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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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 その時間、およそ三十分。俺の同僚のクラスマスターにも手伝ってもらったが仕方ない。それくらいは許してもらわなければ。
「開票作業が終了致しました。これより、結果を生徒会長、ユーリ・スタヴフィードに発表していただきます」
 ……至極面倒臭い話だが仕方ない。生徒会長の性というものだ。
 俺は壇上の演説台に立ち、渡された紙の中身を読み上げる。
「えー、まず投票率、97%。よって過半数を超えているため、この票は有効とします。そして、当選者ですが……」
 俺は少し溜めを入れて話した。
「1年B組、カレン・アルペジスタに決定致しました」
 俺は淡々と告げた。だが開場では喜びと悲しみの二つの感情が入り交じっていた。
「ではカレンさん、前へ」
 俺はカレンを壇上へ呼び出した。無論意気込みを話してもらうためだ。
「では、生徒会に対する決意表明をどうぞ」
 壇上へ来たカレンに、俺は演説台を明け渡した。
「……えーっと、この度、当選させていただきました、カレン・アルペジスタです」
 カレンはやや緊張しながらも、ギャラリーに向かって話しはじめた。



 えっと、正直私は当選できるとは思っておりませんでした。
なので、今ここに立って、生徒会への決意表明をしていること。そして、生徒会に入ったという実感がなく、もしかしたらこれは夢なのではないか、とさえ思います。ですがこれは夢ではないのだと思います。
 なので一言だけ言わせていただき、これを決意表明としたいと思います。
 ……えっと、まだまだ未熟な私がどこまで何が出来るか分かりませんが、みなさんのため、精一杯頑張らせていただこうと思います!
 私の投票していただいたみなさん、本当にありがとうございました!そして今ここにいるみなさん、ご静聴ありがとうございました!



 ぎこちないカレンの礼の後、会場からは拍手が起こった。昨日まで鎬を削っていたライバル候補もまた、カレンに向かって拍手をしているようだった。これなら、次かその次の選挙で当選させても問題なさそうだな。
 そして、今年度最初の生徒会選挙は幕を閉じた。





 午後。
 既に学園はクリパ一色となり、魔法によるイルミネーションが輝いていた。
 俺はそれには目もくれず少し走っていた。目的地は校内に唯一ある噴水。
 指定したのは俺だ。俺が遅れるわけには行かない。
 一時に集合と言ったのだからせめて三十分前には着かないと……と、思っていたのだが。
「あっ、遅かったですね、ユーリさん」
 その時には既に、カレンは到着していた様だった。
「……俺予定よりも早く着いたつもりなんだが?」
「奇遇ですね。私もそうなんですよ」
 あれ、ちょっと顔が赤いか?しかも目を反らされた。これはちょっと勝ち目あると思ってもいいのか?
 ……そういえば。
「似合ってるな、そのネックレス」
 俺はカレンの首元を見た。そこにはささやかで、しかし存在感のあるネックレスが飾られていた。
「これ、ママの形見のものなんです。特別な日に着けなさいって、ママからプレゼントされて」
 ……そういえば、義理とは言えこいつの母親は数年前に亡くなっていたな。俺もその葬式には呼ばれたものだ。
 ……しかし。
「ママ、か。じゃあ、アルトの事はパパか?」
「うっ……」
「悪い悪い。からかったつもりじゃなくて、意外だと思ってな」
「……何がですか?」
「そんなの、目上の人間に対して砕けた感じで話すのがな」
「……そうですね。私、どうしちゃったんでしょうか」
 カレンはそう言うとそっぽを向いた。……まあ、嫌われてはいないのだろうが。
「まあ、とりあえず行くとしますか」
 俺は言葉とともに手を差し出した。
「はい」
 少し上擦った声とともにカレンが俺の手を握ってくれた。そして俺達は、校内を歩きはじめた。





「へぇ、こうやって校内で出しもの出してる人もいるんですね」
 とりあえず俺達は校内へ入り、散策することにした。中にある、普段は教室として使われているそれは、今日は一般生徒向けに解放され、中では個人から団体単位で様々な事が行われていた。
「まあ、部活単位でやってるのが主だが」
「そういう人達って、悲しくならないんですかね。……こう、クリスマス的に」
「言ってやるな。そんなこと彼等だって分かってるはずだから」
 ……まあ、校内でこんなことしていること自体、小数なんだがな。
 とりあえず。俺達は何をせずとも校内を見て回った。気分的には、ウィンドウショッピングに似ていた。





 楽しいことをしていると、時間が経つのは早いものだ。
 すでに夕方。日は傾き、月が昇ろうととしていた頃だった。
「あ、雪……」
 カレンの声に気づき、空を見る。そこでは白い雪が舞っていた。
「ホワイトクリスマス……か……」
「綺麗ですね」
 ああ全く、ここの天候操作をしている魔法使いには脱帽だ。いいタイミングでやらかしてくれる。……なんて現実的な話が出来るはずもなく。
「……そうだな」
 そう答えることしか出来なかった。理由は明白。真っ白な雪を眺めて笑顔になっているカレンをもっと見つめていたいと思ったからだ。
 ……やっぱり、か。認めてやるよ。俺はカレンが好きだ。好きかもしれないじゃなく、好きだ。迷いなんてもういらない。昨日考えたことも、全部いらない。
「カレン」
「はい―」
 カレンが振り向いた瞬間、俺は彼女を抱きしめた。
「ユーリさん?」
 驚いている様子だったが、拒絶はしない。顔が赤く、声が少し上擦っているだけだ。
 俺は少しだけ深呼吸をして、そして告げた。
「突然抱きしめて悪い。ぐだぐだと長い話をするのは、ちと苦手でな。端的に言わせてもらう」
 俺は一呼吸おいた。少しだけ頭で言うことをまとめる。そして一息で告白する。
「俺はお前の事が好きだ。俺の部屋とかで熱心に勉強する姿や、うれしそうに家族の事とかを話すところとか、あと……」
 少しだけ目を反らす。だが目を反らしてはいけない。俺は再度カレンを見つめる。
「楽しそうに、笑っているとことかも引っくるめて全部が好きだ。だけど、俺は禁忌を侵すような人間だ。嫌なら断ってくれて構わない。それでも……それでも、もし良かったら俺と―」
付き合ってもらえませんか?
 そう言い切る前に、カレンに抱きしめられた。
「ちょっ」
「狡いですよ、ユーリさん。私だって、言うタイミングを探ってたのに先に言っちゃうんですから」
「……それって」
「はい。私もユーリさんの事、大好きです。ユーリさん、あそこまで言ってくれたんですから、ずっと一緒にいてくれますよね?」
「ああ。お前が望む限りは、ずっと一緒にいてやる!」
「八十点です。そこは、『一生一緒にいてやる!』くらいの意気込みじゃないと」
「そ、そうだな」
 少しだけ俺は落ち込んだ。だがカレンは笑って。
「ですが、今回はこれで許しておきます」
 俺の唇に、自分の唇を重ねてきた。奇しくも、それは二百年以上生きてきた俺の、ファーストキスだったりする。



   ◆   ◆   ◆



 ……なんだこの展開。自分で思い出すだけでも恥ずかしいわ!!!!