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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
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D.C.IIISS ~ダ・カーポIIISS~

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「結局のところ、自分一人で出来ることなんて限られていて、やったことはその記憶の整理でした。私の中に眠る約二十年分の記憶を整理して何があったのかを理解しました。それが終わったのが小学校を卒業するくらいでしたから、多分周りのみんなよりもけっこうませていたと思います」
 ……笑顔で話す可憐。しかしその笑顔の奥には相当の苦労があったと見える。
 久しぶりだ、この感覚は。何故だろうな。カレンの……可憐の事ならなんでも分かる気がする。やっぱり、忘れられなかったんだな。
「というわけで、ユーリさん」
 突然可憐が身を乗り出し、俺にぐっと近づいてきた。
「私はユーリさんにされたこと、全部知ってるよ」
「えっ?」
 突然言われた言葉に、俺は混乱するしかなかった。
 この後も可憐の周りであったことや、家族の話をしていた。どうやら初音島へやって来た理由は父親の仕事の関係らしく、同時に可憐の両親はこの島を終の住処とすることにしたらしい。
 そして風見学園の本校2年に編入するという。同じ学園の同じ学年にいるというと、可憐は心底驚いていたが。
 また両親達との仲は、前世の養父達を同じくらい仲が良いらしい。
 俺はそれを聞いて安心していた。それなら心配ないと思ったからだ。
 俺がそのせいでクスリと笑った時、可憐は何やら疑問を持ったようだが、気にしないようにと言っておいた。
 しかし時間が経つのは思いのほか早い。話をしているうちに、既に夕方になっていた。
 俺達は会計をして喫茶店から立ち去った。もちろん俺の奢りだ。可憐は文句を言わずに言うとおりにしてくれたが「変わってませんね、ユーリさんは」と、言われてしまった。
 その後俺達は枯れない桜の元へとやって来た。どうやら可憐の父親の出身は初音島らしく、可憐は枯れない桜について知っているようだった。
 俺はその桜について補足しておいた。この桜を作ったのはリッカと清隆であること、今でもその孫のさくらがさくらの行方を見守っていることを。
「……この桜を作ったのがリッカさんと清隆君だって事だけでも驚きなのに、あのさくらちゃんが二人の孫だったとは……」
「まあ、初めて聞いたら誰だって驚くさ」
 俺達は桜の根本に座り込んだ。可憐は俺の肩に体重を掛けてくる。その重さは、久しぶりに感じる心地良いものだった。
「なあ、可憐」
 だが俺は、いてもたってもいられず聞いた。
「お前は、俺の事をどう思っている?」
「もちろん大好きですよ」
「それは―」
 前世の事を抜きにしてもか?
 そう言う前に可憐に口を塞がれてしまった。可憐の桜色の唇で。
「……"前世の事を抜きにしてもか?"って、言いたかったんですか?」
 心を読める魔法が使えた名残か、どうやら察しがいいらしい。こんなところで嘘をついても意味は無いだろう。
「……ああ」
 俺はすぐに肯定した。
「まあ、そういうところを心配するのもユーリさんらしいですよね。だけどユーリさん」
 可憐は俺の目をじっと見て告げた。
「前世とか関係なく、私はユーリさんの事が好きです。今日出会って、記憶と全然変わらないユーリさんを見て、やっぱり好きだって思えるんですから、そこに嘘はありませんよ」
 そして見馴れた笑顔を見せてくれる可憐。その顔には間違いなく嘘は含まれていない。
「それで、そういうユーリさんはどうなんですか?」
「……そんなの、分かっている癖に」
 俺は堪らず目を逸らした。久しぶりに再会した可憐は、やはり愛らしい。今日初めて見たときからずっとドキドキしっぱなしだ。
「じゃあ、ちゃんと言葉にしてくださいよ。私だって恥ずかしかったんですから」
 可憐は変わらずじっと俺を見ている。
 俺は今まで抑えていた感情を爆発させた。
「……ああ、再会して思ったよ。こいつはカレンだ、間違いなくあの時の。だけどあのカレンの代わりとは思いたくない。可憐は可憐だ、カレンじゃない。はっきり言うよ。俺はお前が好きだ。……出会って数時間しか経ってないのに、こんなのおかしいよな」
「お互い様ですよ」
 ごく自然な動作で寄り添ってくる可憐。その温もりが俺の腕へと伝わってくる。俺は堪らず可憐の肩を抱いた。
「ユーリさん……?」
 可憐は頬を桜色に染め、怖ず怖ずと俺を見る。俺は返しに自分に出来る精一杯の笑顔を見せた。そして可憐の頭を撫でて、今度は俺からキスをした。軽く触れるだけのキス。風見鶏にいた頃も、それ以上はあまりしたことなかったな。
「……もう、ユーリさんってば」
 言いながらも彼女は笑顔だ。
 可憐は先ほどよりも深く俺に体を預けてきた。俺はその体をそっと抱きしめた。抱きしめているだけで心地良い。俺はいつまでもそうしていたかった。





 夜。
 俺はカレンを家まで送って行くところだった。
「先に遅くなるかもって言っておいて正解でした」
「てかさ、俺の事どうやって紹介するんだ?」
「それは大丈夫です。ずっと前から付き合ってて、今日再会したって言いますから。嘘は言ってないでしょ?」
 まあ、確かに嘘は言っていないが。
 俺はカレンの言葉に苦笑で返した。
「まあ、大丈夫ですよ。私の両親は私に好きな人がいることは分かっていたみたいですし」
「それでいいのか?もし会えてなかったら想像の人物で終わるところだったんだぞ?」
 俺はかねてから持っていた疑問を投げるが、カレンはそれに笑顔で答えて見せた。
「その時は、ユーリさんが世界の果てまで探してくれるんでしょ?」
 カレンのその言葉に不意を突かれた俺は赤面してしまった。それは言った当人も同じらしく。
「さ、行きましょ」
 後ろから見ても分かるくらいに、カレンは照れている様子だった。
 その後俺はカレンを家に送り届けると同時に中へと迎え入れられ、カレンに恋人として紹介された。
 カレンの父親がアルトに似ていたのは少し驚いたが、よく考えたら当然か。
 俺は一応『的場 有理』と名乗り可憐の両親に挨拶をしたが、逆に俺がよろしくされてしまう結果となり、可憐には後から名前の件で突っ込まれるところとなった。
 そして夕飯を御馳走になることになり、そこで可憐の両親から根掘り葉掘り聞かれることになり、将来は教師になると告げたところ可憐を含め全員から驚かれることに。どうやら可憐は、進学するために初音島を離れることを考えたため驚いたらしい。それを俺に聞き、俺が肯定したところ可憐の父親が「同じ所に進学すればいい」と言ってくれたため、一見落着。可憐は可憐で自分の夢に向かって進むようだ。……肝心の夢に関してははぐらかされてしまったが。
 その後可憐の父親の酒盛りに付き合わされ、家路に着くことが出来たのは日付が変わってからだった。本当にゴールデンウィーク中でよかったと、今更ながらしみじみと感じていた。



   ◆   ◆   ◆



 半年後、十一月三十日。
 今日は俺の誕生日だ。そして全てが始まった日でもある。約三百と数十年前、俺は禁呪<最後の贈り物>を実行した。ちょうどその禁呪の書かれた本の解読を始めたのがこの日だった。
 そして今度は、その逆の事を始めようとしている。