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妖アパ 千晶x夕士 過去捏造

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玄関では華子さんが「おかえりなさい」と言う
俺は「ただいまス」と答え、中に入る

食堂に行くと、詩人が悶々と原稿と戦っていた。
相変わらず落書きみたいな顔だ。
なんだか久しぶりすぎて、なんて声をかけていいのか戸惑ってしまった

入口でオロオロしていると、クリとシロがトタトタと走っきた

「おークリ。シロ。元気だったか?」
幽霊に元気か?なんて可笑しいが、クリは両手を広げ抱っこのポーズをする

クリを抱っこしつつ、食堂に入り、詩人に声をかける

「お疲れ様ス」

「あれ〜?夕士クン、帰ってきたの?」
「いやーーちょっと手違いがありまして。一時帰国中みたいな感じです」

「そっかぁ。古本屋さんは一緒じゃないの?」
「師匠は時空の狭間にいます」
「そうなんだぁ〜」
「そうなんスよ」

ハハハハハッ……
乾いた笑い声が食堂に響き渡る

「どうしたらいいスかね?」
「え〜?アタシにはわからないよぉ〜」
「ですよねーー」

ハハハハハッ……
更に乾いた笑い声が食堂に響き渡る

「黒の魔道士様にご助言を頂いては如何でしょうか、ご主人様」
ぴょこんとフールが肩の上に現れ、「ご機嫌麗しゅう。一色様」と挨拶

「龍さんなら丁度今朝旅立ったところだよ〜残念だね〜」
「うわーー俺、タイミング悪いス!」
「では大家殿に…「大家さんは昨日から二泊三日の旅行に行ってるよ〜」」
「秋音さんは?」
「秋音ちゃん、今実家の和歌山に帰ってるんだよねぇ〜」
「はぁーそうですか…」

俺はガックリと肩を落とし、「取りあえず座れば〜?」と詩人に言われ、
クリを抱きかかえたまま、椅子に腰かけた

最後の頼みは骨董屋だけだが、如何せん信用ならない。
いよいよもって窮地に追いやられた俺は、癒しの元クリを膝の上に抱きながら
「クリ〜クリ〜」と頬ずりをする

現実逃避だ



骨董屋はいつも突然降って湧いたように帰ってくる
そして今日も俺の予想を裏切らず、アパートへと帰ってきた

「やーユーシ君。久しぶりだね」
「骨董屋さん!!」

普段は胡散臭いと思っているが(今もだが)
藁にもすがる思いで骨董屋の腕を掴んだ



「うーーん!るり子さん、最高に美味いッス!」
手だけの天才賄い料理人(?)るり子さんの絶品料理を食べながら、
古本屋には悪いなぁーと思いつつも箸が止まらない。

「ふぅ〜。ごちそうさまッス。るり子さん!」
俺の声を聞いたるり子さんが、手をモジモジさせている

古本屋じゃないが「日本人で良かったーーー!!」と声を大にして叫びたい!


「落ち着いたかね?ユーシ君」
「ウッス!」

詩人と酒を交わしていた骨董屋は、俺の話を茶化すことなく聞いてくれた。
途中、千晶に遭遇し、マンションへ行った際の話は割愛する(勿論、ハズかしいからだ)

骨董屋は顎を手で触り、何か思い当たることがあるのか、
時折「ふうむ」と頷いていた

一通り話し終わった時、るり子さんが緑茶を出してくれた。
俺は一気に緑茶を飲むと「はぁーー」と深く息を吐き、チラリと骨董屋を見た

骨董屋は、ジャケットの内ポケットから単行本サイズの本と取り出し、俺の前に置いた

「なんスか?これ」
「今、ユーシ君に必要なアイテムだ。」

ずいっとさらに前に進められたので、俺は本を手に取りパラパラとめくった
「禍々しいさはございませんが、随分と古い書物のようです、ご主人様」
「でも何語で書かれてるかさっぱりわかんねぇー」

象形文字?というよりエジプトのヒエログリフに近い?
だが、ページを捲るとアラビア語っぽい表記もある

首を傾げていると、「この本は天界の文字で記録されている」とサラッと言った

「天界?! 天使とか神様とかいる天界ッスか?!」
「そうだ」
「また随分と珍しいブツを手に入れたねぇ〜骨董屋さん」

「たまたまヨーロッパのオークションで手にいれたのだよ。」
「ハぁ?」
「こんなの持ち歩いてるとヴァチカンの「奇跡狩り」に追い回されるよぉ?」
「…丁度、手放そうと思っていたところだよ。ユーシ君は運がいいな。ハハハ…」
「…俺って運が良いんですかね?強運じゃなくて凶運じゃないッスか?」
「うまいこと言うね!夕士クン」と詩人が笑う

取りあえず使用方法を聞かなければと思い、骨董屋に話しかけようとした時、
どこからともなく、長いコートのような服を着た背の高い男性がぬるっと現れた

と、同時に骨董屋が煙玉をシュッと投げる
ボオン!!と音がし、煙が充満する中「また会おう!諸君!」と声だけが聴こえた

いくつかの影が前を過ぎていき、気配が消えていく
煙が消えた時には、骨董屋の姿もヴァチカンの追ってもいなくなっていた

突然のことで呆けていた俺は、「あ!本!」と思い出し手元を見る
前回、骨董屋が立体映写機を持ち込んだ際は、それごと消えていたが、
俺の手元には古びた本が残っていた



使い方も教えず、ヴァチカンの特務員から逃げた骨董屋を少し恨みながら
久々の俺の部屋(202号室)に入り、改めて古書を開く

「どうやって使うんだ?」

「プチ」の時のように、現在封印されていて、突然読めるようになるのだろうか?
ペラペラと捲っていると、一枚の紙切れが落ちた

「なんだ?」
拾い上げてみると、随分と古びたモノクロの写真だった
全体的に真っ黒で、白々と見える部分が少ない

こんな古書に挟まっていた写真だ。
きっと何かあるに違いないと、俺の第六感は訴えかけている

机のライトを点け、袖の引き出しから虫眼鏡を取り出し入念にチェックする

「これと言って何もないか…勘違い、か?」
そう呟くと、フールが写真の上にうつ伏せになりながら「ご主人様」と声をかけた

「どうした?フール。何か見つけたのか?」
「見間違いではないと思うのですが…」
いつになくフールは弱気な声色で答えた

「この部分に映っているのは、古本屋殿ではございませんか?」
「え?!」

フールが指差した場所を虫眼鏡で見てみると、人影らしきものが見える
「確かに…人っぽく見えなくもないけど、古本屋とは言い切れないぞ?」

「しかし、状況から鑑みてこの写真は時空の狭間を映したものだと思われます」
「そうか?」
「はい。写真からは特別なオーラが感じられます」

もう一度、マジマジと視ていると突然部屋の中に突風が吹き、椅子からひっくり返った
「うわっ!!次はなんだ!!」

目も開けられない強風の中で、俺は意識を失った