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【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】後編

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「マゼンタにスカーレットサインが出たのは、誕生日の朝だった。人形はスターマインという名の少年。息子が欲しがった、金色の髪をしていたよ。あの子の髪は茶色だったからね。妻は息子と離れるのを嫌がったが、僕が説得した。そのことを後悔しない日はないよ・・・・・・。あの子が、たった半年で命を落としたと知った時からね。しかも、知らされたのは、亡くなって二年も経ってからだ。その間、僕は愚かにも信じ切っていたよ。マゼンタは元気で、この国を守る戦いに貢献しているとね」

暗い目で、滑らかに言葉を紡ぐシアン。その顔は、蒼雪の知る「シアン支部長」ではなかった。息子を失い、妻を壊され、復讐を誓った男の顔。

「・・・・・・亡骸を抱くことさえ許されなかった。息子の埋葬場所すら、当初は教えてもらえなかったよ。しつこく食らいついたら、最後は向こうが根負けしたがね。妻は、息子の墓の前で僕をなじった。今でも、彼女は僕を許していない」

否定したところで、シアンには届かないだろう。彼の時間も、止まったままなのだ。
シアンは顔を上げ、唇の端を持ち上げる。まるで牙を剥くように。

「十年。十年間、大切に守り育てた息子だ。僕と妻にとって、命よりも大切な宝物だよ。それを・・・・・・その十年を、あいつらは踏みにじった。僕の息子を、マゼンタを、役立たずだと罵って。バーミリオンの支部長が、僕に何て言ったと思う? 『次はもっと丈夫な子を作れ』、だ。一度サインが出た家系は、二人目が現れるかもしれないからと。僕の子供は、異形と戦う為の道具ではない!」

声を荒げた後、シアンはふっと息を吐いて、両腕を机の上に投げ出した。
蒼雪は、壊滅したバーミリオン支部の光景を思い出し、暗澹たる思いに沈む。

「バーミリオン支部を襲ったのは、復讐の為ですか?」
「それもあるし、実験の成果を見たかったのもある。ああ、後、ジェネラルを始末したかったんだよ」

あっさりした口調で、「彼は邪魔だから」と付け加えた。

「あれだけ巨大な異形をぶつければ、さすがにただでは済まないかと思ったんだけど。なかなかしぶとかったね。でも、サイレンスが使い物にならなくなったおかげで、各地の被害が拡大したから、試した甲斐はあったよ」
「・・・・・・無関係な人が、大勢傷つきました。罪のない、神の子も」

蒼雪の言葉を、シアンは鼻で笑う。

「無関係なものか。皆、共犯だ。自分達はぬくぬくと暮らしながら、早く助けろと喚くだけ。「神の子」がどれだけ死のうが、彼らには関係ない。ただ、自分達の平穏が守られれば、それでいいんだ」

だが、シアンはふと視線を逸らし、呟くように続けた。

「まあ・・・・・・巻き込んでしまった神の子達は、気の毒に思っているよ。特にヴァイスは、マゼンタが兄のように慕っていたから・・・・・・」

一瞬感情を取り戻したかのように見えた瞳は、すぐに凍り付く。シアンはにたりと笑って、立ち上がった。

「だから、やり方を変えよう。僕は罪を告白し、神の子への非人道的な扱いを暴き立てる。親達は黙っていないだろうね。子供を返せと迫るかもしれない。世間は、無情にも引き裂かれた親子に同情するだろうな。そう、裁きは、「無関係な人」達が下してくれる。何も考えず、何も知ろうとせず、ただ喚き立てるしか脳のない奴らがね。守るべき相手に攻撃される気分は、どんなものかな。互いの尻尾を食い合えばいいんだ。この国ごと、地獄に堕ちればいい」

にやにや笑いながら、部屋を出ていくシアン。その後ろ姿を見送りながら、蒼雪はジェネラルの言葉を思い出していた。

『人間は、矛盾した生き物だね』

誰よりも、神の子のことを考えていた人が・・・・・・。

蒼雪の胸に満ちるのは、ただ空しさだけ。