二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

INDEX|19ページ/46ページ|

次のページ前のページ
 

 どうやらこの空間に拡声魔法がかかっているらしい。なるほど、リッカの粋な計らいだな。
『えーっと、本日はエリザベス学園長が出張ということもあり、私が挨拶を務めさせていただきます』
 まず言うべきは、俺がなぜここにいるかだ。普通は学園長が行うべき挨拶だが、今回に限っては仕方ない。俺はそのまま続けた。



 既にご存知のとおり、この選挙演説は今後の学園の代表を決める大事な場であります。昨年、及び一昨年代表を決めた後の生徒には関係ない、ということはありません。それよりも、魔法使いとしての自身の立場がどうなるか、ということがこの演説で決まるということです。関係ないから適当でいい、それではこの先自分に大きくなって帰ってきます。ちゃんと候補者全員の演説をよく聞き、誰にならこの学園を任せてもいいと思えるかをよく考え、自身の一票が無駄にならないようにしてください。
 そして、予科一年のみなさん。今年度初の生徒会選挙です。
選挙は年に三回あり、最大で三人の役員が学年にいると言うことになります。今回の演説を聞いて、自分も生徒会役員になりたいと思ったならば、ぜひ次回の選挙で立候補してみてください。その一歩を刻むことで、自分の次に繋がると、私は信じています。



『以上で私からは終わります。ご静聴ありがとうございました』
 講堂のあらゆる場所から拍手が起こる。とりあえず掴みは成功か。
 あとは、候補者のターンだな。頑張れよ、カレン。
「よかったじゃない、ユーリ」
「……この原稿誰が書いた」
 ねぎらいに来たであろうリッカに俺は聞いた。
「エリザベスよ。彼女がなかなか言えないような事書いてきたわね」
「じゃあ俺公開処刑されたようなもんじゃね?」
「それでも学生の心には何か届いた様子ですけど?」
 候補者を呼びに行っていたであろうシャルルが声を掛ける。その後ろにいるのはカレンだった。
「ならいいけどな。……カレン、頑張れよ。一番はきついかもしれんが、お前なら行けるはずだ」
「はい。では、行ってきます」
 俺は言葉でカレンの背中を押してやった。あとは彼女次第だ。
「あらあら、どこまで進んだのかしらね」
「本当、カレンさんとはどこまで進んだんですか?」
「あの堅物の会長が……ねぇ」
 ……三人揃えば姦しいというが。こいつらの場合、姦しいとか言うレベルじゃないと思うんだ……。
「うるせぇ、お前ら仕事しろ」
 俺が言うことではないが。言わないよりマシだと思ったのは初めてだった。





 午前十時半。
 候補者の演説が全て終了し、その日の集会は終了となった選挙は明日となり、このあとは完全にフリーだ。
 ただ学生達の空気はそんな雰囲気でもなかった。理由は一つ。
「クリパ……か」
 いよいよ明日に迫ったクリスマスパーティーのことだ。既に過ごす相手のいる人間にとっては何気ない緊張した時間となり、まだいない奴にとっては殺伐とした感情になる時間だ。無論俺は前者の方だ。
 ただ、あまり緊張はしていない。もう覚悟は出来ている。
 明日カレンに告白する。その思いだけは、揺らいでいなかった。
「首尾はどうなの?」
 俺の後ろから声がした。大体この声はリッカだ。
「どうもこうも、覚悟決めただけでまだどう伝えようか迷っているんだが」
「あら、そんなの言いたいこと言えばいいだけじゃない」
「それが難しいんだっての……」
 俺はがっくりと肩を落とした。その様子を見てリッカはクスクスと笑っている。
「……何がおかしい」
「いいえ、なんかこんなユーリ見るのは珍しくって。<失った魔術師>もこんな顔するんだと思ってね」
 おそらく俺の顔は困惑したような顔をしているのだろう。
 確かに、俺はリッカの……いや、他の人間の目の前で余裕を崩したことはない。それだけが俺のアドバンテージであり、心の支えだった。そうでもないと罪悪感に押し潰されてしまう。一時の気の迷いで禁呪を行使してしまったことが、ここまで影響していたのだ。
「……俺は何を一歩引いて考えていたんだろうな」
「まあ、仕方ないわよ。あなたに何があったかを考えると、仕方ないわ」
 ………………。
 そもそも俺は、そんなに強くない。一見威厳があるように見えるが、それこそメンタルは青年のそれと同等だ。
「ま、頑張りなさいよ」
 それが、二百歳以上も年下の女の子に恋をしているなんて。全く、可笑しい話だ。



   ◆  ◆   ◆



 翌日。
 俺はあれこれ考えすぎてよく眠れないまま朝を迎えた。大方どうやって想いを告げようかという話だ。それは大体決まった。
 少しだけ迷いがあるが、あとはクリパで何とかするだけだ。だがその前に、生徒会選挙の結果が待っている。
 俺は一足早く講堂へ向かった。無論、投票受付の準備をするためだ。
「あら、ユーリ」
「リッカ、早いな」
 一番かと思っていたが、そんなことはなかったようだ。
「ええ。かったるいけど、役員を決める大事な式だもの。サボるわけにはいかないわ」
「それもそうだ」
 とりあえず二人で作業を進めた。数分の後、シャルルと巴も到着し作業を開始する。四人でやると早く、三十分とかからず完了した。
「それにしても、会長が早く来るなんて珍しいですね」
 不意に、巴が俺に話を振った。
「……昨日色々考え事していたからな。眠れなかったんだ」
「それは、カレンの事かしら?」
 リッカまで混ざってきた。これはそろそろ退却したほうがいいか?
「話す必要はないだろ。そもそも俺は割と眠いんだ。あまり話し掛けないでくれ」
 そうじゃないと余計疲れる。クリパを迎える前に倒れるのだけは死んでもごめんだ。
「まあ、そういうことにしておいたら、リッカも巴も」
 ようやくシャルルが見兼ねて助け舟を出してくれた。生徒会唯一の良心よ、お前の言葉に感謝するよ。
「まあ、それもそうだな」
「ユーリにとって今日は勝負の日だもんね」
「……まあ、もう聞かなかったことにしてやるよ」
 これ以上疲れるのは時間的にきつい。俺は少しだけ体力を回復させる魔法を使うと、あとは疲れないようにすることに徹した。
 そうすることおおよそ三十分前後。投票の時間がやってきた。
「それでは、開場します」
 開場の合図と同時に人がなだれ込んできた。その生徒たちは、予め配られていた投票用紙を片手に壇上へと並んで行く。そして設置されている投票箱へ紙を入れていく。勿論その中には俺の受け持つ生徒も並んでいた。
 彼等は俺を確認すると軽く会釈する。俺も軽く返してやる。
 そして俺は目で語りかける。カレンに投票しているよな、と。無論彼等は頷く。クラスメート思いのいい奴らでよかった。
 三十分ほど経つが、未だに講堂には人がなだれ込んで来ていた。それを裁きつづけること一時間程度。やっと最後の一人が投票を終え、壇上を下りていった。
「それでは、投票を締め切ります。開票作業を行いますのでしばらくお待ちください」
 巴のアナウンスの後、俺達は開票作業を開始した。本科一年、二年共に五十人前後、予科一年、二年共に百五十人前後。計四百人ほどの票を開票していく。