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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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「……俺は見慣れたからな。よく来てたし」
「えっ?」
 キョトンとするカレンをよそに俺は歩き出す。慌ててついて来るカレンも今の俺からすれば可愛い。
「お疲れ様です」
「ども」
 きびきびと敬礼する警備員をよそに俺は中へと入って行った。他にも色々な人が俺に敬礼をするが簡単に会釈をして中へと入って行く。
「王宮へ入るのに顔パス……。何物なんですか、貴方は」
「えっ、お前が知ってるとおりだよ」
「……よくわかんないです」
 まあ、確かに普通の人間が見たらおかしいよな。何も無しで宮廷なんて入れないもんな。でも俺はエリーの友人だから入れるんだよな。そこはいろんな意味で感謝しておかないと。
「ほら、ここだ」
 ここは宮廷の中にある書庫の前だ。この中に目的の物がある。
「あっ、スタヴフィードさん。お待ちしておりました」
 係の人間が笑顔で迎えてくれた。
「陛下が貸してくれるっていう本は?」
「えっ?」
 係の彼はキョトンとした顔をしていた。
「……なんだよ、なにか問題でもあったか?」
 少しだけ顔を訝しめて俺は訊いた。
「いえ、陛下からは『貸して差し上げろ』ではなく『差し上げろ』と言われまして……」
 そんなことあってたまるかよ!いくらエリーの言うこととはいえ、嘘だろおい!
「仮にも宮廷に献上された"あんな"本だぞ!?それを俺にくれる!?」
「ですが陛下がおっしゃったことですので……」
 ……このままでは埒があかない
「一つだけ確認する。それらを俺にくれるってことは、どうしようが俺の勝手ってことだな」
「ええ。本人以外閲覧禁止の物が少しありますが、それ以外は大丈夫かと」
「わかった。じゃあ、あとは本人に聞く。とりあえず持って帰るわ」
「わかりました。では少々お待ちを」
 彼はすぐに奥へ引っ込んだ。
「あの、ユーリさん。その本ってそんなにアレな物なんですか……?」
「……ここではなんだ。後で話す。悪いな」
「いえ、すみません。言いにくいことは誰でもありますよ」
 ……あれ、もしかしてこいつ、この時点で俺に気があったのか?後で確認してやろう。
「……ま、お前も隠し事してた身だもんな」
「……まあ、ね」
うん?
 やっぱりおかしいな。問い詰める理由が増えてしまった。……想ってくれてるならうれしいことだが。
「お待たせしました。こちらが御所望の書物でございます」
 いつの間にか時間が経っていたようだ。さっきの係がカートに本を載せて戻って来ていた。
「ありがと……うっ……」
 俺は目を疑った。量が多すぎる。十冊しか無いのが救いだが、しかし。
「……これ、一冊一冊が辞典クラスの厚さを誇ってますよ、半分くらい」
 うん。そうなんだよ。薄いのも何冊かある。しかし過半数は辞典とそう変わらない厚さのものだった。
「仕方ない。薄いのだけ持ってくれ。あとは俺が運ぶ」
 俺は厚さの薄い本をすべてカレンに託し、残りを全部持った
「あのユーリさん、危ないですよ」
「大丈夫だ、問題無い」
 重さを軽く感じさせる魔法を使い、負担を軽減する。
「そんじゃありがとう。陛下によろしく」
 俺は一言だけ残してその場を去る。
「……本当に大丈夫ですか?よければ私もいくつか持ちますが」
 軽い本を持つカレンは心配そうな顔で俺について来ていた。
「どうした?昨日は来るの嫌がってたのに、ついて来ると心配か?」
「……引き受けた身ですし、手伝えることは手伝っておくのが礼儀だと思うからです。悪いですか?」
「いいや、全然。あと、俺に関しては心配無用だ。ちょっとだけど魔法を使って軽く感じるようにしてるし」
 流石に大きな魔法は使えないが、見えない程度の魔法なら大丈夫だ。
「そうですか。……しかし、なかなかに古い本ですね。ユーリさん、これに何が書いてあるんですか?」
「帰ってから話してやるよ。それが謝礼とでも受け取っておいてくれ。あと、晩飯も奢ってやる」
 フラワーズでな。
「……まあ、それで納得しておくことにします」
 どうやら、そこそこ喜んでもらえたようだ。
 ……それにしても、カテゴリー3か。どうして入学式の日、俺はこいつに心を読まれたんだろうな。
「きっと気を抜いていたからですよ」
「……突然読むな。しっかし、気が抜けていると心が読みやすいもんか?」
「まあ、そうですね。ある程度はいつでも読めます。スイッチのオンオフが子供の頃は出来ず苦しんでましたけどね」
 なるほど、それが家族に捨てられた理由で、人を拒んでいた理由か。
「そうですよ。なかなかに苦労しましたよ」
「……俺さ、今そんなに緩んでるか?」
「はい。何か解決の糸口を掴んだみたいに弛んでます」
「……そうか」
 まあ、仕方ないか。これで俺もやっと、普通の人生を送れそうだしな。
 俺は気を引き締め直してバスを待った。その間カレンは突然心が読めなくなったことに対して退屈そうにしていたが。





 数十分後。
俺達はビッグ・ベンの前でバスを降りた。勿論運賃は俺持ちだ。金に関しては際限無く使える。主にエリーから舞い込む依頼のおかげで。
「ただいま、おっちゃん」
「おお、お帰りユーリ君。仕事かい?」
 この時計塔の管理人のおっちゃん―通称ビッグ・ベンその人だ。どこがビッグだって?腹に決まってるだろそんなの。
 というか、この人がおっちゃんなら俺は糞爺なのでは……。
「そんなとこ。学園長の人使いが荒いせいでね」
「それは君への信頼が厚いという証拠じゃないのかな?」
「それならいいんだけど……」
「おっと、仕事とはいえデートの邪魔しちゃ悪いね。お疲れさん」
 あんたもかよ!
 俺は既に突っ込む気力を失っていたので無視して会釈だけをして時計塔の中へと入って行った。
「……私達、そんな風に見えるんですかね……」
「さあ。俺にも分からん」
 ……このとき、俺は少しだけ心を躍らせていたのかもしれない。少しだけど。
「さて、あと少しだ」
 関係者以外立入禁止の看板をよそに俺達はそこへ踏み込む。そして突き当たりの壁にある手形に手を当て、扉を解放する。するとそこに二畳ほどの部屋が現れた。
 中に入るとそれは動き出す。それが地下世界への入口。魔法で動くエレベーターだ。
「……やっぱり、何度乗ってもすごいですね、このエレベーター……」
「まあ、このエレベーターを動かすのが一番の難関だったらしい。魔法使い以外では通れないセキュリティも含めてな」
「それはそうですよね。まずこれがないと地下に学園都市なんて出来ないですもんね」
「だよなぁて……っと、着いたぞ」
 エレベーターが地下世界の地面につくと同時にその扉は開く
「あとは寮まで運ぶだけだ」
「はい!」
 ふむ、まだ元気は残っているな。もうすぐ昼か。寮に行く前にフラワーズにでも行くか?
「行きます」
 ……案の定思考は読まれてしまった。
「……俺の奢りでいいよな」
「流石にそこまで厚かましいことは……」
「今日の礼だ。それくらいさせろ」
「むぅ……」
 まあ、少し膨れてしまったが納得してくれて助かった。