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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】後編

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「あ、それはまだ描きかけですの。お忙しいみたいで、なかなか顔を見せに来てくれないのですもの」

マルーンが鈴のように笑う。蒼雪は「はあ」と返しながら、その絵に見入っていた。
ジェネラルが、こちらを見つめ返している。穏やかな、柔らかい笑顔で。

「グレイ先生のお知り合いだとかで。薄い青色の髪に真っ赤な目をされてましたけど、「神の子」ではないのですって。不思議な方ですわ」

予想外の名前を出され、蒼雪は弾かれたように顔を上げる。濃い緑色の瞳が、悪戯っぽく細められた。

「あっ、グレイ、先生を、ご存じ、ですか」
「ええ。私の担当の先生とお友達なのです。グレイ先生の論文に、私と似た症例の方がいらっしゃるとかで、会いに来てくださいましたわ。グレイ先生をご存じ?」
「ああ、はい、あの、何度か」
「まだお若いお医者様ですわね。若い先生を嫌がる方もおりますけど、年輩の先生は手が震えたりして、怖いこともありますわ」
「そ、そう、です、ね」

内心の動揺を取り繕う余裕もなく、蒼雪はそわそわしながら立ち上がる。

「あの、私は、これで」
「まあ、長々とごめんなさい。お忙しいでしょうに」
「い、いえ。あの、お体にお気をつけて」
「ありがとう。夫と息子に宜しく伝えてください。心はいつも共にあると」

マルーンが差し出してきた手を、蒼雪はそっと握った。自分がこれからすることを知ったら、彼女は責めるだろうか?

「はい・・・・・・お伝えします」

蒼雪は頭を下げ、マルーンの元を辞した。