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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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 無論カレンだ。昨日指定した通り風見鶏の制服を着ている。
「六時二十五分。ぴったりだな」
「約束の時間に遅れるほど嫌な人ではないですからね」
 素っ気ない返事だ。今のカレンからすると考えられないな。
「んじゃ、行くか」
「はい」
 俺達は歩き出した。この時間は流石に誰もいない。なので気にすることもないだろう。
 ……と高括っていた事を後悔した。
「あらユーリ、早速教え子に手出したの?」
 ……リッカ、お前には一番会いたくなかったよ。くそっ、誰にも見つからずに行けると思ったのに!人払いしとけばよかったよ!
「ちっげーよ!エリーからの頼み事だ!お前も知ってるだろ!!」
「そうだけどさ、流石にすっごく年下の子には手出しちゃダメよ」
 ……この頃のリッカは後にそのすっごく年下の子に手を出すなんて考えていなかったんだろうな。
「……分かってるよそんなこと。そうじゃなくても俺は"死ねない"からな」
「そこまで言ってないでしょ。じゃあね」
 といってリッカは寮から去っていった。なんだよ、あいつも用事があったのか。知ってたら誘わなかったのによ。
「悪いな、カレン。奴に勘違いさせちまったみたいで。嫌だったよな」
「いえ、それより……」
 どうやら、カレンは付き合っていると誤解されたことには何も感じていないようだ。しかし別のところには疑問を感じたようだ。
「……"死ねない"ってどういうことですか……?」
 俺は思わず黙り込んでしまった。
「それは、今は知らなくてもいいことだ」
 そして突っぱねた。今思えば、ここで話しておけば持っている重荷はもっと軽くなったかもしれない。
「……そうですか。じゃあ、聞きません」
 こうやって、無駄に空気を読ませてしまうのも俺の悪い癖だ。なんで俺は学習しないかなぁ……。
「悪いな。いつか話すから」
 これが俺に出来る精一杯だった。
「そうですか」
 それからだろうか。余計に彼女を見るようになったのは。
 ここから先は、二人黙ったまま目的地へと向かっていた。俺は口を開くことすら出来なかった。
 そして午前七時。時間ピッタリで俺はエリーのいる学園長室の扉を叩いた。
「どうぞ」
 中からは無論当然のようにエリーの声が聞こえる。
「あの、私入ってもいいんですか?ここ学園長室ですよね……?」
 やっとカレンが口を開いたと思ったら、少し声が震えている。どうやら少し緊張しているらしい。
「何を今更。入るぞ」
「あっ、ちょっと……」
 俺は無意識のうちに彼女の手を引いていた。
「やっと来ましたか、ユーリさ……ん……」
 少しだけ怒っているような様子で待っていたエリーの顔がみるみる笑顔になっていく。やばい、また俺はやらかしたのか。
「ごめんなさいね、ユーリさん。早速年下の女の子をゲットしちゃったんですね」
「あの、学園長、これは、違うんです」
 俺がどう反論しようか困っていたところでカレンは言った。
「私、緊張しちゃって……。それをユーリさんが手を引いてくれたんです」
 うむ、今思えばこの頃のカレンも可愛いじゃないか。
ぐふっ、突然隣で寝ているカレンが抱き着いてきた。ちょっと苦しいが幸せだ。しかもカレンちょっと笑顔だし。
「そうですか。ですが、手は繋いだままなんですね」
 言われて気づいた俺達はすぐに手を離した。
「そんで、用件はなんだよ。誰か連れて来いって事はリッカ達以外を連れて来る可能性もあったわけで現に今こうして俺はカレンを連れてきた。そんじゃ、変な用件ではないよな」
「鋭いですね、ユーリさん。流石は<失った魔術師>」
「つか、お前とは長い付き合いだからな」
 俺は呆れた顔でエリーに言葉を返した。
「じゃ、今回の用件ね。それはね、ちょっとお使いを頼まれてほしいの」
「お使い?」「お使い……ですか?」
 俺達は二人揃ってキョトンとした。
「ええ。ちょっと王宮までいって荷物をとって来てほしいのよ」
「自分で行けよ」
 お前クイーンだろ。
「あら、私今から出張なんだけど」
 そういえば言ってたな。女王は新入生クラス対抗戦の次の日からヨーロッパの各国の訪問へ向かうって。およそ一週間くらい。
「……急ぎなのか?」
「そうじゃなきゃこんな非常識な時間に呼ばないわ。リッカさんは別の用事があるし、頼めるのは貴方だけだったの」
「中身は?」
「貴方に十分関係するものよ。"女王"様が貴方に閲覧を許可したわ」
 俺はため息を吐いた。そして呆れ顔で言ってやった。
「分かったよ、行ってきてやるよ。俺に必要なもんなら、俺が取りに行くのが筋だよな」
「そうですね。出来れば持ってきたかったのですが、何分量が多くて」
 ……量が多いとはどういうことだ。俺が頼んでいたそれは、そんなに量があるのか。
 まあいい。
「そんじゃ、行ってくるわ」
「行ってきます」
「お気を付けて」
「お前もな」
 俺は一言返すと、踵を返して部屋を出た。それに倣ってカレンも部屋を出た。
「あの、女王様はユーリさんにその書物の閲覧を許可したんですよね。じゃあ、私は行っていいんですか」
「ああ、大丈夫だ。俺が頼んでた本の量が多いからな。運ぶ手伝いをさせるために連れて来いって言ったんだろうよ。表紙くらいなら見ても大丈夫だろ。"女王"も、そこまで酷な事は言わないだろ」
「後もう一つだけ。なんであの部屋に人払いが仕掛けてあったんですか?」
 気づいたか。流石カテゴリー3。
「それな。話聞いて俺もやっと分かった。ありゃ俺のためだ」
「……それって、ユーリさんが言えないことに関係が?」
「それよか、そのものだよ」
「……やっぱり行っちゃいけないんじゃ……」
「俺が許すよ。言ったろ、いつか話すって」
 それからカレンがこの話題を話すことはなかった。
 代わりに自分の家の事を話してくれた。どうやら前当主―爺さんの方は一度入院をしたそうだが、それ以外は何等変わったことはないらしい。
 うむ、冬季休暇辺りにでも様子を見に行くか。
「うーむ、なんか久しぶりに外に出た気がする」
「私は少し前に外から来たんですけど、なんか久しぶりな感じですね」
「そりゃこの二週間ほどは忙しかっただろうな、予科一年は」
 ちなみにおっちゃん―通称ビッグ・ベンはいない。早朝であるわけだし、また時間外なのだろう。
「さて、王宮まで行くぞ」
「道わかるんですか?」
「俺を何物だと思ってる」
「世界に数人といない強力な魔法使いです」
 分かっているならよろしい。ビッグ・ベン(本物)の目の前にある停留所でバスを待つ。あと十分くらいか。ちょっとそこの店で飯を買っていこう。
「ですが、入るためには色々必要なのでは……?」
「それは、見ていればわかる」
 俺は買ってきたパンをカレンに渡す。勿論金はお断り。
 話し込んでいるとすぐにバスは来た。少しの間乗っているとバスは目的地近くの停留所に着いた。
「あっ、お金……」
「付き合ってもらってるんだ。俺に出させてくれ」
「さっきも奢ってもらったし……」
「気にすんな」
 俺は二人分の運賃を払いバスから降りた。少し唇を尖らせたカレンもついて来る。
「着いたぞ」
 停留所から五分ほど歩いたところにそれはあった。
「すごく……おっきいです」
 カレンは生唾を呑んでいた。