流れ星 2
「相原…。」(相原)
「僕たちは強運に恵まれて生きて地球に還って来る事が出来た。これは奇跡
なんだよ。その奇跡の上に古代くんとユキさんの結婚式があるんだもん、
やっぱりこれは盛大にお祝いしないとダメだと思うよ。こう言ったら悪い
けど古代くんだってもし、ユキさんが息を吹き返さなかったら、って考えた
ことあるでしょう?僕だってふと急にユキさんのあの白い顔を思い出すんだ。
地球が見えた時、古代くんが安置所からユキさん抱いて第一艦橋に連れてきた
時のあの顔が忘れられないんだ。<生き返った、古代くんと付き合い出した、
結婚する!>じゃないんだ、僕たちは。イスカンダルに行って帰って来て
たくさん辛い想いしたけどだけどその中に小さな幸せがいっぱいあってそれが
やっと実るって事が嬉しいんだ。まぁ僕もクルーだけでお祝いしたいけど
ヤマトの幹部、って事でそれは許されない事だと思うから一応形式的な
事はとりあえずやって本当のお祝いは二次会でいいじゃない?」
相原がにっこり笑う。
「同じ生活班の班長が結婚するんだもん、僕だって式に出たいさ。ま、結婚式
当日は全部僕と南部くんに任せて古代くんはユキさんと一緒にいる時間を
たくさん作ってあげなよ。これから一年、任期の途中途中で少ししか時間
ないだろうけどその分一緒にいる時間が幸せ120%かもしれないよ?」
進は相原の言葉に何も言えなかった。
「僕さ、途中でおかしくなっちゃって…あの時の事、実はよく覚えてないんだけど…
でも古代くんたちが探しに来てくれた時仲間、っていいなって心底思った。
僕一人いなくなったってヤマトは何も変わらないのにこんな一人の為に
ブラックタイガーのみんなも来てくれて…今思うとすごい恥ずかしいけどさ。
…さて、っと南部へのメールはあしたする事にして…今、クルーには緊急通信
送っておいたよ。ユキさんと古代くんには送ってないけどね~」
その言葉と同時にパシっとEnterを叩く相原。
「え?何を送ったんだ?」(進)
「9/8は必ず休暇をとるように!ってね。古代くんとユキさんの結婚式だから、
って送ったのさ。クルーのプライベートメール全員分知ってますからね。」
相原がニヤッと笑う。ちょっとその笑い方が南部に似て来たんじゃないかと思う進。
「…今頃島も見てる、って事か?」(進)
「夕食に行ってなければ見てるでしょうね。」(相原)
「マジか~(頭を抱える)」(進)
「きっとユキさんの所にもおめでとうメールが届くはずですよ。もちろん、
古代くんの所にもね。とりあえず真田さんと太田、機関長にはメール入れた
方がいいと思いますよ。あ、それと加藤くんと山本くん、島くんにもね。」
そう言って相原が進が持ってきた端末を指さす。進は肩を落としながら相原のベッドに腰掛けてメールの画面を出した…ところでさくっと相原が文章を打つ。
<お疲れ様です。相原からのメール見ていただけましたか?9/8南部のお父さんの
好意もあり私とユキの結婚式を挙げる事になりました。詳しい事はまだ決まって
いませんが追ってお知らせしますので当日よろしくお願いします。>
「これは真田さんと徳川さん用。それ、送っちゃって?」(相原)
進は相原に言われたままToの欄に真田と徳川を指定するとそのまま送った。
「じゃ、もう一度貸して?」
相原にそう言われ素直に端末を渡す。
<お疲れさん。相原のメール見たか?9/8結婚式を挙げる事になったから
その日、トウキョウシティに来てほしい。当日夜だけどゆっくり話せる
時間も取れそうだからぜひ来てくれな!>
そう入力した画面を進に渡すと
「それは島くんと太田くんと加藤くんと山本くん。」
進は相原に言われるまま送る。
「南部くんは自分で考えてね。」
進が相原に端末を渡そうとしたが相原は受け取らなかった。
「そうだよな、南部だけはちゃんと自分の言葉でお礼を言わないとな。」
進はそう言うとメールを打ち始めた。
<南部、帰って来たばっかりで悪かったな。結婚しよう、って言ったけど
今回の任務が任務だから何もできない。ユキに一人で結婚式の準備を
させるのはちょっと気が引けたけど俺が地球にいる時にやってもなかなか
進まなさそうだ。ユキからメールが来ててかなりのお疲れモードだった。
俺もユキもかなり疎い部分だからこの先も頼む。見積でたら俺にも教えて
くれな。南部ならいろんなもの見て来てるから任せられる。頼むな。
ありがとう。>
進はもう一度読み返すとそのまま南部へ送った。