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流れ星 2

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 「南部くん、ここ…。」

そう、ここは軍のイベントでよく使われる南部の父が経営する南部ホテル。トウキョウステーションから歩いて2分かからない場所にある由緒あるホテルだ。南部は躊躇することなく正面玄関から入った。ユキは小さくなりながら南部の後ろを歩く。

  「康雄。」

正面玄関を入ると南部によく似た声でユキはハッとした。ユキが顔を上げる。

  「森さん、ようこそお越しくださいました。」

軍のパーティで何度か一緒になって話した事もある南部の父がそこにいた。

  「南部さん、お忙しいのではないですか?」

南部財閥のTOPの人間。簡単に時間を作れる人じゃない事ぐらいユキだって知ってる。

  「いえ、康雄がかえってくる、と聞いていたので今日は久々に自宅で一緒に
   夕食を、と言っていたので時間があるんです。今日でよかった。」

南部の父がこちらへどうぞ、とユキに目配せする。ユキはどうしたらいいかわからずうなずき南部の父の後ろを付いて歩いた。正面玄関から少し奥に入ったエスカレーターを降りるとそこは少し明るい場所になっていて離れた所にウェディングドレスが飾られていた。

  「康雄から結婚式のプランを相談したい、と言われてね。森さんの望みを全て
   叶えて見せましょうと…。」

南部の父はそう言うとそこから更に奥にあるVIPルームに入って行った。
少し広い部屋にフカフカのシート。そこにユキと南部が座り正面に南部の父が座るとスタッフが紅茶を運んできてテーブルに置いた。

  「ウェディングプランナーの佐伯と申します。」

名刺をユキと南部に手渡して佐伯と名乗った女性は“失礼します”と言って南部の父の横に座った。







  「まずチャペルで式を挙げるだろう?それから披露宴で多分招待客はかなりの
   人数になると思うんだ。」

南部の言葉に佐伯が頷きながら端末を広げた

  「彼女は森ユキさん。お相手は古代進。宇宙戦艦ヤマトの艦長代理と生活班
   班長の結婚式だからね…クルーがくるだけで80人は揃うだろう?軍関係者だけで
   100人は超えると思う。ユキさん、親戚は?」(南部)
  「父と母の兄弟ぐらいで…多分10名いないと思うわ。」(ユキ)
  「学友で呼べそうな友人は?」(南部)
  「時代が時代だったからね。あまり親しくしてなくて。」(ユキ)
  「じゃぁ…ざっと考えただけで110名…少なく見積もっての人数…だな。」(南部)
  「お料理はどうしましょう?」

佐伯が端末を二人に見せながら聞く。

  「和食ですとテーブルの並びが縦になります。円卓がご希望ならそちらでも
   ご案内いたしますが?」(佐伯)
  「和洋折衷でいいよ。そうだな…この10000円のコース料理にしようか。
   多分1年後ぐらいを予定してるから…食糧事情が良くなってたらもう少し料理の
   グレードあげてもいいしな。」(南部)
  「森さんのお式なら15000円のプランで料金は10000円でいいですよ。」

南部の父が口を出す。

  「ほんとか?佐伯さんちゃんと証拠残しといて。」

南部が笑顔で言う。佐伯はにっこり笑いながら端末にいろいろ入力している様子。

  「南部さん、だめですよ。ちゃんとしないと…。」

ユキが慌てて立ち上がると

  「息子の紹介ですからね…それぐらいサービスさせていただきますよ。」

南部の父が笑顔で答える。

  「佐伯さん、結婚式で他に決めないといけない事ってなんですか?」(南部)
  「そうですね、みなさまご祝儀をお持ちになるのでそのお返しの引き出物を
   ご用意されます。それ以外にお祝いごとでバウムクーヘンや昔だったら
   かつおぶしなどの詰め合わせをご一緒にご招待客にお返しするんですよ。
   こちらはおひとりさま5~6千円程で予算を組まれたらよろしいかと思います。
   ご夫婦で来られる方は二人でおひとつお返しになります。まぁ今は軽いものを
   ご用意してあとはカタログで請求、が多いですね。荷物になってしまいますし。」

佐伯がカタログを端末で見せながら話す。

  「結婚式、って大変なんですね。」(ユキ)
  「そうですね、今は写真婚が主流ですがお二人のご結婚を機に昔のように
   結婚式を挙げたいと、節目を祝いたい、という方が増えまして…私どもと
   致しましてはお二人方には感謝の気持ちでいっぱいです。」

佐伯が笑顔で話す。

  「このホテルも地上へ戻る日が近くなっているので地上で営業始めたらすぐに
   結婚式の予定がかなり入っているんです。いいですね、今の若い方は…。」(佐伯)

ユキは佐伯の言葉を聞いてドレスのお店で言われた事と一緒だ、と思った。



作品名:流れ星 2 作家名:kei