もっと早く、そうなってくれたら良かったと。私が、一人になる前に」

赤い瞳が、濡れたように光る。ヴァイスの他にもいた「最初の神の子」のことを言っているのだと、蒼雪は気がついた。

「残っているのは、私だけ・・・・・・。私は、運が良かったのでしょうか」
「ヴァイス」
「私より幼い子達も、帰ってきませんでした。私だけ、取り残されてしまった」

ヴァイスとノアールの年齢差は七歳。その間に保護された神の子達は、皆、帰らぬ人となっている。その歳月を、どれだけの重さで、ヴァイスは背負っているのだろう。

「君がいてくれて良かったと、感謝しているよ」

蒼雪の言葉に、ヴァイスはぎこちなく首を傾げ、思い出したように言葉をつなげた。

「そういえば・・・・・・私が会った子の中に、両親のどちらかが職員だと、聞いたことがあります。別の支部にいるのか、会いたい会いたいと繰り返していました。親としては、どんな気持ちなのでしょうね。その・・・・・・その子、も・・・・・・」

ヴァイスは口を閉ざし、「お湯を足しましょうね」と立ち上がる。蒼雪は、今聞いた話を反芻し、シアンの言葉を思い出していた。

『僕らは皆、共犯なのかもしれない・・・・・・』

「神の子」に頼らなければ、異形に対抗する術はない。けれど、我が子を差し出せと言われたら・・・・・・。

いつか、この戦いを終わらせられるのだろうか。

蒼雪は、神妙な顔でクッキーを頬張るモモに、視線を落とした。