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妖アパ 千晶x夕士 過去捏造

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あの「時空の狭間」事件から、更に半年。
俺達が日本を旅立ち、世界旅行に出発してから四年が経った

そんなある日、いつも直前に目的地やそのルートを唐突に話す古本屋が
「そろそろ帰るか」と言った。

俺は「聞き間違えか?」と思い、ジッと古本屋の顔を見つめると
「るり子ちゃんの料理が食べたい」と、真剣な顔で告げられた

「じゃ、帰りますか。」
「おう。るり子ちゃんの飯たらふく食って、酒飲んで、温泉入って、寝たい!」
「りょうーかいッス」

俺は早速、日本へ帰る為のチケットやら準備をはじめる
長谷や寿荘の住人にも連絡した方がいいと考えたが、予定通り無事(?)に到着する自信はないので
ギリギリまで伏せていた

帰国決定から二週間
案の定、日本行きの飛行機に乗り遅れた俺達は、次の便に(無理やり)割り込み帰国の途に就いた



ギリギリではあったが、携帯で長谷に連絡し(日本時間は深夜だったが)
寿荘にも伝言をお願いした

成田空港に着くと、俺はほっと一息いれ、「お疲れ様ッス!師匠!」と古本屋に声をかけた
古本屋も「おう!でも無事寿荘に着くまでが旅行だぞ!」とニヤリと笑った

季節は冬まっただ中。

俺はリュックの中からコート(ヨーロッパで購入したビンテージもの)を羽織り、「寒いなぁ〜」
と両手を合わせながら出口へ向かった

長時間のフライトで身体の節々が悲鳴を上げているが、
るり子さんの絶品料理と温泉に入れば、きっと疲れはぶっ飛ぶ!

身体の疲れとは裏腹に、心はすでに寿荘へ向かっていた時
「稲葉!!」
聞きなれた懐かしい声がした

キョロキョロと呼んだ本人を探していると、「ここだ」と頭を叩かれ振り返る

懐かしい友人の顔
長谷は「おかえり、稲葉」と言って俺に抱きついてきた

「ただいま、長谷。元気だったか?」
「ああ。俺も寿荘の人達も皆元気だ。クリもな」
そう言って、俺の肩をバシバシ叩きながら
「また一段と引き締まったんじゃないか?」「少し細いな、ちゃんと飯食ってたのか?」と
眉間に皺を寄せながら心配してくれている

「色々あったからな。長谷には沢山話したいことがあるんだ」
「ああ、俺もお前と話したいことが沢山ある」
そう言って、お互いのおでこを突き合わせながら、笑う

「あー帰ってきたんだ」と実感した

「お取込み中悪いんだけど、長谷くん、もしかして車?」
蚊帳の外だった古本屋が、ニヤニヤしながら俺と長谷を見る

急に恥ずかしくなり、長谷から離れた
長谷はと言うと、何もなかったかのように
「長旅ご苦労様でした。古本屋さん。出口に廻しますのでお待ちください」
と古本屋に告げ、早歩きで駐車場へ向かっていった



寿荘へ向かう車中にて、旅行中の出来事や摩訶不思議体験談を話した
主に、ブログには掲載できない出来事の数々を、古本屋と笑いながら話すと、
長谷は「大きな怪我が無くて本当に良かったよ」と安堵していた

アパートの中に入れば、玄関口で華子さんが出迎えてくれる。
庭に目を配ると、白い塊(ミニ雪だるま?)がピョコピョコ動いている

玄関に入れば、クリが両手を広げ抱っことせがみ、シロは足元に寄り添う
俺はクリを抱き上げ、シロの頭を撫で「ただいま、クリ、シロ」と声をかけた

食堂に向うと、「「「おかえりーー」」」と挨拶され、照れくさくなる
俺は元気よく「みんな!ただいま!!」と胸を張って答えた



るり子さんの「帰国祝いスペシャル」絶品料理を余すことなく平らげた俺は、
長谷、クリと共に地下の温泉に向かった

クリを湯船に入れ、ひよこ隊長で遊ばせながら、ゆっくりと、身体の芯まで温まる
「あーー日本人でよかったーーーー」と絶叫

洞窟温泉内に俺の声が響き渡り、長谷の笑い声がこだまする

「稲葉、俺に話してないことはないか?」

「あ?まぁー世界旅行中のことは細かくは話せてないかもしんねーけど、
 大体は"あんな感じ"で、古本屋とドタバタ劇だったけど?」

「俺に隠し事はするな、と以前伝えたよな?」
「おう!」
「で、お前はまだ俺に話してないことがある」

はて?俺は鍾乳洞の天井を眺めながら、「何のことだ?」と記憶を巡らせていた
如何せん、四年間の出来事なので実際まだ話してないことはあると思う。
ただ、ここまで長谷が突っかかってくるとなると…コイツも関係しているということか?

「んーーーーー。わからん!」

ジャブジャブと湯を顔にかけ、ブルブルと頭をふる
クリは飛んでくる水しぶきが楽しいらしく、俺のまねをする

「…二年半前だ。お前の"時間"では半年前か?」
長谷がギラリと俺を睨みながら「どうだ?思い出したか?」と訴えている

『時間の狭間密室事件』(勝手に命名)のことか?
確かに俺の"時間"では半年前ぐらいの出来事だ

「あーー思い出した!俺達が閉じ込められた時のことか?」
「そうだ」
「で、お前は何故怒ってるんだ?」

長谷は苦虫を噛み潰したような表情で俺を見て言った
「何故、だと?わからないのか、稲葉。」

あの時の俺は確かに混乱していたが、元の時間軸へ戻らなければと考えていた。
下手に長谷に連絡をすれば、間違いなくバイクを飛ばして来るだろう。

だけど、日々多忙な友人を巻き込むことはしたくなかった。
心情的には長谷に逢いたかったが、突発的に何が起こるかわからない状態で
長谷に心配をかけたくないというのが本音だ

その思いを、長谷にぶつけてみた。
あの時置かれていた俺の状況と、長谷に対する思い

恐る恐る長谷の顔を覗き込むと、長谷はまるで泣いている様な表情で俯いていた

「すまん、長谷。まさかお前がそこまで気にしていたとは思わなかった」
「心配するのは当然だろう!このバカ!」
思いっきり頭を叩かれ、ゴホッと湯船に顔が沈む

ゲホゲホと咳き込み、往復ビンタよりマシか、などと考えていると
「全部だ。今後は包み隠さず俺に話せ。巻き込むとか、心配かけるとかは二の次だ」
「……」
「黙って事を進められる方のが余計心配する」
「ああ。わかった」

小学三年の頃からの付き合いだ。
両親が他界し、自分の殻に閉じこもっていた俺を、黙って支えてくれた唯一の親友
「プチ」との衝撃的な出会いも、寿荘も、俺の周りの環境ごと、長谷は受け入れてくれた

千晶同様に…

そうだ…千晶に帰国したことを伝えてない
もしかしたら長谷経由で知っているかもしれないが…明日にでも連絡するか