【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】後編
蒼雪が扉を開けると、危うく紅葉とぶつかりそうになる。
「きゃあっ」
「あっ、すまない」
慌てて身をかわしてから、蒼雪はミドリのことを謝っていなかったなと思い返した。
「紅葉、ミドリのこと」
「あっ、ありがとう、ね。その、ミドリと、遊んでくれて」
ぎこちなく微笑まれ、蒼雪は戸惑いながら、
「いや、あの、俺の方こそ、無理をさせてしまって」
「ミドリ、喜んでた。あの子は元々体が弱くて、思い切り遊ぶことって、今までなかったから」
紅葉の言葉に、蒼雪はどう返していいか分からず、口をつぐんだ。紅葉は言葉を選ぶように、二・三度躊躇いながら、
「その・・・・・・蒼雪が良ければ、また遊んであげて。私では、どうしても」
「ああ、えっと、今度は、気をつける。その、あの時は、モモと同じように扱ってしまったから」
「違う、違う! そうじゃないの! そうじゃなくて・・・・・・」
話の流れが読めなくて、蒼雪は戸惑いながら、紅葉の言葉を待つ。紅葉はもどかしげに髪をかき揚げた。
「ごめんなさい、あの・・・・・・上手く言えなくて。ただ、あの、私、は、ミドリのことが、大事で、それで、あの・・・・・・分かるでしょ?」
さっぱり分からないけれど、蒼雪は話の腰を折らないよう、頷きながらもぞもぞと同意を呟く。紅葉は俯き、小声で続けた。
「医務室でミドリに会ったわ。あの子、私に謝ったの。私が動けないのは、自分のせいだって。だから、無理言って、ジェネラルと一緒に行かせてもらった。ミドリのせいじゃない、私はちゃんと出動できるんだって、見せたくて。・・・・・・怖かったの。自分が無茶したせいで、ミドリが倒れたらって。でも、あの子はそんなこと望んでなかった。ミドリのこと、一番分かってるのは自分だって思ってたけど、いつの間にか見えなくなってたのね」
顔を上げた紅葉は、寂しげに微笑む。
「あの子、いつの間にか大人になっちゃった。私が側にいない間に」
紅葉の言葉に、蒼雪はハッとした。知らぬ間に成長したモモに、自分も驚いたばかりではないか。
「ミドリが回復したら、君も一緒に遊ぼう。そのほうが、あの子も喜ぶ」
「・・・・・・」
「大丈夫、本当に危ない時は、ヴァイスが止めてくれるさ。それに、モモやノアールも。もっと、あの子達を信用しよう」
ジェネラルに言われたことを、自分が紅葉に伝えるのは不思議な気がする。紅葉は蒼雪を見つめてから、こくりと頷いた。
「そう・・・・・・そうね。ありがとう。ごめんなさい、引き留めちゃって」
「いや、いいんだ。君と話せて良かった」
「私もよ。それじゃあ」
手を振って立ち去る紅葉を見送り、蒼雪はシアンの部屋へ向かう。
作品名:【腐】スカーレットサイン【モジュカイ】後編 作家名:シャオ