妖アパ 千晶x夕士 過去捏造
「え?師匠…今なんて言いました?」
「なんだよ。聞いてなかったのか?夕士」
「いえ…聞こえましたが一応確認の為、もう一度お願いします」
「ん〜だからさ。この空間、閉鎖されちゃったみたいで、俺達閉じ込められたみたい」
テヘッと可愛らしく舌をだし、自分の頭を軽くぺしっと叩く。
「……だぁぁぁぁぁ!!!なんスかそれ!師匠どうにかしてくださいよ!」
「えぇ〜無理だよぉ〜。向こう側から開くのを待つしかないんじゃない?」
「……開かなかったら俺達どうなるんですか?」
「ん〜このまま時空の狭間で一生を終える?かな?」
「……マジっスか?」
「マジマジ」
*
俺「稲葉夕士」は今、未曾有の窮地に立たされている。
寿荘の住人「古本屋」に誘われ、世界旅行の旅に出たのが19歳の秋
あれから二年半が経過していた。
俺達の旅は毎回波乱万丈に満ちていた。
最初のメキシコにおいて、早速機関銃を持った民族に追いかけられ、
どこぞの部族の方からは、「婿に来い」と言い寄られ、
野宿は当然、食糧はミミズやら芋虫などサバイバル生活が繰り広げられていた。
数ヶ月後にはその生活にも慣れてしまい、古本屋からの生暖かい洗礼を受けたと感じている。
なので、ちょっとやそっとのトラブルには動じない。
そもそも、古本屋と一緒に旅をする時点で、無事には済まないことぐらい分かっていた。
そう…分かっていたが、今回は非常にピンチな状態だ。
*
現在の状況に至る経緯を簡単に説明すると、
今回向かう先には、飛行機で移動をする必要があった。
しかし、俺達は貧乏旅行者。
少しでもお金を浮かすために、古本屋は前回の旅先で仕入れた古びた本を使い、
一気に移動が出来る「時空を駆ける扉」を開いた。
国民的猫型ロボットアニメの秘密道具『どこでもドア』の様なことだと考えてほしい。
そして、俺達は閉じ込められた。
*
かの有名な秘密道具と違う点は、
『扉を開ければ、目的地に到着』ということではなく、
扉を開ければ、薄暗い闇の中に幾重もの細い道があり、示された光に向かって徒歩で進む。
上空には見たこともない鳥っぽい影(どうみても恐竜っぽい)が飛び交い、
時折何処からともなく唸り声(叫び声?)が聴こえる。
幽霊や妖怪にはある程度の耐性があるものの、
この空間に取り残されては、何時上空に飛び交う影達の餌食になるか不安だ。
チラリと横目で古本屋を見れば、
鞄の上に座り、チビ煙草を吹かしながら呑気にあくびをしている。
神経が図太いのか、それとも単に頭がイカレているのか…
できれば前者であって欲しい。
*
「何か困りのご様子で。」
「ん。フール。お前はこの状況を困ってないように見えるのか?」
「古本屋殿は随分と落ち着いておられますが?」
「……場数の差だろう」
「なるほど!ではご主人様も古本屋殿のように落ち着いては如何でしょうか?」
「……」
「まずはシレネーの歌でも…「いらんわ!」…そうですか残念です。」
フールは肩を落とし、少しガッカリしている様子に見える。(多分演技だ)
縁あって小(プチ)ヒエロゾイコンのマスターになり、
一時は俺の命を救うべく、もっている力をすべて使い果たし封印状態になった。
しかし、世界旅行中の最中、アフリカにて地元の怪しい集団に追われていた際、
突然の復活を遂げ、俺達は命からがら助かった。
普段は全然使えない「プチ」だが、いざという時は多少なりとも役に立つ。
が、しかし、
現状において、「プチ」を使う必要性を感じない。
俺は道(?)の真ん中に背負っていたリュックを降ろし、脱力気味に地べたへ座った
作品名:妖アパ 千晶x夕士 過去捏造 作家名:jyoshico