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妖アパ 千晶x夕士 過去捏造

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千晶の部屋はまるでモデルルームの様だと思った。
黒と白でコーディネートされている家具は、一見シンプルだが高級感がある。

俺はリビング手前で呆けていると、キッチンから「適当に座っとけ」と
声をかけられ、近くの二人掛けソファーに腰を下ろした。

「千晶様のお部屋はキラキラしておりますな、ご主人様。」
「恵さんもそうだけど、流石千晶もセンス良いよな。」
「ふふふふ。恵様のお屋敷も素晴らしかったですが、千晶様のお部屋は空気が澄んでおります」
「…フール。お前ベガスの時はまだ封印状態だろ?なんで知ってるんだ?」
「姿を現すことは出来ませぬが、ご主人様と我ら一同は常に一緒でございます」
「ふーーん」

ガタッと音がした方を見ると、千晶が眉間に皺を寄せフールを見ていた。

「ご機嫌麗しく。千晶様」
俺の肩の上で仰々しくお辞儀するフールを前に千晶は一層目を細めた

「…稲葉…」
「え?ああ…フール」
声をかけると、フールは軽くお辞儀をし姿を消した

「何度見ても慣れない。」
「だよな」

フールの存在は俺にとって「普通」のことだが、千晶から見れば「異常」な光景だろう。
15cmのピエロ風の精霊が勝手きままに動き、話す姿は常識からして考えられない。
それでも千晶は俺と「プチ」を受け入れてくれた。
あの時の記憶は一生忘れないだろう。

「コーヒーで良かったか?」
「ああ。お気遣いなく」

コトリとテーブルの上に置かれたコーヒーからは、豆の良い匂いが漂っていた。
遠慮なく一口含むと、ほろ苦さに絶妙な酸味が加わり、
「久しぶりに美味しいコーヒーが飲めたなぁー」と人心地だった

「早速だけど、稲葉。お前帰ってきたのか?それとも危ないことに巻き込まれているのか?」
「俺としては前者であった欲しいが」、と千晶は付け加えた

俺は後ろ頭をガシガシとかきながら「んーー。後者だな。」

「俺には詳しく話せない内容なのか?」
「いや。そーゆー訳じゃねぇーけど」

千晶の顔をチラリと伺うと、苦しそうな表情が見て取れた。
多分、元担任として心配してくれているのだろう。
ベガスの空港で別れる時「あぶないことは、なるべくしてくれるなよ」と言われたことを
思い出した。

「何て言うか、俺自身もよくわからない状態なんだよ。うん。」

まるで自分に言い聞かせるように答えると、千晶は俺を抱きしめた
突然のことで直ぐには反応できなかったが、俺の肩に顔を埋め今にも泣きそうな声で
「どうしてお前はいつも…俺に心配をかけるんだ」とつぶやいた

そっと千晶の髪を指で梳くように撫でながら「ごめん」と誤ると
「判ってる範囲で良いから、話してくれ」と言われた。

この状態でか?と思ったが、俺の背中に回された千晶の腕が力強く、
仕方がないので、古本屋と時空の狭間に取り残された経緯と
現在に至るまでのことをゆっくりと話した



俺が話し終わると、千晶はゆっくりと顔をあげ「なるほどな」と答え
もう一度ギュっと抱きしめてきた
俺も千晶の背中に両腕を廻し、子供を落ち着かせるようにポンポンと叩いた

「"今"の稲葉は俺から見たら二年後の稲葉ってことか?」
「ああ。そうなるな」
「どうりで大人びてるわけか」
「そんなに変わらないだろう。たかが二年だぜ?」
「二年の差は大きぞ、稲葉」
「そうか?」
「お前今年23歳だろ?俺の知ってる稲葉は二十歳ちょい前だぞ」

確かに、ベガスで逢った時は若干俺の方が千晶より背が高かったが、
今は完全に追い越している。
気にしてみれば、千晶の身体も一回り小さい感じだ。

「なー稲葉。古本屋さんとの旅は楽しいか?」
唐突に話の内容が変わり、俺の頭は?マークが浮かんだ。

「ベガスの空港で別れてから一年半だ。お前にしてみたらあっと言う間かもしれんがな」
ポツリと千晶が話し出す

「稲葉達が卒業した後、俺の心に穴が開いたみたいでな。
あの頃が夢だったんじゃないかとさえ思えるんだよ。」

可笑しいだろ?と千晶はクスクスと肩を揺らしながら笑う。

たった一年半。されど一年半。
千晶にとって、俺達との学校生活は思い出深い記憶となっているらしい。
姦し娘達とは連絡を取っているが、如何せん俺は電波状況が悪い(というか異界にいることが多い)為
情報は時折ネットにアップするブログぐらいしかない。

しかも大抵のことは濁して記載している為、どこまでが真実か分からない状態だ。
(大っぴらに公開すれば、俺は精神鑑定の必要あり!と診断されてしまう)

千晶は「プチ」のことや、寿荘のことも知ってる数少ない知人だ。
心配させて申し訳ない気持ちが溢れてくる。

「ごめんな、千晶」
そんな千晶の身体を俺が包み込むように抱きしめれば、「ん」と返事があり
続けて「もう少しこのままで…」と子供の様に甘えてくる

暫くの間、千晶の好きなようにさせていると、
「悪かったな、稲葉。もう大丈夫だ」
と先程とは違い、しっかりとした口調で言われ、「おお。気にすんな」と俺も平然を決め込む

実は千晶に抱きしめられてからずっと心臓がドキドキして、今にも口から飛び出るのではないか?
と思うほど緊張していた。

別に初めてという訳でもない。
俺が学生の頃、千晶は結構スキンシップが多い方だった。
髪を弄られたり、肩を抱かれたり、宝石強盗事件後の病室でも抱きしめられたし、
あまつさえ頬にキス(宝石強盗事件の際、無事助かったらと姦し娘達と約束していた)
もされたことがある。

だからこそ、何だかムズ痒い
身体の芯がうずくような気分だった