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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】後編

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礼拝堂の扉を開けると、ヴァイス一人の後ろ姿が目に入る。蒼雪が声を掛ける前に、青年は振り向いた。

「蒼雪・・・・・・!」

涙で頬を濡らしながら、ヴァイスは両手を前に差し出して歩み寄ってくる。だが、途中で力が抜けたようにへたり込んでしまった。

「ヴァイス!」

蒼雪は慌てて駆け寄り、法衣に包まれた体を抱き寄せる。それは思いの外細くて頼りなく、ふとした弾みで折れてしまうのではないかと不安になるほどだった。ヴァイスは蒼雪の胸に顔を埋めて啜り泣く。

『君は誰の為に戦ってる?』

不意に、ジェネラルの声が聞こえた気がした。蒼雪は、ハッとしてヴァイスに視線を落とす。淡い栗色の髪、布越しにすら分かるほど細い肩。まるで十歳の子供に戻ったかのように、涙を流して震えている・・・・・・。

呆けている場合か!

蒼雪は唇を噛んで、ヴァイスの背に腕を回した。

「大丈夫だよ、ヴァイス。何も心配しなくていい。俺に任せて」
「噂を・・・・・・聞いて・・・・・・ジェネラルが・・・・・・」
「心配ない。彼への疑いは、俺が必ず晴らすから」

こくこくと頷くヴァイスの身を起こしてやり、塗れた頬を拭う。真紅の瞳が、縋るように見つめてきた。蒼雪は安心させるように頷き、微笑む。

「サイレンスが目を覚ましたそうだ。まだ動けないけれど、落ち着いたら、彼女に会いに行こう」
「サイレンス・・・・・・」

ヴァイスは、ぼんやりと視線を宙に向け、

「彼女は、私を許してくれるでしょうか・・・・・・」

と呟いた。

「何故? サイレンスは、何時も君を」
「彼女が戦えないのは、私が臆病だからです」

ヴァイスはそう言って俯き、涙を流す。

「私のせいで・・・・・・私が弱いから・・・・・・彼女を苦しめる・・・・・・」

掠れた声で呟くヴァイスの頭を、蒼雪は自身の胸に抱き寄せた。淡い栗色の髪に口づけし、労るように撫でる。

「君とサイレンスに感謝している。二人がいなかったら、もっと多くの犠牲が出ていただろう。君達が必要なんだ」

途切れ途切れに嗚咽を漏らすヴァイス。蒼雪は、何故気づいてやれなかったのかと、己を殴りつけたい気持ちだった。神の子も同じように戦い、傷つき、苦しんでいる。そんな簡単なことすら見えなかった自分が、悔しくて情けない。

許してもらわなければならないのは、俺の方だ・・・・・・。

この子達の為にも、わずかな失敗すら許されないと、蒼雪は自分に言い聞かせた。