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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】後編

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蒼雪は扉をノックし、返事を待たずに戸を開ける。机の向こう側から、シアンが驚いた顔でこちらを見つめていた。

「やあ、蒼雪。何処に行ってたんだい? 姿が見えなくて心配したよ」
「申し訳ありません」

もう夜中に近い時間だというのに、あちこちでまだ明かりが灯されている。シアンは両側に積まれた書類の上に、手元の紙束を乗せ、悪戯っぽく笑った。

「敷地の外に出たね? 馬が一頭いなくなったと、騒ぎになっていたよ。命令違反の罰として、コーヒーのお代わりをくれないか?」

蒼雪は大人しく頭を下げ、脇に置かれたワゴンから、ポットを手に取る。差し出されたカップに褐色の液体を注ぎながら、

「保管庫から封印物を持ち出していたのは、貴方ですね」

と言った。
シアンは驚いた顔で、蒼雪を見上げてくる。カップのコーヒーが零れ、袖口に茶色のシミを作った。

「え? 蒼雪、何を」
「異形の封印を解き、バーミリオン支部を襲わせたのは、貴方ですね。あれは、実験ですか?」
「ちょっと待ってくれ。一体何の」
「奥様にお会いしました」

その一言で、部屋の空気が変わる。シアンはのろのろとカップを机に置き、椅子の背にもたれた。

「奥様は、貴方が会いに来るのを待っています」
「妻が待っているのは、息子だけだよ」

熱を失ったガラス玉の瞳が虚ろに向けられる。ヴァイスと同じように彼も壊れていたのだと、蒼雪は苦い思いで見つめ返した。

「何時から疑っていた?」
「さあ、何時からでしょうか」
「ジェネラルが僕を探っているのは分かっていたけれど、君は盲点だったな。彼が君に執着している時点で、気づくべきだった」

シアンはくつくつと笑いを漏らし、「証拠もなく告発するほど、愚かでもないだろう」と言う。

「で、何を聞きたい? 僕はどうしたらいいかな? 懺悔したらいいのかな? 跪いて許しを請えば、見逃してくれるかい?」
「理由をお聞かせください」

蒼雪の言葉に、シアンは顎を撫で、

「分かっていて、あえて聞くのかい?」
「貴方の口から、お聞かせください」

シアンは肩を竦め、お望み通りにと返した。