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No.017
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novelistID. 5253
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ピジョンエクスプレス

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 この度は当社のリニアの開通イベントにご応募くださいまして、誠にありがとうございました。”

 カケルはぼりぼりと頭をかいた。

 ――ああ、そういえばそんなイベント応募したっけなぁ。すっかり忘れていた。たしかリニアに往復でタダ乗り、さらに有名シェフの豪華なコース料理がふるまわれるんだっけ。ついでにリニアのフリーパスをプレゼント、とかいう話じゃなかったろうか。
 と、カケルは記憶をたぐりよせた。そして、

 ん? ちょっと待て。もしかして当たったのか? と、カケルは少し期待した。

“ですが、非常にご好評いただきまして多数の応募をいただいた結果、残念ながら、あなた様をご招待することができません。”

 …なんだ、ハズレか。カケルは少しがっかりした。

“そこで当社では抽選にもれた方の中からさらに厳正なる抽選を行い、カケル様を特別イベントにご招待することに致しました。下記の日時に同封した切符を持って、西コガネ駅へおいでください。”

 同封の切符? カケルは切符を確認しようと手紙を握る腕をおろした。
 いつのまにか封筒を落としていたらしく、アルノーが落ちた封筒に頭を突っ込んでゴソゴソと中を漁っていた。
 やがて、アルノーは封筒の中から濃いピンク色の切符を取り出した。

「クルックー」

 アルノーはカケルのひざにピョンと飛び乗ると切符を渡してくれた。

“5月16日朝6時、西コガネ駅南口集合(雨天決行)。ただし諸事情により手持ちポケモンの持込は禁止しておりますのでご注意ください。”

“それでは、カケル様にお会いできるのを楽しみにしております。”




3.出発の朝

 鳥ポケモンの朝は早い。昨日の夜あんなに騒いでいたのにもかかわらず、カケルは鳥ポケモンたちの騒ぐ声に起こされた。目覚まし時計を見ると四時五十分。鳴りだす十分前だった。
 カケルは目覚ましのアラームを解除して、部屋を出るとトースターにパンをセットした。その間にパジャマを着替える。ちょうど上着に頭を通したところでトースターが「チン!」と鳴った。
 焼きあがったトーストにミルタンクの乳で作った特製のバターを塗り、朝食にした。母親はまだ寝室でグーグー寝ている。カケルはトーストを食べ終わると、リュックからポケモンフーズを取り出し、大きな器に山盛りにした。

「お前たち」

 カケルが言うとネイティオ以外の六つの顔がこちらを向いた。

「僕、今日は一人で出かけるから好きに過ごしていて。部屋の窓はあけておくから」

 そしてドードリオに向かってこう言った。

「君たちは外に出たくなったら、自分らで扉をあけて下に下りること」

 三つの顔がうなずいた。こいつらは”三匹”で連携してたいていの事はできてしまうのだ。
 そして、カケルは自分の足元を指さすとこう言った。

「お腹がすいたら食べ物はここ。足りなかったら母さんに言うこと」

 準備は出来た。すっかり身支度を整えたカケルは玄関で靴紐を結びはじめた。
そうして、靴紐を結んでいるとアルノーの羽音が近付いてきた。

「なんだい?」
「クルー」

 アルノーのくちばしには濃いピンク色の切符が挟まれていた。

「ああ、これこれ! 大事なものを忘れるところだったよ!」

 カケルはアルノーから切符を受け取ってズボンのポケットにつっこんだ。
 あぶないあぶないうっかり忘れるところだった、とカケルは思った。

「ありがとうアルノー。それじゃあ行って来るね」

 カケルは扉を閉めた。
 扉の隙間からだんだん細くなっていく玄関の風景とアルノーが見えた。




4.駅までの道

 早朝のコガネシティは人気も少なく、太陽は昇ったばかりで少々寒い。ときどき車が行き来したがまだまだ交通量は少なく、お店もひらいているのはコンビニくらいのものだ。駅までにはだいぶん余裕があったが、カケルは早足で歩いた。きっと自分は貧乏性だからだろうと思った。
 大通りは静かだった。新聞配達の自転車とすれ違ったが、他には誰とも会わなかった。
 カケルは道を急いだ。この大通りは緩やかな登り坂になっており、登りきると三つの道が出現する。右にまっすぐ進めば西コガネ駅である。
 もう少しで分かれ道だ、カケルがそう思ったとき、坂の上から誰かが言い争う声が聞こえてきた。

「まっすぐに決まっているじゃないか!」
「いいや右だね!」
「…左だと、思う」

 坂を登りきって見てみれば、言い争っているのは三人の少年だった。自分よりもニ、三歳くらい年下だろうか。
 そして三人の顔を見みてカケルはびっくりした。三人とも同じ顔をしていたからだ。三つ子ってやつか。

「ねえ、きみたちどうしたの」

 カケルは同じ顔の三人組に尋ねた。

「駅に行きたいんだ」
「どこの駅?」
「西コガネ駅」
「こいつは左だって言うんだけど」
「あいつは右だって言うんだ」
「…まっすぐではないと思うけど」
「西コガネ駅には右に行けばいいんだよ」

 カケルは右の道を指差した。

「ほら! やっぱり右じゃないか」
「うるせえ! 今度は駅まで走って勝負だ」
「いいとも! うけてたってやる!」

 二人は駅に向かって走り出した。

「ま、待ってよう!」

 最後の一人も走り出した。そして、すぐに三人は見えなくなってしまった。なんて足の速いやつらだ。
 カケルは腕時計を見る。時間まであと三十分、ここからはゆっくり行こうと思った。




5.西コガネ駅

 西コガネ駅に到着すると、そこにはたくさんの人々が集まっていた。
 しかし、まだ駅の門は開いておらず、入り口付近に人ごみが出来ている。カケルは入り口近くに立っている時計台の下で門が開くのを待つことにした。

「だから家を出るとき無理やりにでも引っ張ってくればよかったんだよ!」
「そんなこと言ったって、無理強いしたところでテコでも動かないでしょう。あの人は」
「これだから協調性のないやつは嫌いなんだ。だいたいいつもあいつは…」
「それよりさ、来るのかな」
「来ないかもしれませんね」
「人が首を長くして待っているって言うのに…もし来なかったらぶん殴ってやる」
「来なかったらぶん殴れないじゃないですか」
「おいおい、暴力はよくないよ」

 カケルの前で三人の男達が話していた。どうやら待ち人があるらしい。
 一番背の高い男は待ち人が来ないことにイライラしている様子だ。真ん中の眼鏡の男は本を読み進めながらそのときを待っている。三人目の一番小さな男はきょろきょろとあたりを見回している。

「おい、あと五分だぞ。本当に来るのかァ?」
「まぁ、期待せずに待ちましょう」
「あれ、むこうにいるの彼じゃないかな」
「本当だ。やっと来やがった」
「よかったじゃないですか。時間に間に合って」
「おーい、こっちだ!  おーい!」

 一番背の高い男が道の向こうを歩いている男を呼んだ。聞こえているのかいないのか呼ばれた男は速度を上げることなくゆっくりと歩みを進める。

「あの野郎、何ちんたら歩いているんだよ!」
「まぁまぁ、時間通りに来ただけよしとしましょう」
「あ、僕、三つ子を呼んで来るね」

 小さな男が出て行った。三つ子ってさっきの子たちだろうか。