流れ星 2
「あいつ、楽しんでるな。」
勤務時間を終えた島は明日、一日休暇なので缶ビールを冷蔵庫から出してメールを読みながら飲んでいた。
「ユキのドレス姿か。それを見て踏ん切りをつけるやつ、いっぱいいるんだろうな。
きっと俺もそうだ。ユキ以上の人なんて見つからないだろうな…。」
何も言わないメールの画面を見て島がつぶやく。
「ずっと好きだったのに…いつ頃からか?その視線の先にいるのは俺じゃない事に
気付いたのは…最初の頃は真田さんと仲が良くててっきり付き合ってると思ってた
けど…でも今はユキの幸せを一番に願っている。」
島はメールの画面を閉じるとデスクトップから写真が入っているフォルダーを選んだ。
「いい顔してるよな。」
ケガをして腕を吊っているユキを中心に左右に島と古代。第一艦橋のメンバーがイスカンダルを出発した時に撮ったものだ。
「この笑顔をずっと護りたい、って俺も思ってるよ。」
島はそっと写真のユキの顔を撫でた。
「おめでとう!生活班長!」
翌日軍の中で呼び止められた。振り返るとそこには元ヤマトクルーで生活班だった綾めぐみと技術班だった斉藤美恵が駆け寄ってきた。
「昨日、通信班長から連絡もらって!もう、驚いちゃいました!森さん、
私達にも幸せ分けてくださいよぉ~」(斉藤)
「本当ですぅ!いいなぁ毎日古代艦長代理が帰って来るんですよね?かっこいい
だろうなぁ」
綾はもともと古代が好きだったのもありかなり夢を見ているようだ。
「そ…そうかな?」
ユキが少し逃げ腰になると
「当たり前じゃないですか!いいですか?班長!今一番輝いてる男ですからね。
油断してたら誰かに取られちゃいますよ?」(斉藤)
「そうですよ、一般人だって惚れちゃってますからね!」(綾)
「そ、そっか。」
ユキは圧倒されてそれしか言えない。
「もう、しっかりしてくださいね!それと私もう、出席のメール通信班長に
送っちゃいましたから!今から何を着て行こうか考え中!幸せのおすそ分け
楽しみにしてまぁす!」(綾)
ふたりはそう言うとビシっと敬礼をして走ってどこかへ行ってしまった。
(この分じゃヤマトのクルー以外ももう知ってそうね。)
ユキは深いため息をついた。
「おはよう。」
ユキが出勤するとしばらくして藤堂が長官室の手前にある秘書室に入って来た。
「おはようございます。」
ユキが挨拶をしてすぐに
「長官、少しお話するお時間いただけますか?」(ユキ)
「あぁ、スケジュール的には大丈夫なんだろう?」
藤堂が秘書室にある少し小さな応接セットに座る。
「あの…式の日取りが決まりまして…。」
ユキの声が小さい…が、藤堂はしっかり聞こえていた。
「そうか、よかったな。それでいつだ?」(藤堂)
「9/8です。9/5が沖田艦長の命日なのでその日を迎えた後に、と…。」(ユキ)
「そうか…決まったらこちらも準備があるな。ユキと古代の休暇はこちらで対応
しよう。結婚となると有給の他に与えられる休暇が一週間あるからな。結婚式
当日から休みじゃ準備で大変だろうから前日は休むと良かろう。
まぁ有給を合わせてゆっくり休むがいい。新婚旅行先は決めたのか?(ユキが
首を振る)まぁ急がんでも結婚式は逃げないからな。そうか、きまったか。
よかった、よかった。真田くんがアドバイスしたのか?」(藤堂)
「はい、昨日その流れで南部くんがお父様の所へ連れて行ってくれて…そのまま
日取りを決めて来ました。」(ユキ)
「古代もユキも似た者、だから誰かが決めてくれないとズルズルしてしまいそう
だからよかったんじゃないか?」(藤堂)
「そうです…ね。」
藤堂の言葉にユキはしっかり頷いた。
(そうだわ、私と古代くんじゃウダウダして何も決まらなさそう)
「本当にキミたちはチームワークがいいな。適材適所がみんなわかってる。
安心して見ていられるよ。」
藤堂はそう言うと立ち上がった。
「披露宴は私も呼ばれるのだろうか?」(藤堂)
「当然、お呼びしますのでご予定、空けておいてください。」
ユキが深々と頭を下げる。
「沖田と一緒に参加するよ。楽しみだ。」
藤堂はそう言って今日のスケジュールをユキに聞いた。