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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】後編

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・・・・・・ヴァイスは、朝の礼拝中だろうか。

朝露が、足下を濡らす。陽光が、僅かに残った宵の名残を追いやるのも、時間の問題だろう。他の人形達と顔を合わせたくなくて、蒼雪は彼らが動き出す前に、部屋を出ていた。
少し冷たい風が、頬を撫でていく。いつもなら心地よく感じるところだが、蒼雪は視線を落とし、溜め息をついた。考えるのは、ジェネラルのことばかり。

・・・・・・一体、何処に消えたんだ。

鬱々としたまま歩いていたら、ふと足音が聞こえる。顔を上げると、すぐ隣に保管庫の壁があった。

ジェネラル?

そっと音の方向へ進むと、見覚えのある背中が歩き去っていく。蒼雪は声を上げそうになるのを堪えながら、忍び足で後を追った。

このまま、敷地の外へ出る気か?

そろそろ境界が近い。此処だと、宿舎からも死角になっているだろう。頭の片隅でそう考えていたら、不意に背後から、誰かの気配がした。

「なっ!?」

蒼雪は振り向くも間に合わず、足を払われ尻餅をつく。そのまま肩を押さえつけられ、濡れた地面に倒れ込んだ。

「いいかい、一度しか言わないよ?」

ジェネラルの声がする。あんなにも焦がれた相手なのに、蒼雪は今、彼の手を振り解こうと必死だった。

「ジェネラル! 一体何の」

蒼雪の言葉を遮り、ジェネラルは何処かの住所と誰かの名前を告げる。訳が分からずもがく蒼雪の目前に、銃口が突きつけられた。異形すら消滅させる、「将軍」の武器。
息を呑み動きを止めた蒼雪に、ジェネラルは、場違いなほど穏やかな声で続ける。

「裏切り者は、僕だけでいい」

直後、銃声が響き渡った。鳥達の悲鳴にも似た鳴き声と、激しい羽ばたき。呆然とする蒼雪の前で、ジェネラルは腕から血を流し、微笑む。

「バイバイ、蒼雪」

素早く身を翻し、朝霧の中へと消えていった。縛られたように動けない、蒼雪を残して。