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ピロートーク

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 とりとめもないことを思いつつ、現をさまよっているうちに眠ってしまったらしい。ふいに身体が揺れて目が覚めた。重力と戦い、ようやくうっすら開けた目でエディがベッドに腰かけているのを確認すると葉山はまたすぐに目を閉じた。
「起きているか」
「寝てる」
 毎回のごとく、嗄れた声に内心舌打ちする。どれだけの痴態を演じたのか考えたくもないが、思い出したくないことほど鮮明に覚えているものだ。昨夜の自分はAV女優も失業するほどの乱れようだった。久しぶりだったのと(と言っても、前回から20日もあいていない)、エディの機嫌がことさら悪かったことが原因だ。
 エディの抱き方は丁寧だがねちっこく、容赦なく弱点を責め続ける。さらにはバスケットで培った体力を存分に発揮するため長時間だ。体力がないと断言できる葉山はいつも抱かれた後は余計なことを考える暇もなく、時間の許す限り惰眠をむさぼる。
 ただでさえ執拗な抱き方だというのに、機嫌が悪いとなればさらに上をいく。舌と手がまるで生き物のように葉山の身体を這いまわり、早くどうにかなりたいのに射精することは許されない。長く骨ばった指で身体の中をいやというほど掻き回されてすすり泣きも途絶えがちになるころ、葉山はもうエディのものを挿れてもらうことしか考えられなくなる。少しでも早く身体の中を大きく硬いもので苦しいほど奥まで激しく擦って欲しくてたまらなくて、うわごとのように「挿れて」と「プリーズ」を口走っているのだった。
 それですぐに与えられたら、それはエディではない。人の嫌がることを喜々としてやる根性悪がエディだ。結局さらに長い時間をかけて身体中を弄られ、気の狂うような時間を味わわされるのが常だった。ようやく挿れられる頃にはすでに声も嗄れ、生理的に流れる涙が顔中を濡らしている。そして挿れられると同時にやっと射精することを許してもらい、気も遠くなるほどの快感に盛大な声を上げてまたも涙を流すことになる。この快感はエディしかくれない。女を抱くことでは感じることのできない目もくらむほどの強烈さだった。
 挿れられるまでに感じすぎて疲れている葉山だがここからが長い時間の始まりだ。エディのいいように前から横から後ろから、ひたすら身体の中を擦られ揺らされることになる。どんなかっこうをして、どんな声を上げて、どんなふうに乱れてももうどうでも良くなる。泣いても叫んでも頼んでも、エディの気が済むまで離してもらえないのだから。機嫌の悪いエディほど絶倫な男はいない。
 寝てると答えた葉山の返事は軽くなかったことにされ、エディは言葉を続けた。声の調子からするに、昨晩の運動で機嫌は直ったのだろう。八つ当たりされる身にもなれ、と葉山は心の中で呪った。
「13時半にフォーシーズンズ。ランチをしよう」
「いやです。あんなところまで行きたくない」
 動くのも面倒なのに地下鉄になんかに乗ってられるか。山ほど侍らしていると噂のアジアンビューティたちを誘えばいい。葉山は心の中で盛大に文句を垂れた。
「わがままを言うものじゃない」
 わがままじゃないと答えようとして、葉山はすぐに諦めた。エディの口から出る言葉はたとえ誘い文句だったとしてもそれは決定事項だ。
「帰りは車で送ろう」
 葉山は勢いよく起きあがった。だるくて眠いのはもちろんだが、身体中についている痕を気にしてかたくなにベッドに潜り込んでいたのもどうせバレている。長時間抱かれた身体が悲鳴をあげるのも無視してエディを睨みつけた。
「さっきから何なんです? ランチとか、送らせるとか!」
「何か問題でも?」
 葉山はぐっと言葉に詰まった。ごく近くにある澄んだ青い瞳はまっすぐに葉山を見つめている。
 改めて言われてみれば問題はないが気味が悪い。最近はエディの気に障るようなヘマはしていないし、隠し事もしていない。日中に呼び出されるときはたいていいびられる時なのだから、今日こんな待遇を受ける理由はない。
 しがないアナリストに、それこそ何かあれば一番に切り捨てるほど使い物にならない手駒に気まぐれだとしても似合わないことを口にされると何かあると疑わざるを得ない。たまには餌でもやろうというのなら、そんな気まぐれはいらない。
「なぜ今日に限ってそんなことを言うんですか」
 青い目から視線を逸らした拍子に裸だったことを思い出して、いまさらと思いつつも羽布団を引き上げて見えそうになっていた下半身をしっかりと隠した。腹や胸元にある情事を物語るあからさまな痕を視界に入れないように注意する。目にした途端、羞恥にのたうちまわりたくなるからだ。
 どんなに抗議してもエディは吸い痕や噛み痕を残す。葉山が真夏でもシャツのせいぜい一番上のボタンくらいしかはずせないのはそのせいだった。
「今日に限って、ではないし、ランチに誘ったらいけないとでも?」
「いけなくはないですけど」
 もごもごと葉山は口の中で呟いたが気分は良くない。絶対何かある。
 百歩以上譲って何もないということにしても、13時半にフォーシーズンズって、自分がそのへんで仕事をいているんだろう。『そのへん』じゃなくて、『その場』か。
 葉山はこっそりため息をついた。大切に扱えとは殺されそうになっても口にしようとは思わないが、せめて無関心でいてくれないか。そうすれば少しは気が楽なのにと考えて、そんな相手と寝ていれば世話はないと思った。
「わかりました。ロビーにいればいいですね」
 暗に時間通りに待ち合わせ場所に来ることはないのでしょう、とささやかな憎まれ口を叩いた葉山に、くすりと笑ってエディは「今日は遅れない」と言った。・・・・・・どうだか。
 エディは時間に正確だ。めったなことでは指定時間に遅れない。という話は真実だと知っているが、それはもちろん葉山以外に発揮されることで、エディは平気で葉山を待たせる。葉山は馬鹿みたいにエディを待ち続けるしかないのだけれども、時々虚しさにふらりとどこかへ行ってしまいたくなる。忠犬という言葉が嫌いだ。
「クローゼットに服を用意してある。それを着て来るように」
 思わず葉山はエディの顔を見た。昨夜着てきた服はソファの背にかかっている。
「なんの変哲もない黒い服だ。派手なのは嫌いなんだろう? それにきちんとハイネックを選んだ」
 この痕を見られたくないんだろう、とエディは葉山の首筋を手のひらでサラリと触った。
 葉山は完全に言葉を失い、奇妙なものを見るかのようにエディを見たがそんなものはどこ吹く風のエディはごく自然に腕時計に目をやり、時間を確認しただけだった。
「キミはまるで欧米人のような外見をしているのに中身は日本人だな。いつまでも恥ずかしがる」
 エディはそう言って、人差し指と中指で葉山の乳首を軽く挟んだ。咄嗟にその手を払いのけて、葉山は「やめてください」と強く言った。そうしないと性懲りもなく身体の中を走った間違えようもない快感に息を乱しそうになるからだった。忌々しいことに身体はとっくに葉山の制御を離れ、エディの手管に堕ちていた。
 それを十分に理解しているエディは「もう一回するか」と明らかに笑うのを堪えた声で言った。
「馬鹿なことを言わないでください」
作品名:ピロートーク 作家名:かける